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魔王、盗まれる9
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「それじゃあ、これは?」
クリスが取り出したのは細かな模様の入った紙だった。
「何、この紙?」
「これは誓約の紙といって、ここに書いた約束を破ると、破った相手は一週間少し不幸になる紙だよ」
クリスがヨハンとの約束に使った魔道具である。
「……なんでそんなに微妙なんだよ。
ていうか、俺、文字書けないし」
「え、えーと、じゃあ、これは?」
クリスが次に取り出したのは、きらびやかな石のついた鏡だった。
「なんだ、それ!?」
少年は今度は身を乗り出して興味を示した。
「これは明瞭の鏡といって、暗いところでも顔がはっきり見える鏡だよ」
「……なんか、地味」
少年はがっかりしたように項垂れる。
「えっと、じゃあ……」
「なぁ、この腕輪ってそんなに大事なものなのか?」
再びポケットを探り始めたクリスに少年は聞いた。
何か特別高価な道具かと思ったからだ。
「いや、そういうわけじゃないよ」
「は? じゃあ、なんで取り戻そうと必死なんだよ?」
予想していた答えと違ったので、少年は目を丸くする。
「その腕輪は制御具といって、魔族の魔力をコントロールしやすくするものなんだ」
「ふーん」
少年はいじくり回している腕輪を興味深げにじっと見る。
「そのコントロールするためにいくらか魔力を吸うんだけど、魔族以外の魔力の低い種族がつけると、吸われ過ぎて瀕死状態になることがあって……」
「返す」
少年はさっきまでの執着が嘘のように、クリスに制御具を突き出した。
クリスは目を丸くする。
「いいのかい?」
「さっさと取れよ! こんなあぶねーもん持っていたくねぇよ!」
少年の顔色は青く、小刻みにガタガタ震えていた。
クリスは素直に少年から制御具を受け取る。
少年はほっとして肩を撫で下ろした。
「じゃあ、この剣で勘弁してやるよ」
そう言って、少年は下に落ちた聖剣を拾おうとした。
「待って」
クリスが少年を止める。
「なんだよ」
「その剣は抜いた状態だと正当な持ち主以外は火傷するらしいんだ」
そう言って、クリスは少年に包帯に巻かれた手を見せた。
少年は素早く手を引っ込める。
「なんでそんなあぶねーもんばっか持っているんだよ!」
「いや、ちゃんと使えば危なくないよ」
とはいっても、クリスも聖剣に触れられないので、後ろを振り返ってヨハンを呼んだ。
ヨハンは聖剣を鞘に収めると、少年を睨む。
「お前、なんでこんなに盗みばっかりしているんだ?」
少年はハッと短く笑った。
「盗賊が盗みをして何が悪い」
クリスは目を丸くする。
「君も盗賊なのかい?」
少年はコクンと頷く。
「捨て子だった俺を頭が拾って育ててくれたんだ。俺は立派な盗賊になって頭に恩返しするんだ!」
少年は胸を張って答えた。
「……それで動物を使役して盗みを手伝っているのかい?」
「ああ。俺って昔からなんでか動物とかに好かれていてさ、試しに頼んでみたらやってくれたんだ! スゲーだろ!」
誇らしげに言う少年に、クリスとヨハンは顔を合わせた。
「……盗みが悪いことだって理解しているかい?」
クリスの質問に、少年は口を尖らせる。
「知ってっけどさー、俺たちは盗みしなけりゃ生活できねーもん。仕方なくね?」
「捕まったら、刑罰とかあるよ?」
「なら捕まんなきゃいいじゃん!
ていうかさー」
少年はクリスの方をジロリと見た。
「魔族って悪いことばっかりしているんだろ? そんな奴に言われたくないなぁ」
クリスが取り出したのは細かな模様の入った紙だった。
「何、この紙?」
「これは誓約の紙といって、ここに書いた約束を破ると、破った相手は一週間少し不幸になる紙だよ」
クリスがヨハンとの約束に使った魔道具である。
「……なんでそんなに微妙なんだよ。
ていうか、俺、文字書けないし」
「え、えーと、じゃあ、これは?」
クリスが次に取り出したのは、きらびやかな石のついた鏡だった。
「なんだ、それ!?」
少年は今度は身を乗り出して興味を示した。
「これは明瞭の鏡といって、暗いところでも顔がはっきり見える鏡だよ」
「……なんか、地味」
少年はがっかりしたように項垂れる。
「えっと、じゃあ……」
「なぁ、この腕輪ってそんなに大事なものなのか?」
再びポケットを探り始めたクリスに少年は聞いた。
何か特別高価な道具かと思ったからだ。
「いや、そういうわけじゃないよ」
「は? じゃあ、なんで取り戻そうと必死なんだよ?」
予想していた答えと違ったので、少年は目を丸くする。
「その腕輪は制御具といって、魔族の魔力をコントロールしやすくするものなんだ」
「ふーん」
少年はいじくり回している腕輪を興味深げにじっと見る。
「そのコントロールするためにいくらか魔力を吸うんだけど、魔族以外の魔力の低い種族がつけると、吸われ過ぎて瀕死状態になることがあって……」
「返す」
少年はさっきまでの執着が嘘のように、クリスに制御具を突き出した。
クリスは目を丸くする。
「いいのかい?」
「さっさと取れよ! こんなあぶねーもん持っていたくねぇよ!」
少年の顔色は青く、小刻みにガタガタ震えていた。
クリスは素直に少年から制御具を受け取る。
少年はほっとして肩を撫で下ろした。
「じゃあ、この剣で勘弁してやるよ」
そう言って、少年は下に落ちた聖剣を拾おうとした。
「待って」
クリスが少年を止める。
「なんだよ」
「その剣は抜いた状態だと正当な持ち主以外は火傷するらしいんだ」
そう言って、クリスは少年に包帯に巻かれた手を見せた。
少年は素早く手を引っ込める。
「なんでそんなあぶねーもんばっか持っているんだよ!」
「いや、ちゃんと使えば危なくないよ」
とはいっても、クリスも聖剣に触れられないので、後ろを振り返ってヨハンを呼んだ。
ヨハンは聖剣を鞘に収めると、少年を睨む。
「お前、なんでこんなに盗みばっかりしているんだ?」
少年はハッと短く笑った。
「盗賊が盗みをして何が悪い」
クリスは目を丸くする。
「君も盗賊なのかい?」
少年はコクンと頷く。
「捨て子だった俺を頭が拾って育ててくれたんだ。俺は立派な盗賊になって頭に恩返しするんだ!」
少年は胸を張って答えた。
「……それで動物を使役して盗みを手伝っているのかい?」
「ああ。俺って昔からなんでか動物とかに好かれていてさ、試しに頼んでみたらやってくれたんだ! スゲーだろ!」
誇らしげに言う少年に、クリスとヨハンは顔を合わせた。
「……盗みが悪いことだって理解しているかい?」
クリスの質問に、少年は口を尖らせる。
「知ってっけどさー、俺たちは盗みしなけりゃ生活できねーもん。仕方なくね?」
「捕まったら、刑罰とかあるよ?」
「なら捕まんなきゃいいじゃん!
ていうかさー」
少年はクリスの方をジロリと見た。
「魔族って悪いことばっかりしているんだろ? そんな奴に言われたくないなぁ」
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