1 / 10
第1話
しおりを挟む
E.T, extra terrestrial. 安達アダムは時空を越えて宇宙からやって来た地球外生物、エイリアンであった。
それは土砂降りの雨の日のことだった。
グウァン グウァン グウァン グウァン
突然練馬の上空に巨大なアダムスキー型UFOが現れ、大きなダンボール箱がゆっくりと降ろされた。
その段ボールにはトム・クルーズに似た、安達アダムが入っていた。
とても還暦過ぎには見えない爽やかさとツヤがあるトム、じゃなかったアダム。
さすがは時空を越えてやって来た、「死なない機械のカラダ」を持った、シュワちゃんのようなターミネーターであった。
彼は地球から何億光年も離れた、あんころ餅星雲にある『どら焼き星』からペコポン、地球にやって来た。
「ボク、どら太郎~」
と言ったかは定かではないが、とにかく凄いイケメンであった。
ジャパネット・タカタの豪華クルーズではない、あのトム・クルーズである。
その星は地球よりもはるかに優れた文明を持ち、ガミラスでもイスカンダルでもなく、ましてやゆうこりんの『こりん星』でもない楽園であった。
「すみませ~ん、ちょっとすみませ~ん。私はかわいそうな「捨てエイリアン」で~す。誰かボクを拾ってくれませんかあ~」
と、あのB級グルメ番組、『パパイヤ・マンのせっかくぐるめ』の日村ロボのようにアダムは叫んでいた。
傘もなく、雨合羽もなく、アダムはずぶ濡れであった。
段ボールには黒のマジックで、
かわいがってあげてください
と、ミミズが腸捻転を起こしたような殴り書きがされていた。
「おい明美、ヘンな金髪外人が捨てられてるぜ」
「ウケるんですけど~。でもどっきりじゃないの? 『瓜買ってもいいですか?』とかの?」
テレビカメラがないかと周囲を見渡す明美。
「バカだな明美は~。それを言うなら『突然ですが、デタラメだけど占ってもいいですか?』だろ?
とにかくネットで拡散させようぜ。「チャンネル登録お願いしま~す」っと」
「それ、いいかも」
道行く人たちは面白半分にスマホでアダムを撮影したが、彼を助ける者は誰もいなかった。
現代の日本人は薄情である。
「かわいそうに・・・、あなた、捨て宇宙人なの?」
「はい、どら焼き星から来ました。凄くさ、寒いです、た、助けて下さい」
「ママ、この宇宙人さん、お家で飼ってあげようよ」
「ダメよ、ウチは貧乏な母子家庭で備蓄米の『進次郎』も買えないのに、どうしてこんな汚い宇宙人が飼えるのよ? さあ行くわよ麻莉亜」
「でもかわいそうだよママ、このままだと死んじゃうよお」
「大丈夫よ、もうすぐマザー・テレサが通るでしょうから」
「マザー・テレサはもう死んじゃったよ? お願いママ、この「捨て人」をこの練馬ナンバーの火のクルマ、オッサン「イクラ」で連れて帰ろうよ」
「ダメだって言ってるでしょ。こんな電動バイブ、じゃなかった電気軽自動車ではムリよ。パワーがないし、電気が足りないからエアコンもオプションなのよ、熱中症で死んだらどうすんのよ。
三人は乗せられないわ」
すると麻莉亜はその段ボールの中にアダムと一緒に入り、そこから出ようとはしない。
「もういい! ママの淫乱、元ヤンの黒ギャルの男狂い! だったら私も捨て地球人になる! そしてこの捨てエイリアンと一緒に風俗で働くからいい!」
「しょうがない娘ねえ? それじゃあ一日だけよ」
「ありがとうママ! ママ大好き!」
こうして宇宙人アダムはかき氷に染み込む苺シロップのように、いつの間にか立花家の居候となったのである。
麻莉亜とアダムはまるで本当の親子のようであった。
それは土砂降りの雨の日のことだった。
グウァン グウァン グウァン グウァン
突然練馬の上空に巨大なアダムスキー型UFOが現れ、大きなダンボール箱がゆっくりと降ろされた。
その段ボールにはトム・クルーズに似た、安達アダムが入っていた。
とても還暦過ぎには見えない爽やかさとツヤがあるトム、じゃなかったアダム。
さすがは時空を越えてやって来た、「死なない機械のカラダ」を持った、シュワちゃんのようなターミネーターであった。
彼は地球から何億光年も離れた、あんころ餅星雲にある『どら焼き星』からペコポン、地球にやって来た。
「ボク、どら太郎~」
と言ったかは定かではないが、とにかく凄いイケメンであった。
ジャパネット・タカタの豪華クルーズではない、あのトム・クルーズである。
その星は地球よりもはるかに優れた文明を持ち、ガミラスでもイスカンダルでもなく、ましてやゆうこりんの『こりん星』でもない楽園であった。
「すみませ~ん、ちょっとすみませ~ん。私はかわいそうな「捨てエイリアン」で~す。誰かボクを拾ってくれませんかあ~」
と、あのB級グルメ番組、『パパイヤ・マンのせっかくぐるめ』の日村ロボのようにアダムは叫んでいた。
傘もなく、雨合羽もなく、アダムはずぶ濡れであった。
段ボールには黒のマジックで、
かわいがってあげてください
と、ミミズが腸捻転を起こしたような殴り書きがされていた。
「おい明美、ヘンな金髪外人が捨てられてるぜ」
「ウケるんですけど~。でもどっきりじゃないの? 『瓜買ってもいいですか?』とかの?」
テレビカメラがないかと周囲を見渡す明美。
「バカだな明美は~。それを言うなら『突然ですが、デタラメだけど占ってもいいですか?』だろ?
とにかくネットで拡散させようぜ。「チャンネル登録お願いしま~す」っと」
「それ、いいかも」
道行く人たちは面白半分にスマホでアダムを撮影したが、彼を助ける者は誰もいなかった。
現代の日本人は薄情である。
「かわいそうに・・・、あなた、捨て宇宙人なの?」
「はい、どら焼き星から来ました。凄くさ、寒いです、た、助けて下さい」
「ママ、この宇宙人さん、お家で飼ってあげようよ」
「ダメよ、ウチは貧乏な母子家庭で備蓄米の『進次郎』も買えないのに、どうしてこんな汚い宇宙人が飼えるのよ? さあ行くわよ麻莉亜」
「でもかわいそうだよママ、このままだと死んじゃうよお」
「大丈夫よ、もうすぐマザー・テレサが通るでしょうから」
「マザー・テレサはもう死んじゃったよ? お願いママ、この「捨て人」をこの練馬ナンバーの火のクルマ、オッサン「イクラ」で連れて帰ろうよ」
「ダメだって言ってるでしょ。こんな電動バイブ、じゃなかった電気軽自動車ではムリよ。パワーがないし、電気が足りないからエアコンもオプションなのよ、熱中症で死んだらどうすんのよ。
三人は乗せられないわ」
すると麻莉亜はその段ボールの中にアダムと一緒に入り、そこから出ようとはしない。
「もういい! ママの淫乱、元ヤンの黒ギャルの男狂い! だったら私も捨て地球人になる! そしてこの捨てエイリアンと一緒に風俗で働くからいい!」
「しょうがない娘ねえ? それじゃあ一日だけよ」
「ありがとうママ! ママ大好き!」
こうして宇宙人アダムはかき氷に染み込む苺シロップのように、いつの間にか立花家の居候となったのである。
麻莉亜とアダムはまるで本当の親子のようであった。
12
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡
弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。
保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。
「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる