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聖騎士ロイ編
第10話 (2/4)
しおりを挟む宿の部屋に戻っても、俺は戸惑っていた。
部屋に一人きりにしていいものか。イリアに相談すべきか。だが、ジークはそんなこと望まないだろう。他人に知られるのはきっと辛いはずだ。
俺にできることは何もない――そう思いながら、部屋の扉に手をかけたときだった。
「ロイ……待って……」
静かな声が、背中を引き留めた。
「そばに、いてほしい……」
か細く震える声と、潤んだ瞳。
こんなジークは、見たことがなかった。
そうだ。今、俺がすべきことは、ジークの望みに応えることだけ。
分かった、と頷いて、ベッドの縁に腰を下ろす。ジークの隣に並んで座ると、彼の身体がそっと寄り添ってくる。あたたかな体温が伝わってきて、思わず呼吸が浅くなり、心拍が速まった。
さらに、彼の手が重なる。細い指が、俺の手に絡んできた。
「……ロイ、抱きしめてくれないか……?」
その声に、心が軋んだ。
何度も抱きしめたいと願いながら、何度も踏みとどまったその手を、今、ジークが自ら求めてくれている。
それがたとえ一時の慰めでも――たとえ偽物でも、俺には十分だった。
俺は頷いて、ジークを抱きしめた。
柔らかい黒髪が頬をかすめる。香りを吸い込みそうになるのを堪え、息を詰める。
そのとき、ジークの手が、そっと俺の背へ回された。だが、かすかに――ほんのわずかに、その指が震えているのに気づく。
(……怖かったんだな)
そう思った瞬間、胸が締めつけられた。
ジークは、何も言わない。泣きも叫びもしない。でも、その手が、震えている。身体が、こわばっている。
だから俺は、より強く、ぎゅっと彼を抱きしめた。大丈夫だと、言葉にせずに伝えるように。
(守ると誓った……何があっても……)
爆音を鳴らす心臓をなんとかやり過ごしていたとき――ジークがふと、俺の胸から顔をあげた。
「ロイ……あの……こんなこと……ロイにしか頼めなくて……」
間近で、見つめられながら、そっと囁かれる。
その声が、優しさが、全部俺を殺しにくる。
「……お尻の穴、なんだか変な感じで……
裂けたりしてないか……見てくれないかな……?」
――えっ?
思考が一瞬で蒸発する。
一瞬、耳を疑った。
裂けてないか――って、それって……
体を触られたくらいだと思っていた。
まさか、挿れられてた? 本当に、あのジークが――“中まで”?
目の奥がぐらりと揺れる。
息が詰まる。吐き気すらした。
思考がまとまらない。
それでも――
「……お、お前が……そう言うなら……」
口が勝手に返事をしていた。
どうすればいいか分からない。
だが、ジークが俺を信じてくれたのなら――その願いに、応えるしかなかった。
たとえ、その先に待つものが、どれだけ罪深い行為でも。俺はもう、ジークの手を振りほどけなかった。
(ジークのためなら、俺は何だってやる。そう決めた)
自分自身に、そう言い聞かせながら。
震える指で、彼の下着へと手を伸ばしていた。
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