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第6章EX 常夏と蒼い海 ─少年のリスタート─
90・7時間目 愛の証明
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葉瀬との会話はかなり楽しいものだった。
正直、遼太郎のことがあったから、会話は絶対に合わないだろうなと思っていたけど、人は見かけやたった数回の会話で全てを決めてはいけない。
俺と同じ野球チームのファンだし、選手も被っている。
野球の話はかなり盛り上がって、嫌悪感はかなり無くなった。
「マジかよ敦志。お前、野球やってたのか、ポジションどこだ?」
「ファーストだな。葉瀬は? 野球やってたのか?」
彼は、首を横に振り、
「いいや。やってねぇな。でも、観るのは好きだから中継とかめっちゃ見てたな。あと高校野球も見たな。敦志、高校でも野球やってるのか?」
「やってないな。中学で燃え尽きたわ」
確かに、俺は最後の方はあんまり練習にも力をいれてなかった。
地区大会で優勝できればいい……くらいの弱小チームだったから、先輩たちもゆったり練習してたし、かなり楽な方だと今だから思う。
「へぇー、もったいねぇな。やりゃいいのに」
葉瀬は半笑いでそう言う。
「まぁ、今はやりたいことたくさんあるからな。一度きりしかない青春を、俺たちは無駄にしたくないからな」
「一度きりの青春ねー……」
葉瀬は、そう呟くと立ち上がり、
「三石の言ってることは合っていたかも知れねぇなぁ」
苦笑しながら、自らを嘲笑うように言った。
「アイツはな俺たちに──」
「なにしてるの」
突然聞こえた女性の声。
その声の方を振り向くと、ショートカットの少女が立っていた。
葉瀬は彼女の存在を知るや否や、目を見開いて、呟いた。
「沙希……」
葉瀬の声は弱々しくなっている。
「ねぇ、なんで噂のあの子といるの?」
沙希と呼ばれた女性はその顔にハッキリと怒りを浮かべている。
「ねぇ、トモ君ー! えっーと、たしか……高川さんー! バーベキューの準備出来たんですけ……ど……」
「トモ君?」
沙希でいいのだろうか。
彼女は、葉瀬の彼女である明菜を思いきり睨み付けた。
「トモ君、こちらの女性は? お友達?」
「あのさ、二人とも、本当にわりぃ」
「俺は、二股をしてたんだよ……」
葉瀬は俺たちと出会ってから一番、困惑した表情を浮かべていた。
──
世の中には、光輝く人間と陰に身を潜める人間がいる。
俺はそれを知っているし、それの怖さも知っている。
たった一度のミスで、己の首を絞め、己を地の果てまで落とすことになるから。
だから、俺は、葉瀬が、そんな状況に陥っていることに目を疑った。
「私たちをなんだと思っているの!? あんたほど、最低な人間はいないよ!」
「皆に優しくするって、皆をバカにしているのと一緒じゃないの!」
俺は、死ぬほど憎んだ相手がこんな状況になっているのに、喜べない。
葉瀬は、その日、絶望に堕ちた。
正直、遼太郎のことがあったから、会話は絶対に合わないだろうなと思っていたけど、人は見かけやたった数回の会話で全てを決めてはいけない。
俺と同じ野球チームのファンだし、選手も被っている。
野球の話はかなり盛り上がって、嫌悪感はかなり無くなった。
「マジかよ敦志。お前、野球やってたのか、ポジションどこだ?」
「ファーストだな。葉瀬は? 野球やってたのか?」
彼は、首を横に振り、
「いいや。やってねぇな。でも、観るのは好きだから中継とかめっちゃ見てたな。あと高校野球も見たな。敦志、高校でも野球やってるのか?」
「やってないな。中学で燃え尽きたわ」
確かに、俺は最後の方はあんまり練習にも力をいれてなかった。
地区大会で優勝できればいい……くらいの弱小チームだったから、先輩たちもゆったり練習してたし、かなり楽な方だと今だから思う。
「へぇー、もったいねぇな。やりゃいいのに」
葉瀬は半笑いでそう言う。
「まぁ、今はやりたいことたくさんあるからな。一度きりしかない青春を、俺たちは無駄にしたくないからな」
「一度きりの青春ねー……」
葉瀬は、そう呟くと立ち上がり、
「三石の言ってることは合っていたかも知れねぇなぁ」
苦笑しながら、自らを嘲笑うように言った。
「アイツはな俺たちに──」
「なにしてるの」
突然聞こえた女性の声。
その声の方を振り向くと、ショートカットの少女が立っていた。
葉瀬は彼女の存在を知るや否や、目を見開いて、呟いた。
「沙希……」
葉瀬の声は弱々しくなっている。
「ねぇ、なんで噂のあの子といるの?」
沙希と呼ばれた女性はその顔にハッキリと怒りを浮かべている。
「ねぇ、トモ君ー! えっーと、たしか……高川さんー! バーベキューの準備出来たんですけ……ど……」
「トモ君?」
沙希でいいのだろうか。
彼女は、葉瀬の彼女である明菜を思いきり睨み付けた。
「トモ君、こちらの女性は? お友達?」
「あのさ、二人とも、本当にわりぃ」
「俺は、二股をしてたんだよ……」
葉瀬は俺たちと出会ってから一番、困惑した表情を浮かべていた。
──
世の中には、光輝く人間と陰に身を潜める人間がいる。
俺はそれを知っているし、それの怖さも知っている。
たった一度のミスで、己の首を絞め、己を地の果てまで落とすことになるから。
だから、俺は、葉瀬が、そんな状況に陥っていることに目を疑った。
「私たちをなんだと思っているの!? あんたほど、最低な人間はいないよ!」
「皆に優しくするって、皆をバカにしているのと一緒じゃないの!」
俺は、死ぬほど憎んだ相手がこんな状況になっているのに、喜べない。
葉瀬は、その日、絶望に堕ちた。
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