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ウサギの話 4章
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そうやって何年か経った頃、突然、黒ウサギは言い出した。
「オレは引退する。俺の仕事はお前が全部引きつげ」
は? そんな勝手な事言い分ある? そう言って私は散々不満をぶつけたけど、
もう決心した師匠は決してその方針を変えなかった。
そしてある日、朝に黒ウサギの仕事場のアパートへ行って部屋を鍵で開けると、
パソコン画面に「あとはたのむ」とだけ書かれた紙が貼ってあった。
黒ウサギは、消えた。
私は出来る限り黒ウサギの行先の情報を探ってみたけど、さすが師匠は全く
尻尾をつかませず、どこへ行ったか見当もつかなかった。
「やっぱり見つかんないなぁ」
私は頭の中のウサギさんにぼやいた。黒ウサギと出会ってから頭の中の
ウサギさんはたまにしか出てこなくなっていたけど、「あとはたのむ」の
書置きの後は毎日出てきて話を聞いてくれている。
じゃあさ、一回黒ウサギの事は「保留」にしない?
それでまたいい時期が来たら探せばいいよ。それに、今は僕がいるしね。
ウサギさんの言うとおりにする事にした。というよりも、黒ウサギのお客
からの仕事の依頼で忙しくなってきたってのもある。
ある時、情報がほしいって依頼があって、私はそのお客に情報を渡す為に
会いに行ったの。そしたら、なんだか力の強そうな男の人何人かに囲まれ
ちゃって、手錠までかけられて、声が出せないように口を縛られちゃった。
そいつらは、噂通りの上玉だとか売れば高いぜとか味見は誰からするかとか
言い出したの。私はもう少しで涙が出そうな顔してたら、そういう顔が
そそるだのいいねだのゲヘヘだの。
ホント、男ってバカ。
私? あっという間に洋服を脱がされて、そいつらにさんざんヤラれたわよ。
あれは何て言うか、もうサイアク。
ってのはウソ。こういう事を言えば、すけべヤロー達が喜ぶのよってオウムが
言ってたから言ってみただけ。
もう一度になるけど、ホント男ってバカ。
そいつらが私を騙そうっていう仲間間の打ち合わせも情報であって、
情報で私に勝てるなんて思っているんだもの。
ファンファンファンファン不安。
パトカーが何台も縛られた私がいる場所に向かってきた。
もちろん、私が通報しておいたのよ。
男達は慌ててアッチコッチに逃げていった。
私はもちろんそんな手錠なんか外して、さっさと逃げたわ。
アホどもがどんな手錠使うかって情報ももちろん掴んでいたから。
「あ・・・あのさ・・・」
「なに?」
「ウサギはさ・・・・なんでそんな恰好してるの?」
突然失礼な事を聞いてきたコイツは、ネズミって言う。
前に「サムライ」を探してほしいって依頼があって、それ以来、ちょくちょく
仕事を頼んでくる。そのついでみたいに、私の家族は何人いるかとか高校はどこを
出たんだとかいちいち聞いてきて、ちょっとうざったいヤツだ。
でも、ネットのハッキングの腕は一流だから私も仕事を頼むこともあって、
あまり邪険にも出来ない。
私と会ってから一度も目を合わせないネズミの視線の先は、私の履いている
カーゴパンツだった。
動きやすくて、サイドのポケットにもいろいろ入れられるから、色や柄は違う
けどだいたいいつもカーゴパンツを履いている。
「あのさ・・・もっと、違うの履かないの?」
「違うのって?」
「だから・・・スカート・・・とか?」
「履かない」
「なんで?」
「動きにくいから」
「・・・・あれだ。」
「なに?」
「ウサギって・・・・モテない?」
「うん。あんたも中学高校から今に至るまで、女には全然モテてないけどね」
「俺の事は・・・いいんだよ。」
ネズミと話すと、たいていこんな感じで終わる。
ある日、オウムが「あんた、ネズミの事をどう思ってんの?」なんて聞いてきた
から、アイツの生年月日や本名や住所出身校家族構成愛用のパソコンの機種を
つらつらとあげて、「まあでも悪い奴じゃない」って最後に付け加えたら、
ハーーーー。っておっきなため息をつかれた。
なんでなんだろう。
アパートのドアの前に、座っている女の人がいる。
誰だろうと思って近寄ったら、お母さんだった。
「たまたまこっちに来る用事があったから、様子を見に来たのよ」
お母さんはすぐにばれるような嘘をついた。
私は、大きなホテルの排気口の中で、一晩中ターゲットの盗聴をしていたから、
もう疲れ切っていて、お母さんの相手をする余裕なんてなくて、早くベッドに
横になって眠りたかった。
ドアを開けて、パソコンとプリンターが二台ずつある娘の部屋を見たお母さんは、
私に、一体何をやっているの? 専門学校もせっかく入ったのに辞めたそうじゃ
ないの。こんなパソコンしか無い部屋で、少しも女の子らしいものが無いじゃ
ないの。お友達とかとごはん食べに行くだとか遊びに行ったりしてる?
前はお友達いたのに。どうしてそうなっちゃったのよ。と怒ってるんだか嘆いて
いるんだか分からない事を続けた。
どうしてそうなっちゃったも何もない。私はずうっと私だった。
お母さんの頭の中の私が今の私と違っていただけだよ。そう言いたかったけど、
どうやって説明すれば穏やかにお母さんに分かってもらえるのか分からなかった。
それに私はホントに疲れていた。だからもう面倒くさくなって、パソコンを起動
させて、ファイルに入っていた動画を再生させた。
「ちょっと、なにこれ?」
不機嫌そうにパソコン画面を覗いていたお母さんの顔が、見る見るうちにわなわな
して震えてきている。
画面の中では、きれいな服を着たお母さんが、大学時代に同級生だった男の人と
ホテルに入る所が写っている。
「こんなもの、どうしたの?」
私はそれには答えずに、このパソコンからすぐにお父さんにこの動画を送れる事を
伝えた。
「だから、今日は帰って。お願いだから。私ね、一晩中仕事していてすっごく
疲れてるのよ。だから休ませて」
お母さんは、悔しさとか悲しさとか不安とかのいろいろ混じった顔になり、何も
言わずに部屋を出て行った。
私はシャワーを浴びて、すぐにベッドに入った。
それから、お母さんがアパートに来ることは無くなったし、電話がかかってくる
回数もガックリと減った。
私がやった方法は間違いだったかな? でも、ほんとにすっごい眠かったから、
しょうがないわよね。
お客に希望通りの情報を提供し続けて、報酬はどんどん入ってきた。
たまに、私が若い女だからって報酬を踏み倒して逃げようとするヤツもいた。
そんな時は荒っぽい事が得意な人たちにそいつの情報を伝えて仕事を依頼した。
ケガの治療費が余計にかかってしまったそいつは、何も文句を言わずに報酬を
支払った。
「ウサギはさ・・・・あれだよ。」
「なに?」
「そんなに働いて金貯めて・・・・どうすんの?」
「・・・別に。」
「もっと・・・・遊ぶとか・・・・買い物するとか・・・?」
ネズミのブツブツ小言はもう飽きた。大きなお世話だ。
私は私で目標としている額があって、そこに到達したら思いっきり使う予定
なんだから。
オウムと飲みに行った時に、そんなネズミの事を愚痴ったら、
「あいつはウサギの事心配しているんだよ。なんか分かんないけど、あんたに
仲間意識みたいなものがあるんじゃないの?」
「仲間意識?」
「そ。あの男はさ、この世界じゃあんまり心許さなくて、人付き合い悪いんだ。
なんかそういう所があんたと似てるって感じなんじゃないの?」
「私はあいつほどひどくないよ。」
オウムはクリっと両目をまん丸にして見開き、次の瞬間、ブハハハハ!って
大笑いした。
「ネズミもそう言ってたよ。オレは・・・アイツほどひどくないけど。ってさ」
それから三年が経ち、やっと目標の額が溜まった。
たぶん、同じくらいの年齢の女の人からしたら、ちょっとびっくりするくらい
の額が。
私はオウムに「おうディション」を紹介してもらった。
「おうディション」は、詐欺をやる時に必要な俳優をレンタルさせてくれる
組織だ。私は若いサラリーマンに見えるような男の俳優を注文し、その俳優と
一緒に、とある金融機関の一つに入って行った。
どう見たってマジメな社会人みたいに見える男は「すみません」と慇懃に
入って行き、用向きを伝えた。
すぐに支店長らしき男が出てきて、詳しく事情を聴きますのでこちらに。
と奥に通される。
男は淡々と事情を説明した。
「・・・というわけなので、私がその金額をお支払いします」
「そうですか。事情は分かりました。私共としましても、お貸ししたものや
それに伴う利息を返して頂いければ何も問題はございません」
「それは良かった。じゃあ、現金は私が持っていますので。」
「ええと、そうですか。すみません、一応、身分証明となるものが何か
ありましたら、確認させて頂いてよろしいでしょうか」
「もちろんです。」
私とその男は、偽造した免許証と保険証を出した。
「なるほど。かしこまりました。それでは金額を確認させて頂きましたら、
書類の方を準備させていただきます」
俳優は、黒い書類バッグから丁寧に揃えられた一万円札の束をいくつも
取り出した。
支店長ともう一人の若い女社員が札を数えるシャンシャンシャンという
音が響く。
「――確かに。
ええと、申し訳ありません。度々の確認になりますが、そちら様が
婚約者という間柄なのですね」
「ええ。」
「それでこちらのお嬢様が妹さんで。」
「そうです。」
「木島里香さんの」
リカ先生のお父さんが、若年性アルツハイマーという認知症を発症
したのは、もう9年も前だ。
リカ先生もお母さんもお父さんの介護を必死にやっていたけど、元気な
お父さんは外を徘徊したり店でものを取ってきたりしてしまったりと大変だった
らしい。
毎日毎日が大変で、二人とも辛い思いばかりして疲れ果てて、ついにお父さん
を老人ホームに入れる事にした。だけど公共の施設は入りたいって希望者が
百人待ちなんてのはざらだった。
疲れ果てたお母さんが、寝ているお父さんの首にひもを巻きつけようとして
いたのを見つけた時、もう最後の手段の民間の有料老人ホームにお父さんを入れる
事をリカ先生は決意した。
でも有料老人ホームは入所するだけで1000万円。毎月25万円もかかる。
結局、リカ先生は借金をしてお父さんを有料老人ホームに入れた。
二人は借金の返済の為に朝も夜も働きどおしだ。
私は、リカ先生が大好きだった。リカ先生は初めて私の話を喜んで聞いて
くれた人。だからこれは恩返しなのだ。鶴やお地蔵さんにできて、私に出来ない
はずがない。
確かに表記金額を受け取りました。という書面をリカ先生の住所が書かれた
封筒に入れて、ポストに投げ込んだ後、私は空を見上げた。
桜だ。桜が咲いている。
なんだか、とってもいい気分だった。
私は、残りの貯金の半額をネズミに渡して、必要経費込みの仕事を依頼した。
「黒ウサギを・・・・探す?」
「そ。私がいくらやっても探せなかった。だから考えたの。たぶん、黒ウサギは
私の事をよく知っていて、どうやって私が探すか知っている。だから見つから
ないように策ができるんだって。じゃあさ、私じゃなくてネズミが探せば、
びっくりするような所からアプローチするんじゃないの?」
「それで、俺が?」
「そ」
「でも・・・」
「探せなそうなの?」
「そうじゃない。でも・・・・必要経費込みって・・・」
「報酬がたくさん欲しいなら、出来るだけ金かけないでやって。まぁそんなに簡単
にはいかないと思うけどね」
「わかった・・・・やる」
そう言ってネズミはニヤッと笑った。なんてぎこちない笑顔なんだろう。
それからも、私はいろんな人間に情報を売って暮らした。
オウムに頼まれて、トンボっていう嫌な奴をハメるのを手伝ったりしたけど、
それはまた別の時の話しで。
「いい人とかはいないの?」
久しぶりにお母さんが会いたいというので、待ち合わせをして、適当なイタリアン
レストランに入った。
お母さんは、ご飯は食べてるのかとか仕事は忙しいのかとかありきたりの質問を
しながらパスタをフォークにからめて、いよいよという感じで本当に聞きたい質問を
投げかけてきた。
「いないよ」
こんな奇妙な仕事をしていて、恋人もなにもあったもんじゃない。私の仕事を
‘‘素敵な仕事だね‘‘なんて言う男はいないだろう。
「誰か・・・お母さんの知り合いとかに、良さそうな人紹介してもらおうか?」
「エ? いいよ」
たぶん、お母さんに写真と名前を見せてもらって、その人を私が調査してみたら
いろいろな事が出てきちゃうんだから
「そう・・・もっとさ、もうちょっと服装とか気を使ってみたら?
そんな男みたいな恰好していないで。スカート履くとか。」
「動きやすいんだもん。」
お母さんは、フーと鼻からため息を漏らした。
「もうちょっと、普通の女の子みたいに――」お母さんはそこで言葉を切って、
「――まあいいわ」と、喋るのをやめた。
そこから、二人とも特に喋らないで、スプーンやフォークがお皿にあたる
カチャカチャという音だけが響いていた。
多分、私達は、会話の無い、仲の悪い母娘に見えていたのだろう。
でも、お母さんとこうやって無言の時間を過ごすのは、私は嫌いじゃない。
また桜が咲き始めた頃、やっとネズミから報告があった。
私は、ネズミと一緒に新幹線の中にいた。
本当に大変だった。腕のいい探偵を雇ってもちっとも情報が取れない。
そこで考えたんだ。
「引退した」と言っても長年やっていたのだから、多分黒ウサギはまだネット内で
情報収集を続けている。だったらネット世界で釣りをしてみよう。
と言う事で、情報屋が食いつきそうなエサを、ネットのあちこちに撒いてみた。
微かに金持ちだと分かるようなブログの文章だとか、よくよく見てみると住所の
情報がある写真とか。
嘘のエサだとバレるので、本当に金を使ってエサを作った。ちなみにもらった
金はほとんど使ってしまい、自分でも少し持ち出した。
そんな事をしていたら、やっとこっちのエサに黒ウサギが食いついた。
こうやって書くと流暢に読めるが、実際のネズミは、
あのさ・・・それで・・・だから・・・・ばかりのつっかえつっかえで、
新幹線に乗っている二時間あまりを使ってようやく話し終え、
私はあぁあぁそうと適当に頷いていた。
「あとさ・・・」
「なに?」
「いや・・・なんでもない。」
私の服装を見たネズミが、何を聞きたいのかよく分かっている。
新幹線の駅から在来線に乗り換えて、さらにその奥のローカル線に乗って、
私達の他に誰も降りないような寂れた駅に着いた時にはもう午後をだいぶ
回っていた。
そこからまた30分以上歩いて、畑仕事をしているおばあちゃんに尋ねてみたら
「ああ、あん人か。あっちの方の畑にいるよ。愛想はねえが、いい人だ」
とのんびりと答えてくれた。
言われた畑の真ん中に、男はいた。
麦わら帽子を被って、紺色の作業ズボンを履いて、しゃがんで地面を
いじっている。
「黒ウサギ!」
男は頭を上げて、記憶よりは日焼けして少し頬のこけた、懐かしい顔を見せて
くれた。
そして、フフフフ不、と笑い出した。
「・・・見つかったか」
「・・・見つかったね」
「それで・・・・」
長靴を履いた黒ウサギは、ゆっくりと立ち上がった。
「その恰好はなんだ?」
黒ウサギの泥だらけの軍手の指が、私が履いている薄いブルーのスカートを
指さした。
「別にいいでしょ。」
「あと・・・」と言ってから、黒ウサギは少し照れ臭そうに、汚れた指で頬を
カリカリかいてから、こう聞いてきた。
「なんで・・・泣いてる?」
そう言われて私は、自分の目からこぼれているものに、やっと気付いた。
私の中には、ウサギさんがいる。
ウサギさんは、私が寂しくて寂しくてたまらない時に出てきて、話を聞いて
くれたり、励ましてくれるの。
黒いウサギさんと、青いウサギさん。
私も、ウサギ。
大きい耳でどんな小さな情報も拾い上げて、いろんな人に売って暮らしている。
「オレは引退する。俺の仕事はお前が全部引きつげ」
は? そんな勝手な事言い分ある? そう言って私は散々不満をぶつけたけど、
もう決心した師匠は決してその方針を変えなかった。
そしてある日、朝に黒ウサギの仕事場のアパートへ行って部屋を鍵で開けると、
パソコン画面に「あとはたのむ」とだけ書かれた紙が貼ってあった。
黒ウサギは、消えた。
私は出来る限り黒ウサギの行先の情報を探ってみたけど、さすが師匠は全く
尻尾をつかませず、どこへ行ったか見当もつかなかった。
「やっぱり見つかんないなぁ」
私は頭の中のウサギさんにぼやいた。黒ウサギと出会ってから頭の中の
ウサギさんはたまにしか出てこなくなっていたけど、「あとはたのむ」の
書置きの後は毎日出てきて話を聞いてくれている。
じゃあさ、一回黒ウサギの事は「保留」にしない?
それでまたいい時期が来たら探せばいいよ。それに、今は僕がいるしね。
ウサギさんの言うとおりにする事にした。というよりも、黒ウサギのお客
からの仕事の依頼で忙しくなってきたってのもある。
ある時、情報がほしいって依頼があって、私はそのお客に情報を渡す為に
会いに行ったの。そしたら、なんだか力の強そうな男の人何人かに囲まれ
ちゃって、手錠までかけられて、声が出せないように口を縛られちゃった。
そいつらは、噂通りの上玉だとか売れば高いぜとか味見は誰からするかとか
言い出したの。私はもう少しで涙が出そうな顔してたら、そういう顔が
そそるだのいいねだのゲヘヘだの。
ホント、男ってバカ。
私? あっという間に洋服を脱がされて、そいつらにさんざんヤラれたわよ。
あれは何て言うか、もうサイアク。
ってのはウソ。こういう事を言えば、すけべヤロー達が喜ぶのよってオウムが
言ってたから言ってみただけ。
もう一度になるけど、ホント男ってバカ。
そいつらが私を騙そうっていう仲間間の打ち合わせも情報であって、
情報で私に勝てるなんて思っているんだもの。
ファンファンファンファン不安。
パトカーが何台も縛られた私がいる場所に向かってきた。
もちろん、私が通報しておいたのよ。
男達は慌ててアッチコッチに逃げていった。
私はもちろんそんな手錠なんか外して、さっさと逃げたわ。
アホどもがどんな手錠使うかって情報ももちろん掴んでいたから。
「あ・・・あのさ・・・」
「なに?」
「ウサギはさ・・・・なんでそんな恰好してるの?」
突然失礼な事を聞いてきたコイツは、ネズミって言う。
前に「サムライ」を探してほしいって依頼があって、それ以来、ちょくちょく
仕事を頼んでくる。そのついでみたいに、私の家族は何人いるかとか高校はどこを
出たんだとかいちいち聞いてきて、ちょっとうざったいヤツだ。
でも、ネットのハッキングの腕は一流だから私も仕事を頼むこともあって、
あまり邪険にも出来ない。
私と会ってから一度も目を合わせないネズミの視線の先は、私の履いている
カーゴパンツだった。
動きやすくて、サイドのポケットにもいろいろ入れられるから、色や柄は違う
けどだいたいいつもカーゴパンツを履いている。
「あのさ・・・もっと、違うの履かないの?」
「違うのって?」
「だから・・・スカート・・・とか?」
「履かない」
「なんで?」
「動きにくいから」
「・・・・あれだ。」
「なに?」
「ウサギって・・・・モテない?」
「うん。あんたも中学高校から今に至るまで、女には全然モテてないけどね」
「俺の事は・・・いいんだよ。」
ネズミと話すと、たいていこんな感じで終わる。
ある日、オウムが「あんた、ネズミの事をどう思ってんの?」なんて聞いてきた
から、アイツの生年月日や本名や住所出身校家族構成愛用のパソコンの機種を
つらつらとあげて、「まあでも悪い奴じゃない」って最後に付け加えたら、
ハーーーー。っておっきなため息をつかれた。
なんでなんだろう。
アパートのドアの前に、座っている女の人がいる。
誰だろうと思って近寄ったら、お母さんだった。
「たまたまこっちに来る用事があったから、様子を見に来たのよ」
お母さんはすぐにばれるような嘘をついた。
私は、大きなホテルの排気口の中で、一晩中ターゲットの盗聴をしていたから、
もう疲れ切っていて、お母さんの相手をする余裕なんてなくて、早くベッドに
横になって眠りたかった。
ドアを開けて、パソコンとプリンターが二台ずつある娘の部屋を見たお母さんは、
私に、一体何をやっているの? 専門学校もせっかく入ったのに辞めたそうじゃ
ないの。こんなパソコンしか無い部屋で、少しも女の子らしいものが無いじゃ
ないの。お友達とかとごはん食べに行くだとか遊びに行ったりしてる?
前はお友達いたのに。どうしてそうなっちゃったのよ。と怒ってるんだか嘆いて
いるんだか分からない事を続けた。
どうしてそうなっちゃったも何もない。私はずうっと私だった。
お母さんの頭の中の私が今の私と違っていただけだよ。そう言いたかったけど、
どうやって説明すれば穏やかにお母さんに分かってもらえるのか分からなかった。
それに私はホントに疲れていた。だからもう面倒くさくなって、パソコンを起動
させて、ファイルに入っていた動画を再生させた。
「ちょっと、なにこれ?」
不機嫌そうにパソコン画面を覗いていたお母さんの顔が、見る見るうちにわなわな
して震えてきている。
画面の中では、きれいな服を着たお母さんが、大学時代に同級生だった男の人と
ホテルに入る所が写っている。
「こんなもの、どうしたの?」
私はそれには答えずに、このパソコンからすぐにお父さんにこの動画を送れる事を
伝えた。
「だから、今日は帰って。お願いだから。私ね、一晩中仕事していてすっごく
疲れてるのよ。だから休ませて」
お母さんは、悔しさとか悲しさとか不安とかのいろいろ混じった顔になり、何も
言わずに部屋を出て行った。
私はシャワーを浴びて、すぐにベッドに入った。
それから、お母さんがアパートに来ることは無くなったし、電話がかかってくる
回数もガックリと減った。
私がやった方法は間違いだったかな? でも、ほんとにすっごい眠かったから、
しょうがないわよね。
お客に希望通りの情報を提供し続けて、報酬はどんどん入ってきた。
たまに、私が若い女だからって報酬を踏み倒して逃げようとするヤツもいた。
そんな時は荒っぽい事が得意な人たちにそいつの情報を伝えて仕事を依頼した。
ケガの治療費が余計にかかってしまったそいつは、何も文句を言わずに報酬を
支払った。
「ウサギはさ・・・・あれだよ。」
「なに?」
「そんなに働いて金貯めて・・・・どうすんの?」
「・・・別に。」
「もっと・・・・遊ぶとか・・・・買い物するとか・・・?」
ネズミのブツブツ小言はもう飽きた。大きなお世話だ。
私は私で目標としている額があって、そこに到達したら思いっきり使う予定
なんだから。
オウムと飲みに行った時に、そんなネズミの事を愚痴ったら、
「あいつはウサギの事心配しているんだよ。なんか分かんないけど、あんたに
仲間意識みたいなものがあるんじゃないの?」
「仲間意識?」
「そ。あの男はさ、この世界じゃあんまり心許さなくて、人付き合い悪いんだ。
なんかそういう所があんたと似てるって感じなんじゃないの?」
「私はあいつほどひどくないよ。」
オウムはクリっと両目をまん丸にして見開き、次の瞬間、ブハハハハ!って
大笑いした。
「ネズミもそう言ってたよ。オレは・・・アイツほどひどくないけど。ってさ」
それから三年が経ち、やっと目標の額が溜まった。
たぶん、同じくらいの年齢の女の人からしたら、ちょっとびっくりするくらい
の額が。
私はオウムに「おうディション」を紹介してもらった。
「おうディション」は、詐欺をやる時に必要な俳優をレンタルさせてくれる
組織だ。私は若いサラリーマンに見えるような男の俳優を注文し、その俳優と
一緒に、とある金融機関の一つに入って行った。
どう見たってマジメな社会人みたいに見える男は「すみません」と慇懃に
入って行き、用向きを伝えた。
すぐに支店長らしき男が出てきて、詳しく事情を聴きますのでこちらに。
と奥に通される。
男は淡々と事情を説明した。
「・・・というわけなので、私がその金額をお支払いします」
「そうですか。事情は分かりました。私共としましても、お貸ししたものや
それに伴う利息を返して頂いければ何も問題はございません」
「それは良かった。じゃあ、現金は私が持っていますので。」
「ええと、そうですか。すみません、一応、身分証明となるものが何か
ありましたら、確認させて頂いてよろしいでしょうか」
「もちろんです。」
私とその男は、偽造した免許証と保険証を出した。
「なるほど。かしこまりました。それでは金額を確認させて頂きましたら、
書類の方を準備させていただきます」
俳優は、黒い書類バッグから丁寧に揃えられた一万円札の束をいくつも
取り出した。
支店長ともう一人の若い女社員が札を数えるシャンシャンシャンという
音が響く。
「――確かに。
ええと、申し訳ありません。度々の確認になりますが、そちら様が
婚約者という間柄なのですね」
「ええ。」
「それでこちらのお嬢様が妹さんで。」
「そうです。」
「木島里香さんの」
リカ先生のお父さんが、若年性アルツハイマーという認知症を発症
したのは、もう9年も前だ。
リカ先生もお母さんもお父さんの介護を必死にやっていたけど、元気な
お父さんは外を徘徊したり店でものを取ってきたりしてしまったりと大変だった
らしい。
毎日毎日が大変で、二人とも辛い思いばかりして疲れ果てて、ついにお父さん
を老人ホームに入れる事にした。だけど公共の施設は入りたいって希望者が
百人待ちなんてのはざらだった。
疲れ果てたお母さんが、寝ているお父さんの首にひもを巻きつけようとして
いたのを見つけた時、もう最後の手段の民間の有料老人ホームにお父さんを入れる
事をリカ先生は決意した。
でも有料老人ホームは入所するだけで1000万円。毎月25万円もかかる。
結局、リカ先生は借金をしてお父さんを有料老人ホームに入れた。
二人は借金の返済の為に朝も夜も働きどおしだ。
私は、リカ先生が大好きだった。リカ先生は初めて私の話を喜んで聞いて
くれた人。だからこれは恩返しなのだ。鶴やお地蔵さんにできて、私に出来ない
はずがない。
確かに表記金額を受け取りました。という書面をリカ先生の住所が書かれた
封筒に入れて、ポストに投げ込んだ後、私は空を見上げた。
桜だ。桜が咲いている。
なんだか、とってもいい気分だった。
私は、残りの貯金の半額をネズミに渡して、必要経費込みの仕事を依頼した。
「黒ウサギを・・・・探す?」
「そ。私がいくらやっても探せなかった。だから考えたの。たぶん、黒ウサギは
私の事をよく知っていて、どうやって私が探すか知っている。だから見つから
ないように策ができるんだって。じゃあさ、私じゃなくてネズミが探せば、
びっくりするような所からアプローチするんじゃないの?」
「それで、俺が?」
「そ」
「でも・・・」
「探せなそうなの?」
「そうじゃない。でも・・・・必要経費込みって・・・」
「報酬がたくさん欲しいなら、出来るだけ金かけないでやって。まぁそんなに簡単
にはいかないと思うけどね」
「わかった・・・・やる」
そう言ってネズミはニヤッと笑った。なんてぎこちない笑顔なんだろう。
それからも、私はいろんな人間に情報を売って暮らした。
オウムに頼まれて、トンボっていう嫌な奴をハメるのを手伝ったりしたけど、
それはまた別の時の話しで。
「いい人とかはいないの?」
久しぶりにお母さんが会いたいというので、待ち合わせをして、適当なイタリアン
レストランに入った。
お母さんは、ご飯は食べてるのかとか仕事は忙しいのかとかありきたりの質問を
しながらパスタをフォークにからめて、いよいよという感じで本当に聞きたい質問を
投げかけてきた。
「いないよ」
こんな奇妙な仕事をしていて、恋人もなにもあったもんじゃない。私の仕事を
‘‘素敵な仕事だね‘‘なんて言う男はいないだろう。
「誰か・・・お母さんの知り合いとかに、良さそうな人紹介してもらおうか?」
「エ? いいよ」
たぶん、お母さんに写真と名前を見せてもらって、その人を私が調査してみたら
いろいろな事が出てきちゃうんだから
「そう・・・もっとさ、もうちょっと服装とか気を使ってみたら?
そんな男みたいな恰好していないで。スカート履くとか。」
「動きやすいんだもん。」
お母さんは、フーと鼻からため息を漏らした。
「もうちょっと、普通の女の子みたいに――」お母さんはそこで言葉を切って、
「――まあいいわ」と、喋るのをやめた。
そこから、二人とも特に喋らないで、スプーンやフォークがお皿にあたる
カチャカチャという音だけが響いていた。
多分、私達は、会話の無い、仲の悪い母娘に見えていたのだろう。
でも、お母さんとこうやって無言の時間を過ごすのは、私は嫌いじゃない。
また桜が咲き始めた頃、やっとネズミから報告があった。
私は、ネズミと一緒に新幹線の中にいた。
本当に大変だった。腕のいい探偵を雇ってもちっとも情報が取れない。
そこで考えたんだ。
「引退した」と言っても長年やっていたのだから、多分黒ウサギはまだネット内で
情報収集を続けている。だったらネット世界で釣りをしてみよう。
と言う事で、情報屋が食いつきそうなエサを、ネットのあちこちに撒いてみた。
微かに金持ちだと分かるようなブログの文章だとか、よくよく見てみると住所の
情報がある写真とか。
嘘のエサだとバレるので、本当に金を使ってエサを作った。ちなみにもらった
金はほとんど使ってしまい、自分でも少し持ち出した。
そんな事をしていたら、やっとこっちのエサに黒ウサギが食いついた。
こうやって書くと流暢に読めるが、実際のネズミは、
あのさ・・・それで・・・だから・・・・ばかりのつっかえつっかえで、
新幹線に乗っている二時間あまりを使ってようやく話し終え、
私はあぁあぁそうと適当に頷いていた。
「あとさ・・・」
「なに?」
「いや・・・なんでもない。」
私の服装を見たネズミが、何を聞きたいのかよく分かっている。
新幹線の駅から在来線に乗り換えて、さらにその奥のローカル線に乗って、
私達の他に誰も降りないような寂れた駅に着いた時にはもう午後をだいぶ
回っていた。
そこからまた30分以上歩いて、畑仕事をしているおばあちゃんに尋ねてみたら
「ああ、あん人か。あっちの方の畑にいるよ。愛想はねえが、いい人だ」
とのんびりと答えてくれた。
言われた畑の真ん中に、男はいた。
麦わら帽子を被って、紺色の作業ズボンを履いて、しゃがんで地面を
いじっている。
「黒ウサギ!」
男は頭を上げて、記憶よりは日焼けして少し頬のこけた、懐かしい顔を見せて
くれた。
そして、フフフフ不、と笑い出した。
「・・・見つかったか」
「・・・見つかったね」
「それで・・・・」
長靴を履いた黒ウサギは、ゆっくりと立ち上がった。
「その恰好はなんだ?」
黒ウサギの泥だらけの軍手の指が、私が履いている薄いブルーのスカートを
指さした。
「別にいいでしょ。」
「あと・・・」と言ってから、黒ウサギは少し照れ臭そうに、汚れた指で頬を
カリカリかいてから、こう聞いてきた。
「なんで・・・泣いてる?」
そう言われて私は、自分の目からこぼれているものに、やっと気付いた。
私の中には、ウサギさんがいる。
ウサギさんは、私が寂しくて寂しくてたまらない時に出てきて、話を聞いて
くれたり、励ましてくれるの。
黒いウサギさんと、青いウサギさん。
私も、ウサギ。
大きい耳でどんな小さな情報も拾い上げて、いろんな人に売って暮らしている。
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