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エピソード4

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 ルカーは3日間、一日も休まずに泳ぎ続けてくれた。

 「大丈夫か? 休まないで泳いで?」
 「大丈夫や、次郎はんは寝ててもええで」
 「ごめんねルカー、俺のために。重いだろ? 俺も泳ごうか?」
 「気にせんでええよ、半魚人のアンタよりワシの方が速いよってな?」

 
 
 しばらく行くと、陸の匂いがして来た。
 
 「land fall! 陸地が見えた!」
 「明日にはマラッカ海峡やな?」
 「ルカーは凄いな? 正確なジャイロコンパスを搭載しているみたいだ」
 「ワシらイルカは地球の磁気を感じることが出来るよってな? それに海のことは頭にちゃんと入っておるさかいな? イルカの脳みそは人間よりもシワが多いんやで」

 そんな話をしていると、小さな岩の上で竪琴を弾いて歌を歌っている、金髪の女がいた。
 ジャニス・イアンのように透明な歌声、ジェニファー・ロペスのようなプロポーション。
 俺は女とチョメチョメすることがしばらくなかったせいなのか、岩に打ち上げられたジュゴンか、マナティがブロンド美人に見えたんだろうと思った。

 「ねえルカー。あそこで歌を歌っているのはジュゴンかい?」
 「ジュゴンやのうて、人魚やで。めずらしいなあ、こんな沖に人魚やなんて」
 「人魚! 本当にいるんだね? 人魚なんて」
 「シーラカンスだっておるんやで? プロシオサウルスだっておる。ネス湖のネッシーは怪しいけどな?
 そやから人魚くらいおるがな」
 「そうかあ、あの海の魔女、セイレーンがこんなところに・・・」
 「セイレーンはエルベ川の魔女やろ? あの人魚はキャサリンや」
 「キャサリン? 綺麗な女、じゃなかった人魚だね?」 
 「でも気をつけや。キャサリンはあんな顔してドSやから」
 「ドS? 俺はドMだからちょうどいいかも」
 「だったらチョメチョメ、三丁目、四丁目して来たらええ」
 「そんなに簡単にチョメチョメさせてくれるの?」
 「それは次郎はん、アンタの腕次第やで。よう知らんけど」

 俺はキャサリンに一目惚れだった。
 
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