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エピソード10

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 浦島次郎は深海へと落ちて行った。
 深海は暗黒の世界である。半魚人は自分で光を出すことが出来ない。
 次郎はチョウチン・アンコウに道案内を頼むことにした。

 「チョウチン・アンコウさん、すみませんが道案内をお願い出来ないでしょうか?」
 「どちらまで?」

 チョウチン・アンコウは渋いバリトン・ボイスで行き先を尋ねた。

 「レインボー・パールのあるところまでお願いします」
 「レインボー・パールだと? それは止めておいた方が身のためだ。
 タコの化け物に食われてしまうぞ」
 「でもどうしてもレインボー・パールが必要なんです。
 人魚のみさおが掛かっているんです!」
 「操? あの「奥様クイーンズ」のアレか?」

      あなた~の~ため~に~♪
      守り~通した 女~の~~♪

 「そうです、女の一大事なんです! チョメチョメされちゃうんです!」
 「しょうがない、でも途中までだぞ」
 「ありがとうございます!」

 次郎はチョウチン・アンコウの協力に感謝した。


 深海の生物はみんな各々自分自身で光っていた。ポツリポツリとまるで田舎の歓楽街のようだった。
 ハダカイワシ、ヒカリキンメダイ、ホタルイカにリュウグウノツカイ。
 あれ? リュウグウノツカイは光らないよね? よう知らんけど。

 とにかく深海の生物は自ら光を出していた。
 
 (そうか! 暗いから自分で光るしかないんだ!
 つまり今の世界も暗いから、そのうち人類も光り出すかもしれないな?
 別にハゲチャビンじゃなくてもだ)

 次郎はそんなどうでもいいことを考えていた。


 チョウチン・アンコウが明かりを消した。

 「これから先は自分で行け。レインボー・パールはデイヴィ・ジョーンズという映画、『カリブ海の海賊たち』にも出演していた悪役だ。まともに闘っても勝てる相手ではない。
 そこでこれをお前にやろう」

 パッパラパッパッパーッ 

 「ボク、チョウチン・アンコウ左衛門~っつ、『ジャンボたこ焼き器』!」
 いいか? これを使ってアイツを倒せ。
 尚、この『ジャンボたこ焼き器』を使うには呪文を唱えなければならない。
 呪文の言葉はあの『シルバー・オクトパス』のお姉ちゃんが言う、「青のりと鰹節はおかけしてもよろしいですか? 美味しく召し上がれますように」だ。忘れるなよ」
 「わかりました」
 「メモしなくてもいいのか?」
 「メモしてもどうせ見えませんから」
 「携帯は水圧で壊れてしまったからなあ。
 まあとにかくがんばれ。じゃあな?」

 それだけ言うとチョウチン・アンコウは去って行った。 


 
 しばらく泳いでいると、深海だというのにあの愛と美と性、そして戦いを司る女神、アフロディーテがアソコを隠して立っていた、ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』に描かれた、あの大きな貝殻の上で何かが強烈に光っているのが見えた。

 「あの貝殻は! 確かに福島のラブホの貝殻ベッドと同じ貝殻だ! 間違いない!
 そうか! あそこで光っているのがレインボー・パールだな?」


 「なんて美しい真珠だ! 俺のチ◯コよりもデカいじゃないか!
 これではチ◯コに埋め込むことも出来ない! なんてデカい真珠なんだ!」

 次郎はレインボー・パールに近づき、それにそっと手を伸ばした瞬間、大きなタコの足? 手?が次郎の手と首に絡みついた。

 「くっ、苦しい!」
 「お前、何しておるんじゃ! お好み焼きは広島じゃけん! 焼きそばも入ってブチ旨いんじゃコラ!
 オタフクソース、なめてんのかコラッ!」
 
 デイヴィ・ジョーンズは出鱈目な広島弁でまくしたてた。
 (明石じゃねえのかよ?)

 (そうだ! このジャンボたこ焼き器で『シルバー・オクトパス』にしてやる!)

 次郎はすぐに呪文を唱えた。

 「鯛焼きクロワッサンはいかがですか! 美味しいですよ!」
 「お前、どこぞの精神病院から逃げて来たんか?」
 「おかしい! 呪文を間違えたか!
 呪文の言葉、なんだったっけ? えーと、えーと」
 「ゴチャゴチャとうるさい半魚人じゃ! 小田原名物の蒲鉾にしてやるけえのう!」
 
 絶体絶命! もうダメかと思ったその時、次郎の薄れゆく脳裏に『シルバー・オクトパス』のオッパイの大きなスタッフさんが思い浮かんだ。

 (青のりと鰹節はおかけしてもよろしいでしょうか?)

 「青のりと鰹節はおかけしてもよろしいでしょうか?」

 するとたこ焼き器にガスが点いた。

 ゴゴゴゴゴーッ

 (美味しく召し上がれますように)

 「美味しく召し上がれますように!」

 すると大ダコのデイヴィ・ジョーンズの足が、いや手?がジャンボたこ焼き器の油の中へと切り刻まれ、ネギや紅生姜、そしてたこ焼きの生地と一緒に焼かれて行った。

 「ウギャー!」

 デイヴィ・ジョーンズの足は、いや手?は無くなってしまった。

 (でも安心して下さい、タコだからまた生えてきますから。
 Don't worry, I'm wearing pants!)


 次郎はすぐにレインボー・パールとたこ焼きを沢山持ってキャサリンたちの元へと急いだ。

 せっかく魔法の真珠があるのだから、「どこかへ扉」でも出せばいいのに。
 次郎は少しおバカであった。

 
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