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入院54日目
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新しい病棟に移動する日が来た。
「それじゃあ狸小路さん、北病棟に移動しましょうか?」
「よろしく頼むよ。この部屋から出られるのは嬉しいけど、奈緒子さんとお別れするのは寂しいな」
「同じ3階ですからいつでも遊びに来て下さいね?」
「携帯番号教えてよ」
「3ー6の馬連が買いですね?」
「それは競馬の馬券、スマホの番号を訊いてんの!」
「ああ、ごめんなさい、電話番号は028の・・・」
「それはパラダイス病院の電話番号!」
「私、スマホ持ってないんです」
「もういい! それならパンツくれ」
「私、パンツ履いてないんです」
「もういい!」
新しい病室はサングラスが必要なほど明るい病室だった。
沈みがちだった私の心も少し晴れた。
火曜日は美人パン屋さんの移動販売が来る日だったので下に降りて行くと黒山の人だかり。
端から選んで行けばいいものを、右往左往しているお客たち。
「ラムレーズン・フランスパンは何日持ちますか?」
「申し訳ありませんが本日中にお召し上がり下さい」
(何? ラムレーズンだと⁈)
ラムレーズンは私の大好物である。
ラムレーズン・バターにハリケーン・ゲッツのアイスクリームもラムレーズン、『うる星やつら』のラムちゃんも大好きだっちゃ。
「ラムレーズン・フランスパンとと白身魚フライサンド、それからお姉さんのパンツちょうだい」
パンツは冷たくスルーされた。
「360円になります」
「安いぜよ」
土佐弁になっちゃった。
談話室の自販機で温かいコーヒー『ナンタ?(WANDA)』を買い、ラムレーズンパンを食べた。
「美味しくて死んじゃいそう!」
危うく死んじゃうほど美味かった!
するとヤバそうなジジイが車椅子でやって来るとテレビの前50cmに陣取り、耳も遠いらしくレディ・ガガのライブ・コンサートのような大音量で聴き出した。
やはりここもボケ老人の巣窟たつた。
でももう慣れた。人は環境に順応する生きものがかり(生き物)だから。
食べて寝る生活に、いつの間にか私の思考回路はプッツンしているようだった。
「タヌキさんですね?」
「誰が緑のタヌキ、小池百合子じゃ! 俺は狸小路! 都民ワースト(ファースト)じゃねえ!」
「あっ、タヌキが喋った」
「俺はニ、ン、ゲ、ン!」
「ヤダ、真面目か?
ほんのご挨拶よ。担当の叶瑠璃子です。よろしく」
握手をした。
冷たい手だった。深い悲しみがあるような手だった。
妙と同じ匂いがした。
「それじゃあ狸小路さん、北病棟に移動しましょうか?」
「よろしく頼むよ。この部屋から出られるのは嬉しいけど、奈緒子さんとお別れするのは寂しいな」
「同じ3階ですからいつでも遊びに来て下さいね?」
「携帯番号教えてよ」
「3ー6の馬連が買いですね?」
「それは競馬の馬券、スマホの番号を訊いてんの!」
「ああ、ごめんなさい、電話番号は028の・・・」
「それはパラダイス病院の電話番号!」
「私、スマホ持ってないんです」
「もういい! それならパンツくれ」
「私、パンツ履いてないんです」
「もういい!」
新しい病室はサングラスが必要なほど明るい病室だった。
沈みがちだった私の心も少し晴れた。
火曜日は美人パン屋さんの移動販売が来る日だったので下に降りて行くと黒山の人だかり。
端から選んで行けばいいものを、右往左往しているお客たち。
「ラムレーズン・フランスパンは何日持ちますか?」
「申し訳ありませんが本日中にお召し上がり下さい」
(何? ラムレーズンだと⁈)
ラムレーズンは私の大好物である。
ラムレーズン・バターにハリケーン・ゲッツのアイスクリームもラムレーズン、『うる星やつら』のラムちゃんも大好きだっちゃ。
「ラムレーズン・フランスパンとと白身魚フライサンド、それからお姉さんのパンツちょうだい」
パンツは冷たくスルーされた。
「360円になります」
「安いぜよ」
土佐弁になっちゃった。
談話室の自販機で温かいコーヒー『ナンタ?(WANDA)』を買い、ラムレーズンパンを食べた。
「美味しくて死んじゃいそう!」
危うく死んじゃうほど美味かった!
するとヤバそうなジジイが車椅子でやって来るとテレビの前50cmに陣取り、耳も遠いらしくレディ・ガガのライブ・コンサートのような大音量で聴き出した。
やはりここもボケ老人の巣窟たつた。
でももう慣れた。人は環境に順応する生きものがかり(生き物)だから。
食べて寝る生活に、いつの間にか私の思考回路はプッツンしているようだった。
「タヌキさんですね?」
「誰が緑のタヌキ、小池百合子じゃ! 俺は狸小路! 都民ワースト(ファースト)じゃねえ!」
「あっ、タヌキが喋った」
「俺はニ、ン、ゲ、ン!」
「ヤダ、真面目か?
ほんのご挨拶よ。担当の叶瑠璃子です。よろしく」
握手をした。
冷たい手だった。深い悲しみがあるような手だった。
妙と同じ匂いがした。
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