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第14話 託された漢
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小山田の傀儡政権により、日本は急激に地獄へと変わって行った。
マイナンバーカードはマイクロチップになり、左手の親指と人差し指の間に埋め込まれ、国内には監視カメラが網の目のように張り巡らされ、国民の行動はすべて内務省に掌握されていた。
芸人がただ喚いているだけの下劣なお笑い番組やグルメ番組、報道バラエティ番組による、殺したの殺されたの、誰が結婚し、離婚したかなどを垂れ流していたテレビ局は解体され、国営放送も幹部社員は一掃された。
マスコミはすべて国家の管理下に置かれ、厳格な言論統制がなされていた。
外国人は国外退去となり、形骸化した各国の大使館や領事館は日本から追放された。
日本に再占領された北朝鮮は韓国と併合され、誘拐されていた約1,000人にも及ぶ日本人たちもようやく解放された。
中国、ロシアの多民族国家は既に崩壊寸前だった。
小山田総理が元老院に呼ばれた。
元老院の大老、平玄盛は静かに言った。
「お前の役目はもう終わった」
「まだ終わってはおりません! 日本を世界一の強国にするまでは!」
「我々は国家のために尽くせとは言ったが、自分の私利私欲のためにお前を総理にした訳ではない」
小山田総理の体が宙に浮いた。
「俺をどうするつもりだ!」
その瞬間、小山田の姿が消えた。
「次の総理は陸軍参謀の中洲川にする」
「大本営、作戦陸軍参謀というより、日本解放戦線のリーダーですな?」
「彼も驚くことじゃろうて。自分たちの理想社会が実現出来るのじゃからな?」
玄盛は命じた。
「すぐに中洲川をここへ連れて参れ」
「かしこまりました」
上野の日本解放戦線のアジトでは、小山田総理たちの暗殺計画の綿密なシュミレーションが行われていた。
「以上が小山田総理暗殺のシナリオである」
「参謀、では次回の集会はいつになりますか?」
「土曜日の20時に集合されたし」
「了解しました」
「これにて散会」
中洲川がJR上野駅に向かって歩いていると、メンバーの佐藤に呼び止められた。
「中洲川さん、立ち食い蕎麦でも食べて帰りませんか?」
「ああ佐藤君か? 今日はクルマではないのかね?」
「はい、今日は歩いて来ました」
するとそこへ黒いワゴン車が停車し、中洲川は佐藤にスタンガンで気絶させられそのまま拉致された。
御庭番は佐藤だったのである。
もちろん佐藤という人物は存在しない。
中洲川が目を覚ました。
頭から黒い頭巾が被せられ、手足を結束バンドで縛られていた。
「参謀、手荒な真似をしてすみません。これから中洲川さんに会っていただく方たちがお待ちになっております」
「生かされているということは政府の人間ではないと言うことだな?」
「ご安心下さい、悪い話ではありません。では長旅になりますので少しお休み下さい」
中洲川はクロロフォルムを嗅がされ、眠らされた。
平安神宮の地下シェルターにある元老院。
「君が中洲川君かね?」
「目隠しと拘束を解いてあげよう」
すると中洲川の頭巾と結束バンドが自然と外れた。
「ここは元老院だ。君を拷問したり殺害する気はないので安心したまえ」
中洲川は言った。
「元老院は本当に存在していたのですね? 戦後、GHQによって解体されたと聞きましたが?」
「左様。そして今回の日本革命を実行したのも我々である」
「それで私に何をせよとおっしゃるのですか?」
玄盛は言った。
「君に総理になってもらいたい」
「小山田はどうなるのですか?」
「小山田は今頃、富士の樹海を彷徨っている頃じゃ。
我々は日本の復活をあやつに命じたが、何を勘違いしたのか権力欲に執着してしまったのじゃよ。
そこで高潔な思想を持った君に日本の未来を託したい」
「私はその日本を転覆しようとしている首謀者ですよ」
「目的は我々の理想とする日本と同じじゃ」
「中洲川、お前の理想は何だ?」
「自由で平和で平等な社会の実現です」
「我々も同じだよ」
「老人の安楽死、徴兵と優生保護がですか?」
「かつての日本は酷かった。アメリカの資本主義に毒され、人は感謝することを忘れ、すべてが当たり前であり、カネがすべての価値基準になってしまった。
その結果どうだ? 傍若無人な老人たちの我儘な言動や行動、国防意識の低下、そして簡単に子供を作り別れてしまう夫婦。
子供を虐待する親はかつて自分もそういった境遇の中で育てられていた。
暴力は遺伝するのだよ」
「それだけではない。自分たちだけが有能だと思っている愚かな家族もいる」
「そういう国民は貧しい教育のない人間、障がいのある人間を馬鹿にする。
それは正しいことかね?」
中洲川は言った。
「そのための救済が「国家管理保護法」だったのですね?」
「それが道徳社会、理想国家の実現なのじゃ」
「君たちと同じじゃよ。老人に生きる価値はあると思うかね? 親の資格がない人間に子育てを任せていいと思うかね?」
「お言葉ですが色んな人間がいてこその社会ではないのでしょうか?
人間とは未完成の未熟な出来損ないであり、それが社会の中で生活することで進化、成長して行く。
そして命の継承がされて行くのではありませんか?」
「では君はどうしようと思うのかね?」
「思い遣りのある社会の実現です」
「具体的にどういうことかね?」
「孔子の唱えた忠恕の精神です
「そんな死語があったのう」
「自分がしてあげたいことを人にしてあげ、自分がされたくないことは人にしないということです」
「確かに理想ではあるが他国からの侵略にはどう対処するつもりかね?」
「核武装は必要です。そしてアメリカとの決別も」
「それは大本営陸軍参謀としての見解かね?」
「そうであります」
「だがそれだけでは国は治められんぞ」
「まず正しい人間教育を行います。子供から大人まで。何度も何度も体に染み付くまで」
「なるほど。教育こそが重要だと?」
「我思う、故に我ありじゃな?」
玄盛は言った。
「ではこれからの4年間。お前の理想とする日本を創造してみるがいい。
お前のいう「自由で平和で平等な日本」とやらをな?」
「わかりました。私の命に換えましても必ず成し遂げます」
元老院の13名の使徒から溜息が漏れた。
「ついに出て来おったか? 命もいらんという漢が」
それから中洲川の日本再生プランが開始された。
マイナンバーカードはマイクロチップになり、左手の親指と人差し指の間に埋め込まれ、国内には監視カメラが網の目のように張り巡らされ、国民の行動はすべて内務省に掌握されていた。
芸人がただ喚いているだけの下劣なお笑い番組やグルメ番組、報道バラエティ番組による、殺したの殺されたの、誰が結婚し、離婚したかなどを垂れ流していたテレビ局は解体され、国営放送も幹部社員は一掃された。
マスコミはすべて国家の管理下に置かれ、厳格な言論統制がなされていた。
外国人は国外退去となり、形骸化した各国の大使館や領事館は日本から追放された。
日本に再占領された北朝鮮は韓国と併合され、誘拐されていた約1,000人にも及ぶ日本人たちもようやく解放された。
中国、ロシアの多民族国家は既に崩壊寸前だった。
小山田総理が元老院に呼ばれた。
元老院の大老、平玄盛は静かに言った。
「お前の役目はもう終わった」
「まだ終わってはおりません! 日本を世界一の強国にするまでは!」
「我々は国家のために尽くせとは言ったが、自分の私利私欲のためにお前を総理にした訳ではない」
小山田総理の体が宙に浮いた。
「俺をどうするつもりだ!」
その瞬間、小山田の姿が消えた。
「次の総理は陸軍参謀の中洲川にする」
「大本営、作戦陸軍参謀というより、日本解放戦線のリーダーですな?」
「彼も驚くことじゃろうて。自分たちの理想社会が実現出来るのじゃからな?」
玄盛は命じた。
「すぐに中洲川をここへ連れて参れ」
「かしこまりました」
上野の日本解放戦線のアジトでは、小山田総理たちの暗殺計画の綿密なシュミレーションが行われていた。
「以上が小山田総理暗殺のシナリオである」
「参謀、では次回の集会はいつになりますか?」
「土曜日の20時に集合されたし」
「了解しました」
「これにて散会」
中洲川がJR上野駅に向かって歩いていると、メンバーの佐藤に呼び止められた。
「中洲川さん、立ち食い蕎麦でも食べて帰りませんか?」
「ああ佐藤君か? 今日はクルマではないのかね?」
「はい、今日は歩いて来ました」
するとそこへ黒いワゴン車が停車し、中洲川は佐藤にスタンガンで気絶させられそのまま拉致された。
御庭番は佐藤だったのである。
もちろん佐藤という人物は存在しない。
中洲川が目を覚ました。
頭から黒い頭巾が被せられ、手足を結束バンドで縛られていた。
「参謀、手荒な真似をしてすみません。これから中洲川さんに会っていただく方たちがお待ちになっております」
「生かされているということは政府の人間ではないと言うことだな?」
「ご安心下さい、悪い話ではありません。では長旅になりますので少しお休み下さい」
中洲川はクロロフォルムを嗅がされ、眠らされた。
平安神宮の地下シェルターにある元老院。
「君が中洲川君かね?」
「目隠しと拘束を解いてあげよう」
すると中洲川の頭巾と結束バンドが自然と外れた。
「ここは元老院だ。君を拷問したり殺害する気はないので安心したまえ」
中洲川は言った。
「元老院は本当に存在していたのですね? 戦後、GHQによって解体されたと聞きましたが?」
「左様。そして今回の日本革命を実行したのも我々である」
「それで私に何をせよとおっしゃるのですか?」
玄盛は言った。
「君に総理になってもらいたい」
「小山田はどうなるのですか?」
「小山田は今頃、富士の樹海を彷徨っている頃じゃ。
我々は日本の復活をあやつに命じたが、何を勘違いしたのか権力欲に執着してしまったのじゃよ。
そこで高潔な思想を持った君に日本の未来を託したい」
「私はその日本を転覆しようとしている首謀者ですよ」
「目的は我々の理想とする日本と同じじゃ」
「中洲川、お前の理想は何だ?」
「自由で平和で平等な社会の実現です」
「我々も同じだよ」
「老人の安楽死、徴兵と優生保護がですか?」
「かつての日本は酷かった。アメリカの資本主義に毒され、人は感謝することを忘れ、すべてが当たり前であり、カネがすべての価値基準になってしまった。
その結果どうだ? 傍若無人な老人たちの我儘な言動や行動、国防意識の低下、そして簡単に子供を作り別れてしまう夫婦。
子供を虐待する親はかつて自分もそういった境遇の中で育てられていた。
暴力は遺伝するのだよ」
「それだけではない。自分たちだけが有能だと思っている愚かな家族もいる」
「そういう国民は貧しい教育のない人間、障がいのある人間を馬鹿にする。
それは正しいことかね?」
中洲川は言った。
「そのための救済が「国家管理保護法」だったのですね?」
「それが道徳社会、理想国家の実現なのじゃ」
「君たちと同じじゃよ。老人に生きる価値はあると思うかね? 親の資格がない人間に子育てを任せていいと思うかね?」
「お言葉ですが色んな人間がいてこその社会ではないのでしょうか?
人間とは未完成の未熟な出来損ないであり、それが社会の中で生活することで進化、成長して行く。
そして命の継承がされて行くのではありませんか?」
「では君はどうしようと思うのかね?」
「思い遣りのある社会の実現です」
「具体的にどういうことかね?」
「孔子の唱えた忠恕の精神です
「そんな死語があったのう」
「自分がしてあげたいことを人にしてあげ、自分がされたくないことは人にしないということです」
「確かに理想ではあるが他国からの侵略にはどう対処するつもりかね?」
「核武装は必要です。そしてアメリカとの決別も」
「それは大本営陸軍参謀としての見解かね?」
「そうであります」
「だがそれだけでは国は治められんぞ」
「まず正しい人間教育を行います。子供から大人まで。何度も何度も体に染み付くまで」
「なるほど。教育こそが重要だと?」
「我思う、故に我ありじゃな?」
玄盛は言った。
「ではこれからの4年間。お前の理想とする日本を創造してみるがいい。
お前のいう「自由で平和で平等な日本」とやらをな?」
「わかりました。私の命に換えましても必ず成し遂げます」
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