【完結】パパはエイリアン(作品250621)

菊池昭仁

文字の大きさ
2 / 10

第2話

しおりを挟む
 アダムは実によく働くエイリアンであった。
 掃除に洗濯、アイロン掛けにお買物。特に絵葉の派手なTバックをクンクン匂いを嗅ぎながらの洗濯は大好きであった。
 エイリアンだがアダムも男、男はみんな変態である。

 お料理は道場六三郎やジュエル・ロブションをしのぎ、陳建一の作る、秘伝のマーボー豆腐よりも美味かった。
 だがそんなアダムの得意料理はマグロの漬け丼にナポリタン、オムライス、阿部ヒロトのやっている食品会社、「味な物」で販売している『Cook どう?』の青椒肉絲ちんじゃおろーすのローテーションであった。
 そんなアダムだが、彼はいくらでもお金が引き出せる、限度額なしのキャッシュ・ディスペンサー、ATMが内蔵されたアンドロイドでもあった。
 絵葉と麻莉亜はたちまち日本昔話のように裕福な大金持ちになったのである。

    ぼうや~♪ いい子だカネ出しな~♪

 めでたしめでたしである。
 
 おっと終わってどうする? 始まったばかりなのに。
 これからですぜ、スケベな旦那、面白くなって行くのは。


 「アダム、いつもお金をありがとう。ママ、これでもう夜、練馬大根を畑から盗まなくても済むね?」
 「そうね? こども食堂にも行かなくて済むし、アダムがウチに来てくれたお陰で本当に良かったわ。
 クルマもオッサンの、「おいイクラ~、お姉ちゃんはなあ~」の『女もけっこうつらいのよ』のフーテンの明美さんこと、クルマ寅次郎のお姉さんがコマーシャルをしている電気自動車から、ランボルギーニのガヤルドに買い替えて、住まいもあの隣りの兄ちゃんがアダルトビデオを見てオナニーをしてティッシュボックスからティッシュを引き抜く音が聞こえるくらいに壁の薄い、プレハブみたいなレオパレードの安アパートから、こんな素敵な港区のタワマンのペントハウスに引っ越せたしね?」
 
 だが所詮は練馬生れの練馬育ち、クルマも練馬ナンバーで過ごして来た絵葉と麻莉亜は貧乏が染み付いており、他にあまり贅沢はしなかった。
 アダムは料理上手であり、外食は月に1回だけ。
 『すき家』で牛丼の並盛、値上げしないで頑張っている会津魂の会社、『幸楽苑』では税込490円の味噌ラーメン。『かつや』では100円クーポンを使ってのカツ丼の梅しか食べなかった。
 もしも万が一、『すしざんまい』のちゃんと銀杏ぎんなんの入った茶碗蒸しと「あおさの味噌汁」まで付いた
ランチセットのタダみたいな握り、『蕾』ではなく、カウンターなんかでお好みで寿司を食べながらキンキンに冷えた生ビールを飲んで「ぷはー」なんて溜息を吐いたら最後、目が見えなくなると信じていた。
 ブラもパンティも、ピーチジョンやトリンプ、ワコールなんてとんでもない、『かわむら』で売っているワゴンに山盛りの三枚で税別980円の綿のパンティを、ボロボロになるまで三年間も履き続けていた。
 まあそれはそれで男はそそるものでもあるが。
 お買い物は女性の楽しみである。だがそんな母子はお金がいくらでもあるにもかかわらず、銀座和光や三越で買物をするでもなく、三越のデパ地下で定価2,000円もする高級海苔弁を買うこともせず、せいぜい980円のアンデスメロンを半分にして、スプーンで掬って食べるだけが最高の贅沢であり、将来のためだとアメリカの外圧に忖度した政府に踊らせられ、訳のわからんNISAをする絵葉であった。
 株などすぐに大暴落することも知らずにである。情けない。
 お金は汗水垂らして稼ぐものであり、電話で「あっ、アレアレだけど」のアレアレ詐欺で人の善いお婆ちゃんから巻き上げるものではないし、ましてやネット広告で「私はこれで大儲けしています! みなさんも是非やってみて下さい。詳しくはこちらへどうぞ」とかで稼ぐものではないのだ。
 第一、そんなに儲かっているなら他人に教えるわけがない。

 だが、アダムがペコポン、地球にやって来たのには重要な任務があった。
 それは、
 
      地球征服

 である。
 アダムはどら焼き星の大王、つぶ餡どら焼き大王から命じられて転職サイト、インチキードから練馬に派遣されて来たエイリアンであったのである。

 「良いかアダムよ。地球はもう終わりじゃ。このままでは必ず滅びる、滅亡じゃ。
 子熊のプーチョンに独裁国家、テポドンのジョン君、「発狂一路」政策を掲げ、世界征服をたくらむ習陳平、そしてタカリ国、ウリクレーナの指導者、ゼニクレスキーに余剰米の国、米国第一の関税大好きな花札大統領など、もう救いようがない状態じゃ。
 特に日本は酷い。緑のタヌキ都知事はカイロ大学卒だと嘘を吐き、公職選挙法違反なのにしれっと若作りに余念がない。あの兵庫県痴事の斎藤元彦はまるで感情のない蝋人形のようじゃ。

 「お前も蝋人形にしてやろうかあ!」

 と罪の意識の欠片もない屑野郎だ。
 もはやお笑い芸人のようなポンコツ世襲レジ袋家畜米担当大臣の珍次郎(長いので以後、ポンコツ大臣と呼ぶようにします)。そして総理でいたいだけの慇懃無頼な答弁を繰り返す石破茂内閣総理大臣。
 あの安倍晋三ですら「アイツだけは総理にしてはならん」と言ったとか言わないとか。

 アメリカ・ファーストに都民ワースト。じゃなかった都民ファースト。安全第一に顧客第一。
 挙句の果ては社員第一。そんな会社はすぐに潰れてしまう。商社に美味しいところだけ持って行かれた中古自動車屋のようにじゃ。山一證券もそうじゃったな? 西武もダイエーもみんなそうじゃ。
 潰れろ潰れろ潰れてしまえ!
 第一と叫ぶ輩ほどそれを第一にはしていないものじゃ。
 「どうして大盛りを始めたんですか?」とインタビューされて、「お客さんに喜んでもらいたくて」と平気でウソを吐く、油べっちょり厨房の大衆食堂のオヤジ。
 本当は料理が不味くて客離れが止まらないから、起死回生の話題作りのために大盛りにしているだけなのに、またお客の方もそれを面白がってSNSに投稿するためだけにやって来ては大量に食事を残して帰ってゆく。
 もはや機能不全の国連が提唱する、わけのわからないSDGs、17項目の『持続可能な開発目標』のスローガンに完全に逆行しているではないか!
 ユダヤ人のガザでのホロコーストに苦しむパレスチナ人たち。それなのに日本には食べ物が溢れ、農家さんや漁師さんたちの苦労も知らずにやれアレが高いコレが安いだのと文句ばかりを言っている。
 宅配の時間指定配達もそうだ。自分で配達してみろこの野郎!
 そしてさらに大盛り店の店主は質問される。

 「大将、この大盛りの作り方を教えて下さい」

 と言うアホな取材に対してこう言うのだ、

 「それは企業秘密なので教えられねえなあ」

 企業? じいちゃんばあちゃんと元ヤンキーのリーゼントの息子がやっている小汚え油べっチョリの大衆食堂がだぞ!

 「この秘伝のタレは創業以来、ずっと継ぎ足しなんですよ。もしも闇バイトに襲われたり、火事や地震、台湾有事になってもこれだけは一番先に持って逃げますね?」

 ふざけんな! 継ぎ足しのタレって雑菌が繁殖してんじゃねえのか!
 すまん、つい興奮してしまって。
 ワシが焼鳥屋でバイトしていた時はタレ毎日は作らされたもんじゃ。
 とにかく日本の崩壊はもう既に始まっている。
 まず手始めに日本を征服して粒あんどら焼き工場をこのペコポンに作って世界を、銀河を平和統治をしようと考えたわけなのじゃ。どうじゃワシって凄いじゃろう? そして自民党を『かりん党』にするのだ。国民に甘い「かりん党」にな? 「あま~い!」
 今は「ハンバーグ!」だったかな? なんでじゃ? 『ハンバーガー!』ではいかんのか?
 アダムよ、お前はかつて旧約聖書に書かれた地球人の祖先、アダムとエヴァの末裔である。
 必ずやペコポンを征服して参れ。わかったな?」

 アダムはこうして日本に派遣された、特殊工作員であった。
 アダムは地球侵略のために、立花家に潜入したのであった。

 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡

弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。 保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。 「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...