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第12話 同志 その2
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同じトライアンフに乗る相手の女性が手を振ってくれたのを見て、菜穂は安心する。
どうやら警戒されているわけではないようだ。女性はさらに手で何かを伝えようとしている。
よく見ると、休憩しないかと尋ねているようだ。
菜穂は四万十川の景色をゆっくり楽しみたいと思っていたところだし、せっかく同じトライアンフに乗る人に出会えたのだから、少し話をしてみたい気持ちもある。
菜穂は女性に向かって笑顔で頷いた。
2台のバイクは進行方向を変え脇道へと入っていく。菜穂は女性の後を追って相棒を走らせる。
脇道は木々に覆われた静かな道だ。時折、鳥のさえずりが聞こえてくる。
しばらく走ると視界が開け小さな休憩所が見えてきた。休憩所にはベンチと自動販売機が設置されている。菜穂は女性と一緒にバイクを停めエンジンを切った。
「こんにちは」
菜穂が先に相手の女性に声をかける。
「こんにちは。同じトライアンフですね」
「ええ、そうなんです。まさかこんなところでトライアンフに乗る女性に出会うなんて、思ってもいませんでした。」
「私もです。このバイク、古いけど本当に良いんですよね」
「そうですね。私も祖父から譲り受けたんですけど、とても気に入っています。」
「まぁ♪私のバイクは亡くなった父の形見なんです」
「そうなんですか。それは大切なバイクですね」
「ええ、私にとって宝物なんです」
女性はそう言って自分のバイクを優しく撫でた。
菜穂はその姿を見て胸が熱くなる。バイクはただの乗り物ではなく、人々の想いを繋ぐものなのかもしれない。
「それに、トライアンフと言えばなんと言っても」
「「大脱走!、、、あははははは」」
お互いの声が揃い二人は大声で笑い出す。
「トライアンフ乗りはの原点はやっぱり大脱走なんですかね?」
「かもねぇ。かなり古い映画だけどよく知ってるね」
「祖父の家には録画したビデオテープがあったので、よく見てたんです。ブラウン管テレビだったから画質は悪いんですけど、DVDに焼いて今でも観てます。」
「もしかして当時の吹替版?」
「そうですね」
「わぁ~、羨ましい!」
どうやら女性は相当な映画好き、いや、大脱走好きらしく、ジェームズ・ガーナーのファンでもあった。
菜穂はチャールズ・ブロンソンが好きで、二人はこの後もしばらく大脱走の話で盛り上がるのだった。
◇ ◇ ◇
大脱走の話で盛り上がり満足した二人は、それぞれの相棒であるトライアンフのエンジンをかける。
アイドリング中に女性がたずねる。
「この後、どうするんですか?」
「このまま四万十市に向かう予定です。」
「この辺りは初めてですか?」
「はい、今回初めて四国に来たんです」
「そうなんですね!四万十川は凄く綺麗だから楽しんで欲しいな。私も時間があればご一緒したかったんですけど、今日はこれから高知市内に戻らないといけないんです。」
少し残念そうに女性は言う。
「そうですか。お仕事ですか?」
「まあ、そんなところです。でも、せっかく知り合えたんですから、よかったら連絡先を交換しませんか?またどこかで会えるかもしれませんし」
菜穂は勿論、大歓迎だ。
「是非!」
二人はバイクを停め連絡先を交換する。女性の名前は雨宮優子と言うらしい。
「高知に戻って少し用事を済ませてから、また四万十の方に戻ってくる予定です。なので時間があったらまた連絡しますね!」
「はい、楽しみにしています!」
別れ際、雨宮優子は笑顔で手を振る。菜穂も笑顔で手を振り返した。
雨宮優子との出会いを胸にエンジンの鼓動が心地よく響く。
先程までの雨も止み日差しが暖かく降り注ぎ、四万十川への期待がさらに高まる。
出会いと別れを繰り返し、まだ見ぬ土地に思いを馳せて、菜穂を乗せた相棒のトライアンフTR6Rはご機嫌に走り出す。
つづく。
どうやら警戒されているわけではないようだ。女性はさらに手で何かを伝えようとしている。
よく見ると、休憩しないかと尋ねているようだ。
菜穂は四万十川の景色をゆっくり楽しみたいと思っていたところだし、せっかく同じトライアンフに乗る人に出会えたのだから、少し話をしてみたい気持ちもある。
菜穂は女性に向かって笑顔で頷いた。
2台のバイクは進行方向を変え脇道へと入っていく。菜穂は女性の後を追って相棒を走らせる。
脇道は木々に覆われた静かな道だ。時折、鳥のさえずりが聞こえてくる。
しばらく走ると視界が開け小さな休憩所が見えてきた。休憩所にはベンチと自動販売機が設置されている。菜穂は女性と一緒にバイクを停めエンジンを切った。
「こんにちは」
菜穂が先に相手の女性に声をかける。
「こんにちは。同じトライアンフですね」
「ええ、そうなんです。まさかこんなところでトライアンフに乗る女性に出会うなんて、思ってもいませんでした。」
「私もです。このバイク、古いけど本当に良いんですよね」
「そうですね。私も祖父から譲り受けたんですけど、とても気に入っています。」
「まぁ♪私のバイクは亡くなった父の形見なんです」
「そうなんですか。それは大切なバイクですね」
「ええ、私にとって宝物なんです」
女性はそう言って自分のバイクを優しく撫でた。
菜穂はその姿を見て胸が熱くなる。バイクはただの乗り物ではなく、人々の想いを繋ぐものなのかもしれない。
「それに、トライアンフと言えばなんと言っても」
「「大脱走!、、、あははははは」」
お互いの声が揃い二人は大声で笑い出す。
「トライアンフ乗りはの原点はやっぱり大脱走なんですかね?」
「かもねぇ。かなり古い映画だけどよく知ってるね」
「祖父の家には録画したビデオテープがあったので、よく見てたんです。ブラウン管テレビだったから画質は悪いんですけど、DVDに焼いて今でも観てます。」
「もしかして当時の吹替版?」
「そうですね」
「わぁ~、羨ましい!」
どうやら女性は相当な映画好き、いや、大脱走好きらしく、ジェームズ・ガーナーのファンでもあった。
菜穂はチャールズ・ブロンソンが好きで、二人はこの後もしばらく大脱走の話で盛り上がるのだった。
◇ ◇ ◇
大脱走の話で盛り上がり満足した二人は、それぞれの相棒であるトライアンフのエンジンをかける。
アイドリング中に女性がたずねる。
「この後、どうするんですか?」
「このまま四万十市に向かう予定です。」
「この辺りは初めてですか?」
「はい、今回初めて四国に来たんです」
「そうなんですね!四万十川は凄く綺麗だから楽しんで欲しいな。私も時間があればご一緒したかったんですけど、今日はこれから高知市内に戻らないといけないんです。」
少し残念そうに女性は言う。
「そうですか。お仕事ですか?」
「まあ、そんなところです。でも、せっかく知り合えたんですから、よかったら連絡先を交換しませんか?またどこかで会えるかもしれませんし」
菜穂は勿論、大歓迎だ。
「是非!」
二人はバイクを停め連絡先を交換する。女性の名前は雨宮優子と言うらしい。
「高知に戻って少し用事を済ませてから、また四万十の方に戻ってくる予定です。なので時間があったらまた連絡しますね!」
「はい、楽しみにしています!」
別れ際、雨宮優子は笑顔で手を振る。菜穂も笑顔で手を振り返した。
雨宮優子との出会いを胸にエンジンの鼓動が心地よく響く。
先程までの雨も止み日差しが暖かく降り注ぎ、四万十川への期待がさらに高まる。
出会いと別れを繰り返し、まだ見ぬ土地に思いを馳せて、菜穂を乗せた相棒のトライアンフTR6Rはご機嫌に走り出す。
つづく。
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