★【完結】猫になった銀次郎(作品241122)

菊池昭仁

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第2話

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 「よかったね? 子猫ちゃん。 新しい飼主さんが見つかるまでここに居てもいいんだってさ」
 「ニャー(ひとまず安心ニャ、ありがとニャ、女子高生)」
 「お腹空いたよね? 猫用のミルク、買って来るから待っててね?」
 「注射器も忘れちゃ駄目よ。自分ではまだミルクは飲めないから」
 「うんわかってる、一平の時もそうだったから」
 「気をつけてね? ついでにお豆腐を買って来て頂戴」
 「ハーイ、行って来まーす!」
 「ニャア(行ってらっしゃいニャ。俺、腹ぺこなんニャ。あー、味噌ラーメンと餃子、それとビールが飲みてえニャ)」

 女子高生は早速ペットショップへと出掛けて行った。
 その時、俺はエアコンの下のラックから鋭い視線を感じた。

 (誰かが俺を見ている)

 「シャーッ!(オイお前、ニャに者ニャ!)」
 「ニャ!(虎! デ、デカいニャ!)」
 「ニャアアア(俺はこの家のトラ猫、一平たんニャ。ここでは俺様が法律ニャ。わかったか捨てニャ子)」
 「ニャ?(そんなにデカくて本当に猫ニャのか?)」
 「ニャア(ちニャミに体重は7キロあるニャ。パンダだって草食ニャがネコ目クマ科ニャ)」
 「ニャア?(だから大熊猫言うんかニャ?)」
 「ニャ?(お前、ニャ前は?)」
 「ニャアニャ(銀次郎、とどろき銀次郎ニャ)」
 「ニャアア?(チビのくせにニャまいきなニャ前やな?)」
 「ニャア?(お前が一平ニャのか?)」
 「ニャー(そうニャ、ご主人ちゃまの純連すみれニャンが付けてくれた名前ニャ。
 純連ニャンは『明星焼きそば 一平ちゃん』が大好きニャから俺を「一平」とニャ付けてくれたんニャ)」
 「ニャア?(あの娘、純連って言うのかニャ? なんだか札幌の味噌ラーメンみたいなニャ前ニャな? 他にあの娘の好物は何ニャ?)」
 「ニャアニャ(おでんのチクワブにゃ)」
 「ニャア(すると俺は「チクワブ」と呼ばれるのかニャ? いやニャな)」
 「ニャオン(それはないニャ。お前は他の飼主にもらわれて行くニャから名前は付けてはもらわれへんニャ)」
 「ニャア(そうだったニャ。でもそれはそれで寂しいもんニャな?)」
 「ニャア(それが俺たち捨て猫の宿命ニャ)」
 「ニャ?(一平も捨てられていたのかニャ?)」
 「ニャア(俺は産まれてすぐに捨てられたニャ。道路を歩いているところを純連ニャンに拾ってもらったわけニャ)」
 「ニャアア?(お前も苦労したんニャな?)」
 「ニャオン?(銀、いい飼主が見つかるといいニャ?)」
 「ニャオン(そうだニャ)」

 俺には好きな女がいた。ナンバーワン・キャバ嬢のジュリアだ。本名は神崎かんざき直美。
 俺は直美に恋をした。
 直美は猫が大好で、彼女のマンションにはピューマみたいな黒猫、ブラッキーがいた。
 俺は極度の猫アレルギーだったから、直美のマンションには1時間しか滞在することが出来ない。呼吸困難になって死にそうになるからだ。


 「はあはあ それじゃそろそろ帰るよ。はあはあ」
 「大丈夫? エッチもしていないのにそんなに「はあはあ」言っちゃって? うふっ、銀ちゃんってかわいい」
 「大丈夫だ。はあはあ」
 「銀ちゃん猫アレだもんね? 私たち一生エッチ出来ないね? あはははは」
 
 俺は自分が猫アレルギーであることを呪った。
 猫アレでなければ今頃直美とズッコンバッコン出来るのに。くっそー!
 どうして直美は犬ではなく、猫が好きなのかと俺はブラッキーを憎んだ。
 そんなブラッキーは俺が猫アレなのを知っていて、わざと俺に近づいて来る。

 「ニャア?(お前? 猫アレルギーなんやてな? ホレホレ、もっと猫毛をつけてやるさかいな? イヒヒヒヒ)」

 俺は思った。
 
 (猫になればいつもこのブラッキーのように直美に可愛がってもらえる。俺も猫になりたい)

 俺はそう神様に祈った。

 「神様、私をネコにして下さい」

 そしてその願いが通じて俺は猫になったというわけなのだろうか?

 (直美に会いたい)

 俺はすっかり猫になっていた。

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