3 / 4
センパイの適温はわたし
しおりを挟む
結婚と恋愛は違う
結婚は『内』恋愛は『外』
妻とは身内になるから家族として昇華される
だから『外』で恋をしても
心には矛盾が生じない
恋であって愛があるわけでもないから
振り返ってみれば高校生の恋愛に
『愛』なんて本当はないと思う
『恋愛しませんか?』ではなく『恋しませんか?』が正しいんだろうな。
高校生が『愛してる』と口にする程、軽いものはないよな。
『情は人の為ならず』
これ、ずっと意味がわからなかった。
『回りまわって己の為』
情をかけるのは結局自分の為だよ。成長する為だ、くらいに思ってた。
最近になって、情が愛情を指すと考えられるようになって、ようやく納得した。
愛情なんて他者に向けるものではない。『愛してる』と言いながら多分に『愛してください』と求めていたりする。
無償の愛。我が子への無償の愛も存在しない事が研究結果として出てた。
それくらい剥き出しの自己愛を注ぐには、しっかり自分でたてていなければ到底叶わない。
恋は必ずいつか終わる
愛に昇華されるか消滅するか
でもね
純粋さだけでいったら『高校生の愛してる』ほど純度の高い『愛してる』もないと思うのよ
そう茉莉は言ったのだった。
高校1年の冬
中学1年生の茉莉に出会った。
ノートに書いてあった名前を見て、なんて名前?と聞いたら『先輩、こんな字も読めないんですか』と腕を腰にあてて、仁王立ちスタイルで返された。
おいおい、こっちは3つ上の先輩だぞ、と思いながらも、その口元のアヒル口具合が可愛いければ、その態度も可愛らしく、ごめんなさい、と素直に教えてもらった。
『まつり、です。ジャスミンの和名です。』
『そうなんだ』と、わたしとあまり身長の変わらない先輩の目が優しく笑っているので、きっとわたしは、この時に恋に堕ちた。
たぶん。
先輩とは、いつ頃からか、ずっとこんな感じで、わたしは先輩と同年代の先輩達と一緒になって、先輩をからかって遊んで過ごした。
遊んだと言ってもクラブ活動だったけど。
文芸部。先輩は水泳部と掛け持ちで、冬場には練習が早く終わる日と、練習日が2日に1回になるからと、仲の良かった他の先輩に誘われて、遊びに来てから、いつからかいつもいるメンバーになった。
文芸部では、月報があって、創作文を載せないといけないけれど、先輩は掛け持ちだし、どうするか、と思っていたら、いつもちゃんと書いてくれていた。
この世が実は花が見ている夢だった、というお話を見て、また少し先輩の好きが増えた。
いつの頃からか、他の先輩達がいなくても、からかえるようになって、先輩も『しょ~もない』イタズラを仕返して来るから、周りも、またやってるわ、と笑って楽しんでいた。
わたしは高校になったら運動がしたかったので、先輩方の卒業と一緒に文芸部から、バスケットボール部に移った。
卒業してから先輩に、手紙でそのことを伝えたら、クラブに遊びに行っても茉莉はいないんだな、と一応だと思うけれど『残念』と書いてくれていたから、『わたしのオフの日に直接遊びに来てください』と書いた後に、カレンダーを書き込んで、オフの日とついでに誕生日には会いに来る事、と書いて送った。
先輩はどちらかといえば筆不精だから、毎回ひとつの返事にこちらから2通以上送って返事を急かす。
ようやく届いた返事に、誕生日に会いに来ると書いてあって、わたしは喜んだ。
毎年誕生日には、会いに来てくれてたけれど、『好き』なんだけれど、『好きなだけ』のまま、3年生になった時にはわたしは恋人が出来た。
手紙にもその事を伝えたら『おめでとう』と書いて返ってきた。
さみしそうな雰囲気もなくて、なんだろう。勝手だとは思うけれど心がぽっかりして、ちょっとだけ泣いた。
19歳の夏、わたしの誕生日は恋人と過ごすでしょう?と言いながら前日に現れて、イルカの銀の指輪をプレゼントしてくれた。
かわいくて、じっと指を見ていたら『19歳の誕生日に他人から銀の指輪をプレゼントされたらしあわせになれるんやって』と言ってくれた。
恋人は他人にあたると思うけれど、明日、彼から貰えるのかな?
でも、だから左の中指サイズかも。そう思った。自分で買ったとか言えば明日もつけていられる。お守りみたいなものかな。
そう思っていたら、先輩との関係が特別に思えた。ミスターチルドレンのLOVEみたいな感じだったらいいなぁ。
それから、就職してからも何回かあったけれど
恋人が大学を出て3年後にわたしは結婚して、手紙のやりとりもなくなった。
結婚したときに、住所がわかるものを実家に置いていき、引っ越しもあってもうわからなくなっていた。
新しい職場は雰囲気が明るくて、とにかくよく笑う。いつ以来か思い出せない振りに笑い過ぎてお腹が痛くなる、そんな毎日だった。
週末はまだ子育てが大変だったので、妻が子供と一緒に実家に行くことが多く、その間に、海外赴任していた文芸部の同期の帰国に合わせてクラブ会があった。
いつも参加出来ていなくて、久しぶりだった。
いつものクラブ会のメンバーだけだと思って参加したら、珍しく女子の参加があって、思い出話に花が咲いているところに、途中で茉莉が店に入ってきた。
実は、今回の会に先立って茉莉に参加しないか手紙を出していた。
結局は住所不明で戻ってきていたし、高校の住所録の電話番号もやはり不通だった。
参加はないと思っていたので、ずいぶんと驚いた。
茉莉は僕の席から一番離れた場所に座った。席の加減もあったと思う。
席替えがあって移動する時、僕は隣にはいかず、卒業以来あっていなかった後輩と久しぶりの会話を楽しむことにした。
向こうからも、一度も近づいて来ることは無くて、何故か『なんで隣にこない』とイライラしていた。
もういいわ、と投げやりに2度目の席替えで、茉莉の横を通り過ぎようとしたら、いきなり茉莉に腕を掴まれて、隣に座らせられた。
『センパイにどうしても確認しないといけないんです。』『センパイ離婚したのでしょ』
『はっ?』だった。
『いや何の話?』
『わたしの親友がセンパイに離婚されたって泣いてました。佳純です。知ってるでしょ』
目が完全に座っている。
『センパイの苗字って他にいないでしょ』
『いや、確かにこの辺で同じ苗字は、みんな親戚やけど』
『どうして浮気なんてしたんですか』
顔がいつものアヒル口になっていた。これは絡んできている時の顔に違いない、と思ったが、あの頃はお酒は入っていなかった。
『あ、これ同じの追加で』熱燗の徳利を店員に見せる。
『おい、仲』
『んぅ~わたし、結婚して竹中です。』
『はいはい、竹中さん、飲み過ぎ。』
『大丈夫、強いんですから。そんな事はいいです。なんで佳純泣かすんですか』
そんなやり取りをしていると、幹事から、おーい、お開きにするぞ、と声がかかって、皆ぞろぞろと席を立ち始める。
店を出ると、駅まで少しの距離があって長い列になった。
一番後ろを歩いていたら、茉莉に手を取られた。
『ふふーんいいでしょ、一緒に歩きましょう』
そう言って手を振って、駅まで歩いた。
はい、と言って小さなメモ紙を渡された。
『わたしのアドレス』
『じゃあね』と反対側のホームに走って行った。
茉莉とのメールのやりとりは、その昔と同じように手紙のような長いメールばかりだった。
違いは、見終わった後、すぐに消去していた事。
それがお互いのルールの様な気がしていた。
その夏、花火を見ようと約束したけれど間に合わず。
それ以来約束のないまま花火大火の会場で待ち合わせをしている。
唯一、満開の夜に視界一面の桜と舞う花びらの中で、長い長いキスをした。
『わたしの特別。おかえりなさい』
『ただいま』
『わたしはいつでもセンパイの帰りを迎えるよ。だから、いってらっしゃい』
そう言ってさようならをした。
僕の手はとにかく冷たくなる。
その手を茉莉はとって
センパイのココロは温かい
わたしのココロはどこまでも冷たいからと
温かい手で温めてくれた
『わたしはセンパイの温かいココロで冷たいココロを温めてもらうから』
そう言った
『わたしはずっとそばにいるよ』
『忘れないで、センパイの適温はわたしだから』
メールは途切れ勝ちになって2年が過ぎていた。
久しぶりにメールを送る。
『まだ、ただいまと言っても、おかえりなさいと言ってくれますか』
『センパイ、おかえりなさい。
わたしは、いつだってセンパイの帰りを待ってます。
わたしはね、センパイが居なくても大丈夫なように過ごして来たよ。だからわたしは大丈夫。
センパイはどう?わたしが必要ですか?
きっとね、センパイもわたしが居なくても、大丈夫だと思ってる。
でもね、いつでもわたしの手が必要なら抱きしめてあげるから』
『わたしはセンパイの特別で、センパイはわたしの特別だから』
そういうメールの記録はもう残っていないから、すべてが記憶の話。
恋でもない愛でもなく
セカンドパートナーとさらっと言った茉莉との関係は、終わらせる予定がないからいつまでも続いている
『手を握って』
『いいよ、大丈夫。今日はゆっくりできるから』
部屋を片付け終わって、ゆっくりしていたらメールが届いていた。
今日、やっと抱えていた大きな仕事の片が付いた。
毎日残業続きだったからと思うとホッとしてお風呂あがりにワインを飲んでいた。
センパイからのメールは本当に手紙のようでいて、あの頃のように玄関先のポストを開ける時の気持ちが蘇る。
やけに達筆な文字で、お母さんが早とちりして、仕事中のお父さんに『茉莉がお爺さんっぽい人と文通してる』って電話した、ってだいぶ後から聞かされた事も思い出す。
そんなセンパイが『手を握って』という一行だけ。
ゆっくり握ってあげる。こころからそっと自分の手をセンパイを包み込むように握りしめる。
熱があるという返信と最後に『不思議と本当に楽になるんよね、眠れそうです。ありがとう』の文字。
インフルエンザの関節痛っぽいとも思いながら、よかった、と自分のココロが温められた事がわかる。
『センパイの適温はわたしだよ。ずっとね。おやすみセンパイ』
結婚は『内』恋愛は『外』
妻とは身内になるから家族として昇華される
だから『外』で恋をしても
心には矛盾が生じない
恋であって愛があるわけでもないから
振り返ってみれば高校生の恋愛に
『愛』なんて本当はないと思う
『恋愛しませんか?』ではなく『恋しませんか?』が正しいんだろうな。
高校生が『愛してる』と口にする程、軽いものはないよな。
『情は人の為ならず』
これ、ずっと意味がわからなかった。
『回りまわって己の為』
情をかけるのは結局自分の為だよ。成長する為だ、くらいに思ってた。
最近になって、情が愛情を指すと考えられるようになって、ようやく納得した。
愛情なんて他者に向けるものではない。『愛してる』と言いながら多分に『愛してください』と求めていたりする。
無償の愛。我が子への無償の愛も存在しない事が研究結果として出てた。
それくらい剥き出しの自己愛を注ぐには、しっかり自分でたてていなければ到底叶わない。
恋は必ずいつか終わる
愛に昇華されるか消滅するか
でもね
純粋さだけでいったら『高校生の愛してる』ほど純度の高い『愛してる』もないと思うのよ
そう茉莉は言ったのだった。
高校1年の冬
中学1年生の茉莉に出会った。
ノートに書いてあった名前を見て、なんて名前?と聞いたら『先輩、こんな字も読めないんですか』と腕を腰にあてて、仁王立ちスタイルで返された。
おいおい、こっちは3つ上の先輩だぞ、と思いながらも、その口元のアヒル口具合が可愛いければ、その態度も可愛らしく、ごめんなさい、と素直に教えてもらった。
『まつり、です。ジャスミンの和名です。』
『そうなんだ』と、わたしとあまり身長の変わらない先輩の目が優しく笑っているので、きっとわたしは、この時に恋に堕ちた。
たぶん。
先輩とは、いつ頃からか、ずっとこんな感じで、わたしは先輩と同年代の先輩達と一緒になって、先輩をからかって遊んで過ごした。
遊んだと言ってもクラブ活動だったけど。
文芸部。先輩は水泳部と掛け持ちで、冬場には練習が早く終わる日と、練習日が2日に1回になるからと、仲の良かった他の先輩に誘われて、遊びに来てから、いつからかいつもいるメンバーになった。
文芸部では、月報があって、創作文を載せないといけないけれど、先輩は掛け持ちだし、どうするか、と思っていたら、いつもちゃんと書いてくれていた。
この世が実は花が見ている夢だった、というお話を見て、また少し先輩の好きが増えた。
いつの頃からか、他の先輩達がいなくても、からかえるようになって、先輩も『しょ~もない』イタズラを仕返して来るから、周りも、またやってるわ、と笑って楽しんでいた。
わたしは高校になったら運動がしたかったので、先輩方の卒業と一緒に文芸部から、バスケットボール部に移った。
卒業してから先輩に、手紙でそのことを伝えたら、クラブに遊びに行っても茉莉はいないんだな、と一応だと思うけれど『残念』と書いてくれていたから、『わたしのオフの日に直接遊びに来てください』と書いた後に、カレンダーを書き込んで、オフの日とついでに誕生日には会いに来る事、と書いて送った。
先輩はどちらかといえば筆不精だから、毎回ひとつの返事にこちらから2通以上送って返事を急かす。
ようやく届いた返事に、誕生日に会いに来ると書いてあって、わたしは喜んだ。
毎年誕生日には、会いに来てくれてたけれど、『好き』なんだけれど、『好きなだけ』のまま、3年生になった時にはわたしは恋人が出来た。
手紙にもその事を伝えたら『おめでとう』と書いて返ってきた。
さみしそうな雰囲気もなくて、なんだろう。勝手だとは思うけれど心がぽっかりして、ちょっとだけ泣いた。
19歳の夏、わたしの誕生日は恋人と過ごすでしょう?と言いながら前日に現れて、イルカの銀の指輪をプレゼントしてくれた。
かわいくて、じっと指を見ていたら『19歳の誕生日に他人から銀の指輪をプレゼントされたらしあわせになれるんやって』と言ってくれた。
恋人は他人にあたると思うけれど、明日、彼から貰えるのかな?
でも、だから左の中指サイズかも。そう思った。自分で買ったとか言えば明日もつけていられる。お守りみたいなものかな。
そう思っていたら、先輩との関係が特別に思えた。ミスターチルドレンのLOVEみたいな感じだったらいいなぁ。
それから、就職してからも何回かあったけれど
恋人が大学を出て3年後にわたしは結婚して、手紙のやりとりもなくなった。
結婚したときに、住所がわかるものを実家に置いていき、引っ越しもあってもうわからなくなっていた。
新しい職場は雰囲気が明るくて、とにかくよく笑う。いつ以来か思い出せない振りに笑い過ぎてお腹が痛くなる、そんな毎日だった。
週末はまだ子育てが大変だったので、妻が子供と一緒に実家に行くことが多く、その間に、海外赴任していた文芸部の同期の帰国に合わせてクラブ会があった。
いつも参加出来ていなくて、久しぶりだった。
いつものクラブ会のメンバーだけだと思って参加したら、珍しく女子の参加があって、思い出話に花が咲いているところに、途中で茉莉が店に入ってきた。
実は、今回の会に先立って茉莉に参加しないか手紙を出していた。
結局は住所不明で戻ってきていたし、高校の住所録の電話番号もやはり不通だった。
参加はないと思っていたので、ずいぶんと驚いた。
茉莉は僕の席から一番離れた場所に座った。席の加減もあったと思う。
席替えがあって移動する時、僕は隣にはいかず、卒業以来あっていなかった後輩と久しぶりの会話を楽しむことにした。
向こうからも、一度も近づいて来ることは無くて、何故か『なんで隣にこない』とイライラしていた。
もういいわ、と投げやりに2度目の席替えで、茉莉の横を通り過ぎようとしたら、いきなり茉莉に腕を掴まれて、隣に座らせられた。
『センパイにどうしても確認しないといけないんです。』『センパイ離婚したのでしょ』
『はっ?』だった。
『いや何の話?』
『わたしの親友がセンパイに離婚されたって泣いてました。佳純です。知ってるでしょ』
目が完全に座っている。
『センパイの苗字って他にいないでしょ』
『いや、確かにこの辺で同じ苗字は、みんな親戚やけど』
『どうして浮気なんてしたんですか』
顔がいつものアヒル口になっていた。これは絡んできている時の顔に違いない、と思ったが、あの頃はお酒は入っていなかった。
『あ、これ同じの追加で』熱燗の徳利を店員に見せる。
『おい、仲』
『んぅ~わたし、結婚して竹中です。』
『はいはい、竹中さん、飲み過ぎ。』
『大丈夫、強いんですから。そんな事はいいです。なんで佳純泣かすんですか』
そんなやり取りをしていると、幹事から、おーい、お開きにするぞ、と声がかかって、皆ぞろぞろと席を立ち始める。
店を出ると、駅まで少しの距離があって長い列になった。
一番後ろを歩いていたら、茉莉に手を取られた。
『ふふーんいいでしょ、一緒に歩きましょう』
そう言って手を振って、駅まで歩いた。
はい、と言って小さなメモ紙を渡された。
『わたしのアドレス』
『じゃあね』と反対側のホームに走って行った。
茉莉とのメールのやりとりは、その昔と同じように手紙のような長いメールばかりだった。
違いは、見終わった後、すぐに消去していた事。
それがお互いのルールの様な気がしていた。
その夏、花火を見ようと約束したけれど間に合わず。
それ以来約束のないまま花火大火の会場で待ち合わせをしている。
唯一、満開の夜に視界一面の桜と舞う花びらの中で、長い長いキスをした。
『わたしの特別。おかえりなさい』
『ただいま』
『わたしはいつでもセンパイの帰りを迎えるよ。だから、いってらっしゃい』
そう言ってさようならをした。
僕の手はとにかく冷たくなる。
その手を茉莉はとって
センパイのココロは温かい
わたしのココロはどこまでも冷たいからと
温かい手で温めてくれた
『わたしはセンパイの温かいココロで冷たいココロを温めてもらうから』
そう言った
『わたしはずっとそばにいるよ』
『忘れないで、センパイの適温はわたしだから』
メールは途切れ勝ちになって2年が過ぎていた。
久しぶりにメールを送る。
『まだ、ただいまと言っても、おかえりなさいと言ってくれますか』
『センパイ、おかえりなさい。
わたしは、いつだってセンパイの帰りを待ってます。
わたしはね、センパイが居なくても大丈夫なように過ごして来たよ。だからわたしは大丈夫。
センパイはどう?わたしが必要ですか?
きっとね、センパイもわたしが居なくても、大丈夫だと思ってる。
でもね、いつでもわたしの手が必要なら抱きしめてあげるから』
『わたしはセンパイの特別で、センパイはわたしの特別だから』
そういうメールの記録はもう残っていないから、すべてが記憶の話。
恋でもない愛でもなく
セカンドパートナーとさらっと言った茉莉との関係は、終わらせる予定がないからいつまでも続いている
『手を握って』
『いいよ、大丈夫。今日はゆっくりできるから』
部屋を片付け終わって、ゆっくりしていたらメールが届いていた。
今日、やっと抱えていた大きな仕事の片が付いた。
毎日残業続きだったからと思うとホッとしてお風呂あがりにワインを飲んでいた。
センパイからのメールは本当に手紙のようでいて、あの頃のように玄関先のポストを開ける時の気持ちが蘇る。
やけに達筆な文字で、お母さんが早とちりして、仕事中のお父さんに『茉莉がお爺さんっぽい人と文通してる』って電話した、ってだいぶ後から聞かされた事も思い出す。
そんなセンパイが『手を握って』という一行だけ。
ゆっくり握ってあげる。こころからそっと自分の手をセンパイを包み込むように握りしめる。
熱があるという返信と最後に『不思議と本当に楽になるんよね、眠れそうです。ありがとう』の文字。
インフルエンザの関節痛っぽいとも思いながら、よかった、と自分のココロが温められた事がわかる。
『センパイの適温はわたしだよ。ずっとね。おやすみセンパイ』
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる