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第14話 妻の背中
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日を追うごとに、華絵の体力は坂道を下るようにゆっくりと落ちて行った。
「風呂、一緒に入ろうか? 背中、洗ってあげるよ」
「いいよ、子供じゃないんだから」
「それなら俺の背中を洗ってくれよ」
「しょうがないなあ。それじゃあサービスしてやるかな?
高いわよ、華絵ソープランドは」
私たちは笑った。
「華絵、入るぞー」
「いいよー」
骸骨のように痩せ細った華絵のカラダに、私は戸惑った。
それを察知したように華絵が言った。
「私のカラダ、骸骨みたいでしょ? 骨と皮だけになっちゃった」
「俺はスレンダーな華絵も好きだよ」
「これはスレンダーとは言わないよ・・・」
私はスポンジにボディソープを付け、話題を変えた。
「この前会津に行った時、水羊羹を買って来るのを忘れたな? あれ、好きだったんだけどなあ」
「私も帰って来てから気付いた。会津若松の駅なら売ってることもあるんだけど、クルマだったからね? 今度、お母さんに送ってもらうよ」
「大変だからいいよ。美味しい水羊羹なら東京にいくらでもあるし。
ハナの体の調子がいい時に、一緒に買いに行こう」
「そうだね? 水まんじゅうも食べたいなー」
「でも、どちらもないかもしれないな? 今はまだ冬だから。
夏まで待つしかないね?」
「夏までは・・・、無理だよ」
私は華絵の背中を洗い始めた。
「ねえヒロ、外国の話をして」
「そうだなあ、華絵は何処の国に行ってみたい?」
「そうねえ、行くとすればヨーロッパかなー?」
「パリやロンドンもいいけど、アントワープは好きな街だったなあ。美しい中世の雰囲気が残る港町なんだ」
「ベルギーだよね? アントワープって?
『フランダースの犬』の舞台になった」
「現地の人間は知らなかったけどな?」
「へえー、そうなの?」
「ハナはチョコレートが好きだろう? おしゃれな小さいアーケードに、たくさんのチョコレートの店があって、チョコの甘い香りが色んな店から漂って来るんだよ。ハリーポッターの映画に出て来る、あの魔法の道具を売る商店街みたいな雰囲気で」
「いいなー、ヒロはベルギーワッフルも食べた?」
「見たような気もするけど、食べなかった」
「勿体ない」
「その代わり、酒はたくさん飲んだよ、ベルギービールとかね」
「ベルギーって名前が付いただけで美味しそうだもんね?
ベルギーチョコレートにベルギービール、それにベルギーワッフルも」
「神戸牛に長崎ちゃんぽん、横浜シュウマイとかもな?」
「あはは、そうだね? 『東京バナナ』とか」
「あはははは、それもあったよな?
ベルギーにはペケというジンがあって、それをひょうたんみたいな小さいショットグラスで飲むんだ」
「ベルギーはジン発祥の地なんでしょう? 前に本で読んだことがある」
「良く知ってるな? 肉や魚の味の濃い料理や、エルブのような強いクセのあるチーズとよく合うんだよ」
「ベルギーはお食事も美味しいの?」
「もちろんだよ。酒の旨いところはメシも旨い。
それに世界一のダイヤモンドのシンジケートがあるんだ。
世界中のダイヤの70%以上はアントワープで加工されているらしい。
ベルギーはフランスやドイツに占領されたり、その地理的な背景からも5か国語は話せないと生活が出来ないとも言われている」
「私には無理だなー、英語すら大学の時からご無沙汰だし。
ねえ、あのネロとパトラッシュの大聖堂にも行ったの?」
「ルーベンスの絵がある、あの大聖堂な?
行ったけど中には入れなかった。時間外だったのかな?
でも、外側からでもネロとパトラッシュが天使たちに連れられて、天国に昇っていくような美しい大聖堂だったなあ」
「いいなあ、私もネロになりたい・・・」
「じゃあ、俺はパトラッシュになって、ヒロを乗せて天に昇るよ」
「ダメよ、私と一緒に死んじゃうじゃない」
「・・・それでもいいよ、華絵となら」
「馬鹿なこと言わないの。ヒロは船長さんになるんでしょう?」
そう言って華絵は力なく笑った。
「ハナ・・・」
「ごめんなさいね、私が病気になってヒロに迷惑ばかり掛けて・・・」
私は背後から華絵を強く抱き締めた。
「迷惑なんかじゃない。 俺が、俺が華絵をこんな目に遭わせたんだ・・・」
すると華絵はそれを打ち消すかのように言った。
「今度は私が洗ってあげる」
華絵は私に向き直ると、私からスポンジを取り、首筋から下へと洗い始めた。
「立って」
私が立ち上がると、ペニスをやさしく洗い始めた。
「おいコラッ、君、ちょっと元気がないぞ。うふっ」
華絵は私のそこをお湯で流し、そこにやさしくキスをしてくれた。
痩せて小さくなった華絵の背中に触れ、私は泣いた。
ベッドに入り、私は労わるように華絵を抱いた。
「もっと強く、激しくして・・・」
「大丈夫なのか?」
「うん、寛之を自分のカラダに刻み付けたいから・・・」
「愛しているよ、華絵」
「大好きよ! 寛之!」
セックスとはただの男の排泄行為ではない。
愛が溶け合い、ひとつになることだ。
身も心もすべて。
その夜、私たちの愛はひとつになった。
「風呂、一緒に入ろうか? 背中、洗ってあげるよ」
「いいよ、子供じゃないんだから」
「それなら俺の背中を洗ってくれよ」
「しょうがないなあ。それじゃあサービスしてやるかな?
高いわよ、華絵ソープランドは」
私たちは笑った。
「華絵、入るぞー」
「いいよー」
骸骨のように痩せ細った華絵のカラダに、私は戸惑った。
それを察知したように華絵が言った。
「私のカラダ、骸骨みたいでしょ? 骨と皮だけになっちゃった」
「俺はスレンダーな華絵も好きだよ」
「これはスレンダーとは言わないよ・・・」
私はスポンジにボディソープを付け、話題を変えた。
「この前会津に行った時、水羊羹を買って来るのを忘れたな? あれ、好きだったんだけどなあ」
「私も帰って来てから気付いた。会津若松の駅なら売ってることもあるんだけど、クルマだったからね? 今度、お母さんに送ってもらうよ」
「大変だからいいよ。美味しい水羊羹なら東京にいくらでもあるし。
ハナの体の調子がいい時に、一緒に買いに行こう」
「そうだね? 水まんじゅうも食べたいなー」
「でも、どちらもないかもしれないな? 今はまだ冬だから。
夏まで待つしかないね?」
「夏までは・・・、無理だよ」
私は華絵の背中を洗い始めた。
「ねえヒロ、外国の話をして」
「そうだなあ、華絵は何処の国に行ってみたい?」
「そうねえ、行くとすればヨーロッパかなー?」
「パリやロンドンもいいけど、アントワープは好きな街だったなあ。美しい中世の雰囲気が残る港町なんだ」
「ベルギーだよね? アントワープって?
『フランダースの犬』の舞台になった」
「現地の人間は知らなかったけどな?」
「へえー、そうなの?」
「ハナはチョコレートが好きだろう? おしゃれな小さいアーケードに、たくさんのチョコレートの店があって、チョコの甘い香りが色んな店から漂って来るんだよ。ハリーポッターの映画に出て来る、あの魔法の道具を売る商店街みたいな雰囲気で」
「いいなー、ヒロはベルギーワッフルも食べた?」
「見たような気もするけど、食べなかった」
「勿体ない」
「その代わり、酒はたくさん飲んだよ、ベルギービールとかね」
「ベルギーって名前が付いただけで美味しそうだもんね?
ベルギーチョコレートにベルギービール、それにベルギーワッフルも」
「神戸牛に長崎ちゃんぽん、横浜シュウマイとかもな?」
「あはは、そうだね? 『東京バナナ』とか」
「あはははは、それもあったよな?
ベルギーにはペケというジンがあって、それをひょうたんみたいな小さいショットグラスで飲むんだ」
「ベルギーはジン発祥の地なんでしょう? 前に本で読んだことがある」
「良く知ってるな? 肉や魚の味の濃い料理や、エルブのような強いクセのあるチーズとよく合うんだよ」
「ベルギーはお食事も美味しいの?」
「もちろんだよ。酒の旨いところはメシも旨い。
それに世界一のダイヤモンドのシンジケートがあるんだ。
世界中のダイヤの70%以上はアントワープで加工されているらしい。
ベルギーはフランスやドイツに占領されたり、その地理的な背景からも5か国語は話せないと生活が出来ないとも言われている」
「私には無理だなー、英語すら大学の時からご無沙汰だし。
ねえ、あのネロとパトラッシュの大聖堂にも行ったの?」
「ルーベンスの絵がある、あの大聖堂な?
行ったけど中には入れなかった。時間外だったのかな?
でも、外側からでもネロとパトラッシュが天使たちに連れられて、天国に昇っていくような美しい大聖堂だったなあ」
「いいなあ、私もネロになりたい・・・」
「じゃあ、俺はパトラッシュになって、ヒロを乗せて天に昇るよ」
「ダメよ、私と一緒に死んじゃうじゃない」
「・・・それでもいいよ、華絵となら」
「馬鹿なこと言わないの。ヒロは船長さんになるんでしょう?」
そう言って華絵は力なく笑った。
「ハナ・・・」
「ごめんなさいね、私が病気になってヒロに迷惑ばかり掛けて・・・」
私は背後から華絵を強く抱き締めた。
「迷惑なんかじゃない。 俺が、俺が華絵をこんな目に遭わせたんだ・・・」
すると華絵はそれを打ち消すかのように言った。
「今度は私が洗ってあげる」
華絵は私に向き直ると、私からスポンジを取り、首筋から下へと洗い始めた。
「立って」
私が立ち上がると、ペニスをやさしく洗い始めた。
「おいコラッ、君、ちょっと元気がないぞ。うふっ」
華絵は私のそこをお湯で流し、そこにやさしくキスをしてくれた。
痩せて小さくなった華絵の背中に触れ、私は泣いた。
ベッドに入り、私は労わるように華絵を抱いた。
「もっと強く、激しくして・・・」
「大丈夫なのか?」
「うん、寛之を自分のカラダに刻み付けたいから・・・」
「愛しているよ、華絵」
「大好きよ! 寛之!」
セックスとはただの男の排泄行為ではない。
愛が溶け合い、ひとつになることだ。
身も心もすべて。
その夜、私たちの愛はひとつになった。
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