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第1章 無人島篇

第27話 気持ち新たに

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side:桜井美智瑠



『ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ』


ふぁ~、もう朝かぁ

手探りで枕元に置いてあるスマホを掴みアラームを消す。

スマホの画面を見ると、鹿児島県の桜島を背にして満面の笑顔で手を繋いでる私となっちゃんが写っている

そう、私達は日本に帰って来た♪

本当はあの島での出来事は夢だったんじゃないかと思うけど、机の上に飾られた2枚の大銀貨が夢じゃ無かった証拠だ。


誰か分からない謎の観察者からプログラムが終了するというメールが届いたあの日

これで私の人生も終わりかと思い、なっちゃんと抱き合って目を閉じたのだけど


「ふざけてんとさっさと降りんかい!」


という、とても聞き慣れたクラス担任の声により

今は修学旅行初日のフェリーの中で、私達があの不思議な世界へ連れて行かれる直前に戻って来たという事が分かった

放心状態の私となっちゃんはクラス担任に無理矢理救命ボートから降ろされた。


そのまま私となっちゃんはフェリー内にある食堂で食事をし、大浴場では足の指の間まで丁寧に洗った

部屋に戻ると同室のクラスメイト達と夜遅くまでトランプをしたり、好きな芸能人の話をして盛り上がり

翌朝、フェリーは無事に鹿児島に到着して私となっちゃんは2泊3日の修学旅行を満喫して帰って来た。


修学旅行から2ヶ月が経ったけど、なっちゃんとはあの世界の事はほとんど話して無い

話した所で何かが分かる訳でも無いから、お互いに無駄な事は止めて心の中に仕舞っておこうという判断だ


それでも、あの世界から持ち帰った大銀貨や304号室の事は調べてみた

まあ結果は何も分からなかったけどね(笑)


パンや果物を売って得た4枚の大銀貨は、あの不思議な世界から持ち帰った唯一の物だ

なっちゃんと私で2枚ずつ持っている大銀貨をネットで調べたら

似たような硬貨があり過ぎて知識の無い私には、かつて地球に存在した国の貨幣なのか違うのかすら分からなかった

専門店に持って行って鑑定して貰うのも面倒だったしね(汗)


304号室の方は予想通り調べても何も情報は無かった、そりゃあアパートやマンションから304号室だけが消えたら大事件なんだからニュースで大々的に取り上げるはず

それが無いって事は、そういう事なんだろう。

あの304号室の元の住人もミッションを終えて日本に戻れたのだろうか?

ここで色々考えてても何かが分かる訳じゃなからなぁ


『ピンポーン』

あっ!

インターホンのカメラになっちゃんが写っている、約束の時間には早いけどまあ良いや


「直ぐ開けるから待ってて~」

「はーい」


今日はなっちゃんとキャンプ道具を買いに行くんだ♪

大分県で一緒に年越しキャンプをしようって誘われたから、2人で寝れる大きさのテントとか色々買いに行くんやけど

個人的にはソロ用のテントに2人で寝ても良かったかなぁって思う


『ガチャ』

「なっちゃんお待たせ~」

「全然待ってないから早く行こう♪先にホームセンターでシュラフと折りたたみ椅子買うから」

「専門店で買わんで良いの?」

「雪山行く訳じゃないし全然大丈夫、そもそも予算が足りひんから(笑)でも安心して、安くても良いのはいっぱいあるから!」

「重ね着してカイロがあればなんとかなりそうやから良いねんけど」

「カイロ使わんでもお互い裸になって温めっこしようやぁ~」

「え?!ちょっ、なっ、何を言うてんのよ(照)」


「キャンプ場にシャワーあるから一緒に入ろな♪久しぶりにみっちゃんのお尻洗ってあげるから」

「よっ、よろしくお願いします。」

「うん♪12月27日に神戸港からフェリー乗って行くから準備しといてな、じゃあホームセンター行こう♪みっちゃん早く~」

「わっ?!」


なっちゃんが私の手を握って歩き出したけど

これは憧れの

恋人繋ぎやん♪

もしかしたら、なっちゃんの裸を見るよりドキドキするかも!

すぅーはぁー、すぅーはぁー、落ち着け私!

なっちゃんとこれからも色んな事をするのに、手の繋ぎ方だけでこんなにドキドキしてどうする私!

相合い傘もしたいし、なっちゃんにバイクの免許取って貰って後ろに乗りたいし

お揃いの浴衣着てお祭りも行きたいなぁ


よし!

来年の目標は『なっちゃんと一緒に色んな事をする』に決定や

頑張るぞぉー♪







第1章   完
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