【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁

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入院53日目

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 元いた病室に戻って来た。
 相変わらず2人のジジイは寝たきりだが高市早苗みたいにぴょんぴょん、じゃなかった、ピンピンしている。
 死神さんも寄りつかないほど、元気にナースコールを押しまくり、チョー忙しいナースさんたちを自分の奥さんのようにこき使っていた。


 「すみませーん、ペットボトルにお水を汲んで来て下さーい」
 「粉の喘息薬を下さい」
 「ウンチが出ないので坐薬を入れて下さい」
 「腰が痛いから揉んでくれませんか?」
 「ウンチ漏らしました」
 「ゲホゲホ カッペ(痰を吐く音)」
 「おえーっ ゲロゲロ」
 「ぷすー ぶりぶり」
 「エロビデオが映りません」

 そして突然電池が切れたようにイビキをかいて寝てしまう。
 そして大声で寝言。

 「バカヤロー!」
 「殺すぞテメー!」

 看護師さんにはモテたいから紳士的に無理難題をふっかけるが、実のところチンピラヤンキー老人なのである。


 ふざけやがって! それじゃあガザでのイスラエルによるパレスチナの人たちの虐殺の片棒を担ぎ、グリーンランドを分取ろうと画策し、ベネズエラの石油や資源を略奪するために攻撃を仕掛けるトランプ、そしてそれを支援、支持する高市早苗と同じじゃねえか!


 そこへ看護副師長の住吉さんがラウンドにやって来た。

 「よかったわね? 狸小路さん、また生きて戻ってこれて。
 妙ちゃんの最初の処置が迅速且つ的確だったから助かったみたいよ」

 (アイツ、そんな事は言わねえからな?)

 「ところでこのジジイたち、なんとかなんねえのか?
 うるさくてエッチビデオにも集中できねえよ」
 「そんな元気があるならまもなく退院ね?」
 「まあアパートに帰った所ジョージ(ところ)で待ってる家族も女もポメラニアンもいねえしな。
 天涯孤独だよ、俺は」

 すると住吉さんは深い溜め息を吐いた。


 「はあ~、天涯孤独かあー。
 いたなあ、そんな患者さんが」
 「ここで死んだのか?」
 「うん、そして亡くなる直前に言われたわ。「アンタは俺に何もしてはくれなかった」って。
 まだ看護師になりたての頃ではあったんだけど、自分ではその患者さんに精一杯尽くした筈だと思っていたから物凄くショックだった。
 私は独りよがりで相手の気持ちも考えずにいい気になっていたんだと思う」
 「アンタみたいなバリバリのナースにもそんな事があったんだなあ」
 「もちろん自分がわからなくなった痴呆の人もいるからご本人が今、何を求めているからはわからないこともある、だから私がこの人の家族だったらって考えるようにしているわ。この患者さんが自分の親、旦那さんだったらどうして欲しいかを」
 「まあ俺も明日、北病棟に部屋が変わるようだからこの爺さんたちともおさらばだけどな?」
 「北病棟は新しいしナースも親切だからいいわよ、いつでもまたここに遊びに来て下さいね」
 「住吉さんも北病棟に一緒に異動してくれよ」
 「あはははは」

 この病棟は終末医療、穏やかに死を迎えるためのホスピスの側面もあることを知った。
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