セーブして掘られてロードする 〜ドスケベ淫乱勇者・ジークの冒険譚〜

卯月ひすい

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魔術師アッシュ編

第12話 聖騎士、湯気の中で溺れる(1/3)

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【時系列:現在 / 視点:ロイ】

——————


 シャワーの冷水が髪を伝って、肩を濡らす。

 冷え切った身体が、自然と身震いする。だが、それでも――とにかく頭を冷やしたかった。

 ジークと二人きりで部屋にいる――その事実が、心のどこかを騒がせているのを自覚していた。
 そして、その浮き足立った感情の裏側には、どうしようもなく邪な想いがあった。……それを振り払うべく、冷水を浴びていた。

 このまま二人きりでいるのは、どうにもまずい。アッシュに早く戻ってきてほしい――という思いはあったが、それ以上に気になることがあった。


 最近のジークは、妙にアッシュと話す機会が多くなっていた。

 パーティのリーダーとして仲間との信頼関係を築こうとしているのだと、そう思えば納得はできる。けれど、今夜の夕食の席での視線――あれは明らかに、アッシュを“見ていた”。

 料理を取る手、ワインを煽る仕草、揺れる銀髪、笑い声。
 ジークは、それらすべてを目で追っていた。

 まるで、恋する乙女のように。


 ……まさか。

(……ジークは、アッシュのことを……?)

 アッシュは嫌味で軽薄な男に見えるが、その実、魔法の実力は本物で、洞察に富み、所作にもどこか品がある。
 あのナンパ癖も、単なる下心ではなく、彼の生まれ持ったカリスマ性からくるものだと最近は思うようになった。

 そんな彼のことを、魅力的に思ってしまうのは何も不思議なことではない。だが――

(……嫉妬してるのか、俺は……こんなにも、醜く)

 湧き上がる感情を飲み込もうとした、そのときだった。

 ガチャリ、とシャワー室のドアが突然開いた。

「……っ!?」

 振り返る間もなく、脱衣所から入ってきたのは――素っ裸の、ジーク。
 輝くような白い肌の肢体に眼を奪われそうになるが、慌てて目線を戻す。さっきから、散々彼のことを考えていたのだ。何か言いたくても、言葉が出てこない。

「ちょっと俺も早く浴びたくてさ……って、冷たっ!? 何で!?」

 ジークは水飛沫にびくりと身を震わせる。

「……あ……」

 彼にまで冷水を浴びせてしまった。
 でも何も言えない。思考が止まって、身体も動かない。

「なに、魔道具壊れてんの!? ちょ、止めろよ!」

 慌てて中に入り込み、魔道具の操作に手を伸ばすジーク。その腕が、俺の体に触れる。濡れた肌が触れ合い、そこだけがやたらと熱を帯びていた。

 やがて水が止まり、二人の髪から落ちる水滴が静かに床を叩いた。

「……うう、さっむぅ……。壊れてるって、宿のオヤジに言ってくるよ……お前はとっとと体拭いて、暖炉に――」
「いや、壊れてない……わざと冷水を浴びてて……」
「はあ?」

 ようやく出せた返事に、ジークが怪訝な声をあげる。シャワー室の中で、その声が妙に響いた。
 またも、俺は何も言えなくなる。

「……はいはい、お湯出るんだな。まったく、何やってんだか……」

 彼は震えながら、再び魔道具を操作しようと腕を伸ばした。

「身体壊すぞ……って、ぎゃぁッ!? あっつぅぅぅ!?」

 熱湯が頭上から降り注ぐ。湯気で視界が悪くなり、水音と、ジークの悶絶する声が鼓膜を叩く。
 その混乱の中で、妙に頭だけが冷静だった。

(ジーク……昔から、細かい調整苦手だよな……)

 俺はそっとジークの手に自分の手を重ねて、魔道具に流れる魔力の量を調節する。すっとお湯の温度が下がり、心地よい温もりが肌を包んだ。

「……ああ~、さんきゅ。これくらいで丁度いいわ」

 ジークが、ふうと息を吐きながら髪をかき上げる。

「……いや、そもそもなんで入って来たんだ……」

 そう言いながらジークを見ると――きょとんとした表情。

「え? いいじゃん別に。昔はよく一緒に風呂入ってたんだし」
「……10年以上前の話だろう」
「ケチだなあ。……ほら、もっとそっち行けよ。お湯、当たんねーんだよ」
「こんな狭いシャワー室で、無茶を言わないでくれ……」

 文句を言いながらも、身体は自然とずれていた。お湯の温もりが、肌の内側まで染み込んでいく。さっきよりも身体が密着しているのに、不思議と、心は静かだった。

 ――ああ、そうだ。
 ジークは、俺の幼馴染で、親友だ。
 それは、かけがえのない関係で、一生の絆で。

(ジークが誰かを好きになるのなら……それを、応援してやらないと)

 胸の奥に、温かなものが広がる。答えを見つけられた、安堵だろうか。

(……俺は、馬鹿だな。こんな嫉妬に囚われて)

 そう思って、そっと視線を落とした。




 ……その瞬間。

 ジークの身体をふと見下ろして――息を飲む。


 “それ”が、腹に付きそうなほど、そそり立っていた。


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