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一
第四十二話
しおりを挟む書斎の机に上半身を預け、うなだれていた。
自身のエピソードトークなど、初めてではないだろうか。恥ずかしくて堪らなかった。更には全くクールにも決められておらず、思い返せば返すほど、赤面した。
何言ってんだろ、ああ言えばよかった、こう言えばよかったと頭の中を後悔が駆け巡るが、時既に遅し。だが、ある程度身は削らないと、あいつは引き留められないと、思った。
元はと言えば、どれもこれも己のせい、当然の報いである。居心地の悪い思いをさせていたのは誰でもない、自分だった。何も悪いことをしたわけではないのに、いや、むしろ懸命に務め、大変に活躍してくれていた。高校の時だって、何度も声を掛けてくれて、友達に、なろうとしてくれた。
すると走馬灯のように、あの頃が蘇る。
そう言えば、常に視線は感じていたかもしれない。
俯きがちな瑞樹が唯一目を合わせていたのは、海斗だった。いつも彼の周りには人だかりがあり、実は羨ましかったのではないかと、それで目線が合っていたのかと、そう思っていた。
あの者が我が身に向けていた視線、それは嫌悪ではなく、加護だった。それなのにあいつは、何もできなかったことを悔やみ、謝罪した。
自殺が起き、考えられる限りを尽くして行動に起こしたのもあいつなのに。結果一人の餓鬼を見事に退学させたのだ。もうひとりは孤立し肩身狭く、その後は見る影も無かった。
何を謝る必要があるんだ。
あいつこそがみんなを、守っていたのに。
自分がしたのは、そんな者を追い出そうとしていたこと。これではいじめと変わらない。気づけば一番嫌いなタイプの人間に、自らがなってしまっていたのだ。
何故そんなことを……
そんなつもりじゃ、なかったのに……
悔しい。
ただただ、悔しかった。
力無く伏せる瑞樹を、月光が包み込む。机上は窓枠を綺麗に映し出していた。
手を持ち上げ、ゆっくりとそこに翳してみる。窓に忍び寄る黒い影は、何とも不気味に、感じた。
その手をこちらに向け、見つめる。
そしてぼそっと、呟いた。
「こんな奴だから君は、行っちゃったんだよね」
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