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第9章 最後の桜と変わる雰囲気

128時間目 自分の気持ちに真っすぐに

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「ただいま」

 家に帰ってから、俺はいつも通り、ご飯を食べて、風呂を入っていつも通りの日常を過ごした。

 だけど、今日はここからなのだ。

 風呂あがり、タンクトップ姿の俺は頭を拭きながら、自室へと移動した。たくさんの大学のパンフレットを片手に俺はもう一度、リビングへ向かう。

「母さん、ちょっといい?」

「んー? 敦志、どうした?」

 せんべいをパリポリと食べながら言う母さんに少し苦笑いしながら俺は持ってきたパンフレットを見せる。

「進路、決めたくて」

 俺のその言葉に母さんの目が豹変した。だらけた母親の姿はどこにもなく、俺と向き合う母親の姿があった。

「とりあえず、ここに座りなよ」

「うん」

 正直、不安だった。今まで進路のことはあやふやだったから。急に言われたらビックリするだろう。

 お金もかかるし、時間も先延ばしになるから。

「俺さ、この高校入って、色々考えたんだけど」

「うん、敦志の考え聞くから教えて」

 いれてきた紅茶をすすりながら、母さんは優しく言ってくれた。

「俺さ、大学に行きたい。今まで自分の将来のことなんてあんまり考えてなくて、適当に大学行って適当に就職して、それなりの人生送るんだろうなって考えていたんだけど、やっぱり、それじゃあ嫌なんだ」

「裕太と遼太郎と出会って楽しい高校生活を送れて、小春と付き合って幸せになることと自分の将来に責任を持つことを感じて、『それなり』だったからきっと小春のこと幸せに出来ないから」

「だから、俺はちゃんと自分の得意な人に寄り添うっていう武器を使って将来を行きたい。俺は──教師になりたい」

 やっと言えた。小春に思いを伝えたときとは違う緊張が胸を支配していて、自分の将来とか責任とか逃げ出したくなる思いを必死に抑えても、言いたいことは言えた。

「きょ、教師か……」

 突然の言葉に驚いている母さん。そりゃそうだ。これまで将来のことを何ひとつ話さなかった息子から教師というワードがでたから。

「いやぁ、うん。そっかそっか」

 何かを自問自答し、考えた末なのだろうこちらに真剣なまなざしを向ける母さん。

 いよいよ、言葉がかけられる。ゴクリと生唾を飲む俺の喉の音がやけに大きく聞こえた。

「敦志、あんたはすごいねぇ」

 かけられたのは批判でも賛同でも無関心でもなく、優良との褒められる言葉だった。

「あたしと大違いだわ。適当に大学に行ってのほほんと暮らしていたあたしと」

「え、母さんそうだったの? 俺てっきりめっちゃ考えて計画的に行ったもんだと」

「あのねぇ、ほとんどの人間は計画通りなんて行かないのよ。そんなの天才だけ天の才だけ」

 大切な人や友人のために誓ったやつの前で言う必要ねぇだろと思いながらも、母さんの話を聞いた。

 どうやら、母さんは高校時代、中々のワルだったらしく、色々と迷惑をかけたらしい。

「それで、適当な大学行ったらそのときチャラ男だった父さんに捕まってね。それはもう、ね?」

 うっわ、想像しただけでなんか気分悪くなる。純愛が好きだからかなぁと一人変な気分になったところで、改めて母さんが聞いてきた。

「敦志の意思は伝わった。けど、どの大学行くの?」

 一番のメインディッシュである大学決め。もちろん、俺の答えは決まっていた。
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