新世界~光の中の少年~

Ray

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第二十一話

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 ズボンに足を通し、ベルトを深々と締める。白Tシャツから詰襟を羽織り、校章の刻まれたボタンを下から順に留めていく。最後にフックを掛ければ息苦しいままで、父の元に駆けて行った。
「あぁ、素敵だね、瑞樹。よく似合ってるじゃないか」
 照れながらも、得意気に胸を張る。着心地の悪さは否めないが、喜んでもらえるなら、着た甲斐はあるというものだ。
 ただ父の目元は少し、潤んでいた。


『入学式』
と書かれた背丈ほどの看板が飾られている。
 こんな学校来るもんじゃない、と眉間に皺を寄せながら、通り抜ける。
 記憶にまだ新しいこの校舎へと続く道。今にも怖気付きそうだったので、目を伏せそそくさと進んだ。邪険に放られたあの一言を、あの言い草を、思い出さないように。
 校内は何やら騒がしい。
「やったっ!同じクラス!」
とハイタッチやハグジャンプをする女子生徒。それを横目に自身のクラスを確認した。
 二年三組男子、五十音順の中に名前を見つけ、そのままずっと下を辿る。
 奴らはいないようだ。いずれにせよ新たな悪玉が現れるのだろうが、今は甘んじてその解放感に浸っておくことにした。
 チアガールズを掻き分け教室に向かう。やっぱりここもうるさいのか、と落胆しながら中に入ると、視線が止まった。
 その先には、あの子の姿。
 静かに、席に座っている。
 自然と顔が綻んだ。
 あれからあと僅かで春休みだからきっと大丈夫、との読みは正しかったのかもしれない。
「はい、みんなー、席に着いてー」
 ガラガラと入って来たのは、女教師。あいつでないので一安心だが、油断はならない。もう期待などするかの眼差しで、じっと見据えた。
 うだうだ形式通りを並べ立て、始業式だからと体育館へ促された。
 それからは校長のうんざりな演説。
「本日は入学式とあって、新入生が新たな学生生活を始めます。皆さんには良いお手本となって頂き……」
 良いお手本はお前らが示したらどうだ、と思わずにはいられない。どうせ臭い物には蓋をして、万事何事もなかったかのように本年度もやり過ごすのだろう。このくだらない空間にいるだけで、いよいよイライラが募り始める。
 全てが滞りなく、期待通りに終了し、さっさと帰るぞと下駄箱に向かった。そして階段に差し掛かったところで、ウッと息が止まる。
 あいつらが、いた。
 突然足枷が付いたかのように、動けない。今ここでUターンをしたら、あまりにも露骨だ。こうなったら仕方がない、瑞樹は意を決して身構えた。
 トントントンと階段を上がる調子に鼓動が躍る。血の気が引く様があの時を彷彿とさせ、眩暈がした。

 来る、来る、来る……

 ガクガクと震えが起こり、咄嗟に俯く。
 あいつらは、そのまま通り過ぎて行った。
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