【完結】舞雪(作品251226)

菊池昭仁

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第5話

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 「どこか痛いところはありませんか?」
 
 ナースの問いかけに私は力なく首を横に振った。

 「看護師さんはどうして看護師さんになったんですか?」
 「私、お爺ちゃんとお婆ちゃんに育てられたんです。だから早く恩返しがしたくてナースになりました」

 おそらく親は亡くなったか、彼女を捨てたのかも知れない。
 私はそれには触れなかった。

 「えらいね」
 「普通ですよ、そんなの。
 お世話になったらお礼をする、当たり前じゃないですか?」
 「私はお礼、していないなあ」
 「誰にお世話になったんですか?」
 「家族」

 若い看護師は寂しそうに笑った。
 ここに入院して、家族が誰も見舞いに来ないことをわかっていたからだ。
 
 「レースのカーテンを開けてくれますか?」 
 「はい、だいぶ雪が強く降っていますね?」

 外は羽毛布団の羽毛のような雪が降っていた。

 「こんな雪の日は空でホレのおばさんが羽毛布団を叩いているんですよね?」
 「そうなんだ」
 「保育園でそう教わりました」
 「ホワイトクリスマスだね?」
 「ロマンチックですね?
 よし、来年のイブまでには彼氏を作るぞー。
 来年のイブは病院じゃなく、彼女さんと迎えられるといいですね?」

 私は軽く微笑んで見せた。
 おそらく私に来年は来ないだろう。

 私たちは無言で窓の外を眺めていた。
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