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第9章 最後の桜と変わる雰囲気

123時間目 最後の体育大会①

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 今日は体育大会だあぁぁぁ!

 ……おっと失礼。今年最後だから始まる前から盛り上がっちゃった。

 俺、三石遼太郎は今とってもテンションが高い。

 モン〇ターエ〇ジーと眠〇打破を両方飲んでオールを考えてる大人くらいテンションが高い。

「遼太郎ゥ! アンタッ! 静かにしなさあぁぁい!」

 バターンと勢いよく部屋の扉が開かれたと思えば、母ちゃんがうるさい俺を叱ってきた。いや、母ちゃんの方がうるさいだろ。近所迷惑だし。

「母ちゃん! ドア開けないでよ! きしむでしょ!」

「アンタがデカい声だすからでしょうが!」

 母ちゃんからげんこつを食らった。痛い。息子をぶるなんて酷い母親だ。しくしく。

 朝の親子漫才はほどほどに母ちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べる。美味しい。何度食べても飽きない母の味。最高だ。

「あ、今日の弁当から揚げ?」

「そう。遼太郎はから揚げ好きでしょ?」

「もちろん! 母ちゃんのから揚げは最高!」

「まぁ、アンタがから揚げ好きって理由もあって今日はから揚げにしたけど今年で最後だろ? 高橋君と山内君だっけね……。その子らといられるの」

「うん、卒業だもん。俺、大学行かないで働いて母ちゃんのこと楽にさせてやりたいからさ。そのためにちゃんと工業のこと学べる学校行ったしな!」

 資格も取ったと俺はふんすと胸を張りながら言う。母ちゃんはいつも頑張ってくれている。俺も成績はあまり上がらないけどちょっとずつ落ちたり上がったりを繰り返している。

「親としては行って欲しいんだけどねぇ……。大学」

「いいっていいって」

 進路の話は極力したくない。母ちゃんが申し訳なさそうに話すから。

 ──別に大学に行かなくてもいい。誰かに苦労や迷惑をかけるくらいなら。

 俺はそんなネガティブな思考を捨てるため、少し早く朝ご飯を食べ終えて、笑顔を作って行ってきますの言葉を残して、家から出た。

 学校についてから着替えを終えて朝礼を終えて、色々な朝の出来事を終えてからようやく楽しみにしている体育大会が幕を開ける。

「ハチマキの巻き方ってこれであってるか? 毎年付けてるのに分かんねぇ」

 敦志は例年通りハチマキを付けるのに苦戦している。ツンツンヘアーだからハチマキをつけると盛り上がってすごいことになる。俺たちが何度も修正してやっと治ったのを思い出して笑ってしまう。

「えっーと……。ここをこうして、……うん。結構上手く出来たんじゃないかな?」

「おおっ。かっこよくなってんじゃん! ありがとうな! 裕太!」

 山内は手際がいいから少しの修正だけでサクサクと敦志をオシャレハチマキにしてくれる。

「それじゃあ、頑張ろうか」

「あぁ、楽しみだな!」

「おう! 頑張ろうぜ!」

 俺たち三人の声と共に体育大会は始まりを告げる。
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