★【完結】メタルシティ(作品230619)

菊池昭仁

文字の大きさ
3 / 15

第3話 総理の決断

しおりを挟む
 東京に向かう新幹線の中で小山田は考えていた。

 (内閣総理大臣は政治家の憧れ、夢だ。俺は絶対に辞めんぞ! 絶対に!)


 カネは使い放題、人からは総理、総理と崇めたてまつられ、自分の思うがままに人が、組織が動く。
 政治家は乞食と同じだ。三日やったら辞められない「商売」なのだ。
 そしてその頂点に君臨するのが内閣総理大臣の俺だ。
 一族郎党には歴史的名誉が刻まれる。そうでなければ自分の子供や孫にまで、自分の跡を継がせようとはしない。
 それだけ政治には甘い蜜が溢れているのだ。
 明治維新は自由の開放などではない。薩摩や長州の冷や飯を食わされていたチンピラ、ヤンキーが列強の支援を得てその権力をゆるぎないものにして来たに過ぎない。そしてそれは今も続いている。
 大手企業も例外ではない。トップ同士は子孫の政略結婚を繰り返し、裏では強い絆で結ばれている。
 盤石ばんじゃくの上流階級が形成されているのだ。
 ベンチャーなどこの国では育ちはしない。仮に金儲けに成功したとしても決して自分たちの仲間には入れようとはせず、その利益だけを巧妙に自分たちへと還流させているのだ。

 有力な政治家たちは他国からカネで買収され、非常に良く飼い慣らされた犬たちだ。
 郵政民営化のカネはどこへ消えた? 誰が得をした?
 売国奴だらけの国会議員たち。

 尖閣も竹島も拉致問題も、北方領土も進展するわけがない。
 マスコミや政府の要人はアメリカのCIAの手先どもだ。
 ウォルト・ディズニーがラングレー(CIA)の諜報員だったという話は周知の事実である。
 日本人はアメリカのプロパガンダにより、自覚がないまま洗脳されてしまっているのだ。
 
 「あの戦争は日本の軍部による暴挙で、ヒロシマ、ナガサキに原爆が投下されたお陰で終戦を迎え、日本は平和になった」と信じ込まされている。
 それが証拠に日本人は「敗戦」と言わず「終戦」と呼ぶではないか?
 無能な政治評論家たちも「あの間違った戦争は日本の軍部が無謀な侵略戦争を起こしたからだ」というが、あのまま黙って白人の言いなりになっていれば、日本はアジアやアフリカのように欧米の植民地にされていたはずだ。
 あの戦争は「必然」であり、アメリカに仕組まれた罠だったのだ。
 借金だらけの破綻寸前の日本。いざとなれば国民の預貯金を凍結させてしまえばそれで済むことだが、今回の元老院の判断はそれを遥かに超えた国民の命そのものを管理しろというものだ。
 ロクに仕事もせず、文句や批評ばかりを繰り返す老人たち。小金があるから好き放題に振舞っている。
 アンチエイジングにも余念がない。

 「私、何歳だと思う?」

 確かに外見は若いし日本の高度医療に支えられて寿命は飛躍的に延びた。だがそれに脳が追いついていかない。
 そんなボケ老人たちは多くの人間に迷惑をかけ、それに感謝することもない。
 彼らはお荷物国民でしかないのも事実だ。
 年金や医療福祉など、カネがいくらあっても足らん。
 そして同時に出生管理もしろという。親としてあるまじき男女が、犬猫のように子供を作り、産みっ放し。育児放棄や虐待をしている現実がある。
 またもう一方では子供にしっかりとした心の教育もせず、エリート気取りの心無い親たちは子供をまるでペットやアクセサリーのように扱い、自分の果たせなかった夢を自分の代わりに子供で成し遂げさせようとしている。
 そんな子供たちは親を忠実に見習い、自分よりも弱い者を自分のストレス解消の標的として虐めて楽しんでいる。
 子供を持つ資格のない親が多すぎるのだ。
 国際結婚は認めず、混血をする場合は日本国籍を剥奪し、国外追放にする。
 大和民族が優れたDNAを受け継ぐため。これこそかつてのナチス・ドイツのヒトラーと同じではないか?
 授乳を終えたばかりの子供を親から引き離し、有能な人間に国家がその子供たちを育て教育する。
 それをAIに判定させ、就くべき仕事に合わせて教育訓練をしてゆく。これは神の領域を超えた我々人間が行うべき所業ではない。

 だが、どこかで何かをしなければいずれ日本は貧しい後進国へと成り下がり、隣国の餌食になってしまう。
 パソコンの機能は脳に埋め込まれ、文字も言葉もすべて二進法に変換され、人はテレパシーで意志の伝達をすることになるだろう。文字や言語、そして肉体は退化し、仮想現実の中で永遠の命を手にするのだ。

 日本は世界に類をみない神の国だ。消去法で考えても元老院の決断は正当なものであると言えるかも知れない。
 すべてはアメリカとの戦争に敗れた日本人がアメリカの都合のよい人間として洗脳され、支配されて来た結果なのだ。

 自由の国、アメリカ? ふざけた話だ。白人は奴隷として連れて来た黒人に本当の自由など永遠に与えはしない。
 アメリカは白人至上主義の国だということを日本人の殆どは知らない。
 そして有色人種である日本人もまた未だ奴らの奴隷のままだ。
 


 新幹線はすでに名古屋を通り過ぎていた。

 「官房長官を官邸に呼んでおいてくれ」
 「かしこまりました」

 総理は秘書の杉本にそれを命じ、静かに目を閉じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

★【完結】アネモネ(作品230605)

菊池昭仁
現代文学
ある裁判官の苦悩とその家族の生き様に迫る。同じ人間が同じ人間を裁く矛盾。 人は神ではない。人を裁けるのは神だけだ。 人間の本当のしあわせとは? 罪とは? 贖罪とは?

★【完結】黄昏村に春は来ない(作品230423)

菊池昭仁
現代文学
限界集落に集まる世捨て人たちのそれぞれの人生模様。 彼らは何を捨て、何を守ろうとしたのか。本当の幸福とは?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

★【完結】Silver Rain(作品230608)

菊池昭仁
現代文学
パリで暮らす初老の作家と両親を亡くした若い女。二人は本当の親子のようにお互いを労って生きた。 プラトニックな人間愛。

【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

★【完結】ダブルファミリー(作品230717)

菊池昭仁
現代文学
結婚とは生涯1人の女を愛し、ひとつの家族を大切にすることが人としてのあるべき姿なのだろうか? 手を差し伸べてはいけないのか? 好きになっては、愛してはいけないのか? 結婚と恋愛。恋愛と形骸化した結婚生活。 結婚している者が配偶者以外の人間を愛することを倫理に非ず、不倫という。 男女の恋愛の意義、本質に迫る。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...