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希い

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某日

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秋、某日、残暑が残る。
エアコンから出る冷風が少し肌寒いがペンを取り出し滑らせる。
「面倒臭い」
口が動く。
今、全てにおいてやる気が出ない。
「面倒臭い」
また、動く。
部屋に流れる音楽から気になる歌詞が流れた。
俺にとって青春とはなんだ。・・・思い出せない。
青春とは「青い春」と書くのに大体のものが夏だ。
矛盾している。
海だの迸る汗だの。何かキラキラと輝くものに俺たち人間は「理想」を添える。
理想とはあっけなく散る。だから理想というのだが、その理想に過度な期待を抱くと崩れた途端に
「こんなはずじゃなかった」と言う。
だから何だというわけなのだが、どうでも良い。俺には全く縁のない話だ。
溜息を一つ吐く。
何故こんな話をしたのか、正直俺にも分かり兼ねる。過去の俺に聞いてくれ。
「面倒臭い」
最初に巻き戻しである。
相変わらずペンを走らせ綴っているがいまいちインスピレーションというものが湧かない。面白いくらいにだ。
そうこうしている間にも部屋に流れていた音楽は流れ続ける。
コードは何だろうか。どうも心地が良い。
表現技法は?
考え出したらキリがないがそれを分かりながらも追求するのが人間の性だ。
一つの本も音楽も誰かの作品でありそれを受け取る誰かがいる。
俺が綴っているものもその中の一つだ。
俺は万人受けをするようなものを描くつもりは無い。俺の作品に感動するのも感銘を受けるのも勝手にしてくれ。
美しいと思って頂けるのなら本望だ。
俺は俺の描きたいものを描く。
それはきっと俺の中にある「美しい」と言う概念に絞られるだろう。
理解してもらいたいとは思わない。
人の価値観なんていうものを受け入れるのは思っている以上に難しい。
思い出や記憶なんていうものもそうだ。
描けるが言葉にはしにくい。出来ないことも無いが。
言葉に出来たとしても相手の価値観によって解釈が変わる。
綺麗なままで保ちたいなら心にでもしまっておけば良い。
だが、思い出や記憶は時として塵になる。
美しいものは朽ちても美しくあって欲しい。
あぁ。
本当に俺の青春の様だ。
「面倒臭い」
口が動く。
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