【完結】パパはエイリアン(作品250621)

菊池昭仁

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第3話

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 一通りの家事を終えたアダムは散歩がてら、新橋にある古い喫茶店に入り、ペコポン征服計画を練ることにした。
 
 店の名前は『純喫茶 晴れのち晴れ』、店主はきくりん、バイトちゃんはショコタンであった。

 「お帰りなさいご主人さま~。だんだん梅雨ですもんね? もーいやんなっちゃう」
 「お帰りなさいご主人様ではなく、「いらっしゃいませ」じゃないんですか?」
 「それじゃあお帰り下さい、ごきげんよう」
 「チョイ待て、チョイ待てよキムタク、木村卓造です。
 ガソリン1リットルを下さい」
 「あはははは お客さん、よしもと新喜劇の人? それとも太田光の奥さんがやっるスベる芸人プロダクション『痛いたん』の芸人さん?
 まさかソニー・ミュージック・アーティスツじゃないわよね? SMA? あの売れない芸人たちの最後の墓場とか言われている?
 「ハイ~イ」とか「おげんきですか~」とかテンガロンハットを被ってビローンってズボンを肩まであげるだけの人とか? ただ怒っているだけの男芸者、コウメなんたらとかのあれですか?」
 「私は地球を侵略するためにやって来たエイリアン、侵略者です。
 Stingの『 Englishman in New York』の歌詞にある、

      I'm a Alien, I'm a legal Alien
                       I'm a Englishman in New York

 不法移民でなく、合法的な外国人ではなく、法律によって守られた、どら焼き星から来た宇宙人なのです」
 「なるほどねー、心療内科のクリニックならこのお店を出て次の信号を渡ればすぐだからね?
 可哀想に、でも大丈夫よ、私も時々うつになるから。アイスコーヒーがいいと思うわ。美味しいから」
 「ではアイスコーヒーを1リットル」
 「はいはい、アイスコーヒーを1リットルね? 少々お待ち下さい。
 マスター、アイスコーヒー、1ガロン(約3.79リットル)入りました!」
 「アイスコーヒー1ガロン、入ります」

 きくりんはノリのいいお爺さんマスターであった。

 ショコタンはお冷と灰皿、そしてピンサロで使うおしぼりと同じ、布製のおしぼりをテーブルに置いた。
 もしかするとピンサロで使用済みのおしぼりと一緒に洗濯をしてファブリーズした物かもしれなかったが、アダムはそのおしぼりで顔をゴシゴシと拭き、首筋、そして手を拭いた。
 アダムはアライグマのドンちゃんのようにキレイ好きであった。
 アダムは灰皿を見て愕然がくぜんとした。その白い、じゃなかった長方形の灰皿にはなんと!

    Adam & Eve

 と書かれていたからである。
 
 「なんだこれは! すでに私が絵葉と一緒に暮らしていることがペコポン人にバレているということなのか!
 これはあの憎っくき洋菓子系宇宙から、モンブラン星人が既にペコポンに入り込んでいるという証拠ではないのか!
 もしかするとこのマスターとウエイトレスもモンブラン星人なのかも!」

 アダムは時々回路がショートすることがある。カイロ大学卒だという嘘吐き緑のタヌキのように。

 アダムが恐る恐る店内を見渡すと、そこにはたしかに「和栗モンブラン始めました」と、「冷やし中華始めました」の隣りに毬栗いがくりのかわいいイラスト付きで書かれていた。

 「冷やし中華はタダの文字だけ。面倒くさかったのか、それともモンブランが大好きなのか?
 しかも今は梅雨。和栗の旬ではない。どこかの外国からの輸入物? 丹波ではなく?
 そもそもなぜ冷やし中華は夏なのだ? 冷麺は一年中あるというのに! これは差別だ! 麺種差別!
 国連の人権委員会に提訴しなければならん。
 でもダメか? 国連はもはやガザやウクライナに対しても何も出来ない名前だけの組織。
 日本語は実に便利である。国際連合とか平和の象徴のように言うが、英語ではUnited Nations、「国連軍」である。
 SDGsとか出来もしない理想ばかりを叫んで日本からカネをせびっている。
 これではウクライナのゼニクレスキーと同じじゃないか! くそユダヤ人の国、イスラエルめ!」

 マスターがセブンプレミアムの甘さ控えめ税抜1本108円のアイスコーヒーをたっぷり氷を入れたグラスにかさ増ししながらちょっとだけ珈琲を注いでいると、テレビでは何やらアニメをやっていた。


 「エヴァ初号機、発進!」

 アダムは急に立ち上がった。

 「エヴァ、初号機! 発射?・・・、射精? いや発進?」

 アイスコーヒーを運んで来たショコタンが言った。

 「お客さんもエヴァンゲリヲン推しなの? 私もマスターもエヴァが大好き。
 だから灰皿も「Adam &Eve」なのよ、素敵でしょ?」
 「エヴァンゲリヲン? 絵葉・・・」
 「レイちゃんもシンジ君もアスカもみんな大好き。
 葛城ミサトもしびれちゃう!
 マスターのきくりんは赤木リツコ博士がエロくて好きだって言ってますけどね?
 マスターはスケベだから。エヘッ ねえ、マスター?」
 「アダムゲリオンはいないのか?」
 「アダムゲリオン? アダムケロヨンならあるかもね? あはははは」

 アダムは地球征服計画のヒントを掴んだ気がした。
 
 「そうか! ティープインパクト、じゃなかったセカンドインパクトによって地球は滅び、東京第三都市が作られたんだった。
 そうか! テレビや映画を作ればいいんだ!
 それで人類を洗脳すればいい! 考える力と行動する力を民衆から奪い、この腐った日本を変えようともしないようにすればいいんだ! もうそうなってるけど!
 家畜米や乳首米、鬼畜米に備蓄米を自民党や進次郎の手柄にしてこのまま選挙に突入すればいいんだ!
 そうせ野田には指導力はないし、国民民主党の玉金はクソ野郎だからな?
 玉木は大法螺吹いて壁は壊せなかった。ただの税金泥棒の不倫野郎じゃねえか!」

 アダムは即断即決即実行のウルトラマンである。早速ダイソーで履歴書を買って記入し、チョモランマ・テレビに直接持参した。

 「性接待でもなんでもしますから是非入社させて下さい!」
 「よし採用! ただしスポンサーは夢グループさんしかいないからボランティアっていうことでもいい?」
 「お金はいりません、では今から働きます!」
 「今から?」
 「はい、そして手始めに松本人志と中居正広、それからメガネ豚の秋元康も積極的に起用します!」
 「秋元康には触れるな。もうしれっとテレビにもラジオにも出ているから。
 なにしろ芸能界のドンだからな?」
 「わかりました!」

 こうしてアダムのテレビ占領計画がスタートした。


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