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しおりを挟むレグルスは宿屋の外に出ると、人気のない場所まで行き、その場で隠匿魔法を解除する。
自分の姿を認識して貰えるようにすると、フードを深く被り直して少年に必要そうな物達を購入する為、町へと戻った。
あちこちで買い物をしていたら、気付けば辺りは夕闇に包まれ始めていた。
両手で抱えた衣類や食料、本等を落とさないように気をつけて抱え直すとレグルスは急いで宿屋へと戻る。
夕食はいらない、と伝えてしまっている。
適当にそこらの店で軽食を購入するとそれを合わせて宿屋へと戻ってくると、宿屋では夕食の時間になっていたらしく、ルルが忙しく動き回っていた。
レグルスの姿に気付くと、慌てたようにルルが走り寄ってくる。
「お兄さんっ、今日夕飯いらない、って聞いてたから用意してないよ⋯⋯!何か簡単に用意するかい?」
「ああ、大丈夫だ。もう軽く夕飯は済ませて来たから気にしなくていい」
ルルの頭をくしゃり、と撫でてやるとルルは「そうかい?」と言いながら、頭を撫でられるのが嬉しいのだろうか。瞳を細めてレグルスの手に頭を寄せている。
「もう一度外出する予定だから、いつものサービスの果実酒も今日は大丈夫だからな」
「うん、分かったよ。出かけるなら気を付けてね!」
ルルとの軽い会話を終えると、レグルスは自室へと戻るために階段を上っていく。
自室の前に辿り着くと、鍵を開けて室内へと入った。
夕闇に飲み込まれ、外からの光が差し込まない室内は暗闇に覆われていて、レグルスは室内の証明をつけた。
パチン、と音が鳴り室内が薄ぼんやりと明るくなるとレグルスはテーブルに買い込んだ荷物を置いて吐息を零すと肩をぐるぐると回す。
一つ一つは軽くても、長時間持ち歩いていたので肩が凝ってしまったのだろう。
レグルスはベッドへと視線を向けると、そこには少年が流石に寝息を零しながらぐっすりと眠っている。
「大分顔色が良くなった、か?」
少年に近寄ると、そっと少年の顔を覗き込む。
この部屋に来た時よりも更に顔色が良くなってきている。
あの場所では満足に睡眠も取れていなかったのだろう。レグルスは安心すると、少年の体に自分の手のひらを翳すと回復魔法を施していく。
食べ物を受け付けられるくらい内臓を回復してしまおう、と決めるとレグルスは放出する自分の魔力の量を更に多くした。
「──ん?」
回復魔法を掛け終わって程なくして、少年がベッドの上で身動ぎしている。
内臓の修復が済んだ為だろうか、少年のお腹からきゅるる、と空腹の時に鳴る虫の音が聞こえて来てレグルスは視線を落としていた本から少年の方へと視線を向けた。
「ああ、起きたか?」
「あ、お兄さん」
本をテーブルの上に閉じて置くと、腰を上げて少年が上体を起こしたベッドへと近寄る。
「······よし、目の窪みも改善されてるな。腹が減ったか?食べられそうか?」
「あ、はいっ今なら食べられそうです!」
少年が信じられない、と言うように自身のお腹を抑えるとキラキラと瞳を輝かせて嬉しそうに笑う。
レグルスは安堵の溜息を零すと、購入した荷物の中からじゃがいもをとろとろになるまで煮込んでトマトの味付けがされたスープを取り出すと、少年に手渡した。渡す時に冷めてしまったスープを再度火の魔法で温め直してから渡す。
嬉しそうに笑顔を見せる少年に、レグルスはスプーンを渡すと、唇を開いた。
「これを飲んで、まだ眠れそうになかったらここにある本でも読んでてくれ。眠くなったら好きに寝てくれて構わない」
「ありがとうございます、でもお兄さんは?」
「俺はこれから外出するから気にしなくて大丈夫だ。······誰か入ってきても声を出さず、じっとしてるんだぞ?」
レグルスの言葉に少年はしっかりと頷くと、色々とありがとうございます。と言葉を返す。
レグルスは気にするな、と言うように少年の頭をぐしゃり、と撫でてやると外出する為、室内に置いておいた自分の装備品を装着していく。
シザーバッグに丈の長いフードの付いたロングコート、腕に着けている物の位置を微調整すると、昼間の領主のいる邸へと侵入する為自室の扉から出ていこうと足を向ける。
不思議そうにレグルスを見つめる少年に、レグルスは「気にせず寝ていろ」声をかけると静かに扉から出て行った。
森の建物から潰すか、それとも領主の邸から潰すか。
レグルスは自身に再度隠匿魔法と身体強化の魔法をかけると、領主の邸へ向かう為に駆け出した。
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