7 / 91
聖騎士ロイ編
第3話 (2/2)
しおりを挟む(そうか、気絶して……記録時点に戻ってきたのか……)
俺は咄嗟に自分の体を確かめた。
汗に濡れた肌もない。髪も乱れていない。――もちろん、股ぐらも濡れていない。
けれど、心臓の鼓動だけがやたらとうるさい。呼吸も荒い。体温が妙に高い。ついさっきまで、確かに“していた”感覚が、全身に残っている。
「どうされました? あ……もしかして魔物にやられて、戻ってこられました?」
神官の問いに、俺はびくりと肩を揺らした。
“はい! ロイっていう人型魔物に尻穴ぶち犯されて気絶しました!”
……言えるか!
俺は、目を泳がせながら必死に取り繕う。
「あっ、あー……そう、だな。ちょっとばかし、手強い魔物に……」
「やはりそうでしたか。では……『おお勇者よ、倒れてしまうとは情けない!』」
「どうもすみません……気をつけます……」
形ばかりの会話を交わして、『冒険の書』を受け取る。軽く頭を下げ、くるりと振り返ると――
「なんだ、どこでやられたんだ?」
ロイが、真剣な瞳で俺を見ていた。
くそ、タイミング悪っ……! 真っ直ぐすぎて、顔が見れない。
そう、こいつは真面目だから……毎回、巻き戻りの原因を聞いてくる。いや……でも今回は――
“宿で、お前の凶悪チンポに貫かれて昇天しました! 最高でした!”
……言えるかッ!!!
「ま、街を出たところで群れに囲まれてさ……今度はルート変えるよ」
嘘だ。完全な嘘だ。でも、今の俺にはこれが限界。そのまま、訝しげなロイの目線を避けて教会を後にする。
「意外と、一番油断するところですよね」
イリアの声が助け舟のように響く。
「出発時は十分注意しましょうね」
うーん、さすが勇者一行の潤滑油。尻穴にもパーティにも、こういう存在は欠かせない。
「んなことより、早く宿探そうぜ~」
アッシュが肩をすくめてぼやく。
「今回は全員個室な。オレ、女連れ込むから」
「またアッシュさんはそういうことを……」
「なんだ? イリアちゃんが相手してくれるのか?」
「もぎますよ」
少し前にも聞いた会話。ああ、なんだか懐かしい。
ロイの横顔を見ると、笑っていた。その目に、欲望の影は一切なかった。
あのとき、俺の中にいきりたったチンポを打ち込んでいた男とは、到底思えない。今目の前にいるのは、いつもの誠実で生真面目なロイ――それだけだった。
「……ジーク、俺の顔に何かついてるか?」
静かにそう言って、軽く笑う。
ああ、間違いない。何も覚えてない。記憶がある人間の目じゃない。
俺の記憶では、数分前に俺の精液が顔に飛んでました。ごめんなさい。だけど今のお前は、そんなこと知る由もなく笑ってる。
俺が突然キスして、フェラして、チンポねだって、セックスしたことを――全部忘れてる。
「……なんでもないよ」
俺は道を歩きながら、ぼんやりと考えた。
……分かってる。こんなやり方、良くないってことくらい。
ロイは俺のこと、ただの親友として見てる。旅についてきてくれたのも、俺のためじゃなく、あくまで“王命”だからだ。
だから、多くは望まない。本当は、ちゃんと伝えたかったけど――一度でいい。たった一度でいいから、彼に抱かれてみたかった。
ロイにとって、聖騎士の称号は夢だった。その誇りを、俺のせいで汚したくない。……だから、全部“戻す”んだ。
ロイの中から、この記憶は消えた。でも、俺の中には、ちゃんと残ってる。それでいい。俺だけが覚えていれば、それでいいんだ。
それだけで、今は……満たされてる。
……たぶん。
***
宿の、自室のドアを閉める。ロードされる前と同じ宿、同じ部屋。
上着を脱いでベッドに身を投げると、ふわりと体が沈んだ。やっぱりフカフカ、幸せ。
(……巻き戻る前は、確かここで……)
脳裏にぼんやり浮かぶのは、潤滑剤の匂いと、自分の指が作った淫らな音。ベッドで腰を浮かせて、尻穴ほじって……いやいや、思い出すな。
「うーん……ドギツイことしてたな、俺……」
今は――もう満足した。ちゃんとロイに抱かれて、欲しかったものは全部もらった。
(ちゃんとぶち込んでくれるなんて、最高だよロイ……俺の誘惑、通用して良かったぁ……)
完全に理性を飛ばしていたロイの様子を思い出し、にんまりと笑ってしまう。
(……それに、ロイのチンポ、やっぱりでっかかったなぁ……)
なんて、余韻に浸りながら、ゆっくり目を閉じた。満たされた快感が、心地よい眠気を連れてくる。
――が。
(……ロイ……本当に、忘れてるよな?)
ふと不安がこみ上げる。
教会での笑顔、誠実で変わらない態度――確かに、記憶はないはずだ。
けど。
(……なんか、微妙に目が泳いでたような……?)
いや、見間違いかもしれない。でも、でも――
(ていうか俺自身、割と頭ぶっ飛んでたせいで、記憶あんまりないんだよな……)
突っ込まれて真っ白になって昇天して絶頂して気絶したもんだから、もうラストの記憶が曖昧で……え、あれ、ロイって最後何て言ってたっけ? どんな顔してたっけ?
(あーーーッ!? 思い出せねえ! せっかくの!! ロイとのセックスが!!!)
頭をかきむしってベッドの上で悶える。
(どうする、もう一回……いやいや、さすがに……!)
でも、こういうのって、ちゃんと“確認”しないと後々引きずるっていうし。あくまで確認。念のため。俺の精神安定のため。
……うん、そう。確認のため。
(よし、ロイの部屋……行こう)
俺は立ち上がると、ベッドの上に散らばった服を慌てて掴み、さっきよりほんの少しだけ理性のある顔で、部屋を飛び出した。
31
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる