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第6章 二人の愛と少年の嘆き
81時間目 何かが足りない時間
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吹奏楽部の部員がトランペットやクラリネット、ホルン等の楽器を一斉に吹く音と俺たちの声、どっちが大きいんだろうな。
そんな事を考えながら、俺はノックを受けていた。
「おっしゃぁぁす!」
今年で50代になる監督から、何度もバウンドして、襲いかかる球が飛ぶ。
これくらいなら、余裕で取れる。
なめんな。
俺はキャッチしたあと、急ぎ足で一塁を踏む。
「高橋ィ! もっと早く走れ!」
「さぁせんしたぁ! もういっちょお願いしゃぁす!」
監督は、これまた激しいバウンドのゴロを打つ。
その球は、ギリギリセカンドの守備範囲中に入った。
俺も取れないことはない。
だが、俺はキャッチを出来ず、それのカバーに来た3年生の先輩が俺に投げ返した。
「高橋、×××、どちらが取るかお互い声掛け合ってな。今のは僕がカバー出来たからよかったけど、もしこれ取れてなかったら三塁ランナーホームインしてたからね。コミュニケーション、頑張って」
「うっす」
なぜか俺が一年だった頃の先輩がおそらく言った同期の名前がノイズがかって聞こえなかった。
そして、この3年生の先輩、たしか名前は──
あれ、思い出せない。
なんでだろう。
「カバー、すんませんした。次から、気を付けます」
「もうすぐ夏大会だからね。頑張ろう」
先輩が、優しい声で言う。
俺は、うっすと答えるしかなかった。
誰かを忘れているような気がするんだよな。
肩辺りまで伸ばした髪、小さい体に携わるいっぱいの元気。
いつもニコニコ明るく笑っている幼馴染み。
思い出せないなぁ。
俺、どうしたんだろ。
「高橋ィ! 集中せい!」
監督からの怒声によって、俺の意識は現実に戻された。
「さぁせんしたぁ! おねしゃぁす!」
それから、俺たちは、ノックを受け続けた。
──
「礼ッ‼」
「ありゃっとござっしたぁぁ!」
今日も練習が終わった。
整備を済ませたあと、グラウンドへの挨拶をして、帰宅の準備を済ませた。
「あー、今日も疲れたな」
「帰ろうぜ」
「一年、鍵閉めよろしくなー!」
先輩たちが口々に言いながら、帰宅する。
いや、あんたら準備早いな。
「たっ、高橋ー! 鍵閉めしといてくれー! 母さんに怒られるー!」
「お、俺、塾だからじゃあなー!」
「俺は……、彼女とのデートがあるからー!」
「……すまん」
同期の4人もあっさりと帰ってしまった。
ちょっとまて、親に怒られるや塾は百歩譲ってまだわかる。
誰だデートって言ったやつ。
戻ってこい、こら。
と言っても、誰も居らず。
結局、俺一人で部室と廊下の窓の施錠をしなければならなくなった。
あいつら、明日覚えとけよ。
「……はぁ」
俺、何度目か分からないため息をついた。
そりゃ、幸せも逃げて非リアなわけだ。
つーか、なんだよ、彼女とデートって。イチャコラしやがって腹立つわー!
俺が心の中でキレていても非リアからリア充になるはずがない。
しかし、怒りは収まらない。
そもそも、俺ってさ、主人公なわけじゃん。
普通、主人公ってモテモテでイケメンでなんでも出来てさ、
「キャー! カッコいい!」とか「高橋君、私と付き合って!」とかそんなイベントもないわけ?
もう中学生だぜ?
まぁ、そんなの漫画の中だけだ。
そんな事を考えながら、廊下を歩いていると、ふと美術室に目が止まった。
別に知り合いが居るわけでもないのに、俺はそこから目を離せない。
美術の先生は高圧的だから嫌いだし、成績も一学期の美術はヤバかったからなにもないはずなのに、なぜか目を離すことができない。
俺は不思議に思いながら、再び廊下を歩きだした。
なんか、今日、変だな。
そんな事を考えながら、俺はノックを受けていた。
「おっしゃぁぁす!」
今年で50代になる監督から、何度もバウンドして、襲いかかる球が飛ぶ。
これくらいなら、余裕で取れる。
なめんな。
俺はキャッチしたあと、急ぎ足で一塁を踏む。
「高橋ィ! もっと早く走れ!」
「さぁせんしたぁ! もういっちょお願いしゃぁす!」
監督は、これまた激しいバウンドのゴロを打つ。
その球は、ギリギリセカンドの守備範囲中に入った。
俺も取れないことはない。
だが、俺はキャッチを出来ず、それのカバーに来た3年生の先輩が俺に投げ返した。
「高橋、×××、どちらが取るかお互い声掛け合ってな。今のは僕がカバー出来たからよかったけど、もしこれ取れてなかったら三塁ランナーホームインしてたからね。コミュニケーション、頑張って」
「うっす」
なぜか俺が一年だった頃の先輩がおそらく言った同期の名前がノイズがかって聞こえなかった。
そして、この3年生の先輩、たしか名前は──
あれ、思い出せない。
なんでだろう。
「カバー、すんませんした。次から、気を付けます」
「もうすぐ夏大会だからね。頑張ろう」
先輩が、優しい声で言う。
俺は、うっすと答えるしかなかった。
誰かを忘れているような気がするんだよな。
肩辺りまで伸ばした髪、小さい体に携わるいっぱいの元気。
いつもニコニコ明るく笑っている幼馴染み。
思い出せないなぁ。
俺、どうしたんだろ。
「高橋ィ! 集中せい!」
監督からの怒声によって、俺の意識は現実に戻された。
「さぁせんしたぁ! おねしゃぁす!」
それから、俺たちは、ノックを受け続けた。
──
「礼ッ‼」
「ありゃっとござっしたぁぁ!」
今日も練習が終わった。
整備を済ませたあと、グラウンドへの挨拶をして、帰宅の準備を済ませた。
「あー、今日も疲れたな」
「帰ろうぜ」
「一年、鍵閉めよろしくなー!」
先輩たちが口々に言いながら、帰宅する。
いや、あんたら準備早いな。
「たっ、高橋ー! 鍵閉めしといてくれー! 母さんに怒られるー!」
「お、俺、塾だからじゃあなー!」
「俺は……、彼女とのデートがあるからー!」
「……すまん」
同期の4人もあっさりと帰ってしまった。
ちょっとまて、親に怒られるや塾は百歩譲ってまだわかる。
誰だデートって言ったやつ。
戻ってこい、こら。
と言っても、誰も居らず。
結局、俺一人で部室と廊下の窓の施錠をしなければならなくなった。
あいつら、明日覚えとけよ。
「……はぁ」
俺、何度目か分からないため息をついた。
そりゃ、幸せも逃げて非リアなわけだ。
つーか、なんだよ、彼女とデートって。イチャコラしやがって腹立つわー!
俺が心の中でキレていても非リアからリア充になるはずがない。
しかし、怒りは収まらない。
そもそも、俺ってさ、主人公なわけじゃん。
普通、主人公ってモテモテでイケメンでなんでも出来てさ、
「キャー! カッコいい!」とか「高橋君、私と付き合って!」とかそんなイベントもないわけ?
もう中学生だぜ?
まぁ、そんなの漫画の中だけだ。
そんな事を考えながら、廊下を歩いていると、ふと美術室に目が止まった。
別に知り合いが居るわけでもないのに、俺はそこから目を離せない。
美術の先生は高圧的だから嫌いだし、成績も一学期の美術はヤバかったからなにもないはずなのに、なぜか目を離すことができない。
俺は不思議に思いながら、再び廊下を歩きだした。
なんか、今日、変だな。
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