「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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二章

15話

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 侯爵家の、新たな当主就任記念のパーティー当日は、あっという間にやって来た。

 レックスはあれから伯爵家の支援を受け、侯爵家として恥じない規模のパーティーを準備した。
 侯爵家を支援したハーツラビュル伯爵家は、ホプリエル侯爵家の「盟友」としてそのパーティーに招待された。

 そして、その招待状はもちろんレックスの妹であるウェンディにも届いた。

 ヴァンのハーツラビュル伯爵邸から、ホプリエル侯爵邸までは馬車でほんの少し。
 だが、侯爵邸に続く大通りには招待された多くの貴族の馬車がずらり、と並んでおり中々進まない。

「歩いて向かった方が早いんじゃないか」

 ぼそり、と不機嫌そうな声がウェンディとヴァンの目の前から聞こえ、二人は苦笑いを浮かべる。
 目の前には、一人の男性──。
 ウェンディの魔法を見てくれている、ハイエルフほヒュフーストがぶすっと座っていた。
 彼は、普段のゆったりとした衣服ではなく、夜会用の煌びやかな衣装を身につけている。

 ウェンディの魔法の師匠、と聞き、レックスは彼にも招待状を送っていたのだ。
 人と関わるのが嫌いなヒュフーストだから、ウェンディはヒュフーストがこの招待を断るのではないか、と思っていたのだが、意外にもヒュフーストは二つ返事で招待に応じてくれたのだった。

「ヒュフースト様。あと少しですから、もう少しだけ辛抱してください」

 ウェンディの言葉に、ヒュフーストは不機嫌さを隠しもせず、背もたれに体を預けた。

「全く……人間──いや、貴族と言うのは面倒な性格をしている。見栄えを気にして時間を無駄にしていると言う事に気付いていないのか? 人間の時間は有限だろうに」
「貴族が見栄を張るのはそれだけの理由があるのです。国民の目がありますからね……。みっともない姿を見せてしまえば、王家に従う我々貴族も軽んじられる……」

 ヴァンの言葉に、ヒュフーストはふんと鼻で笑う。

「今の王家に、求心力など最早無いだろうに。醜い心に塗れ、昔のような崇高な心を持っている王族など、最早存在しないだろう」

 ヒュフーストは、遥か昔からこの世界に生きている。
 そのため、この国の昔の王族を知っているのだろう。
 ヒュフーストの顔はどこか寂しそうで。だけど悔しそうに唇を噛んでいた。



 馬車内の空気が少し気まずいまま、ウェンディ達が乗る馬車が、侯爵邸に到着した。

「ウェンディ、手を」
「ありがとうヴァン」

 先に馬車から降りたヴァンが、ウェンディに向かって手を差し出す。
 その手を取って、ウェンディが馬車の扉から姿を現した瞬間。
 周囲がざわり、とざわめいた。

 みな、ハーツラビュル伯爵家の馬車が侯爵家にやって来た時から、ウェンディが馬車から降りてくるのでは、と待ちわびていたのだ。
 レックスとウェンディは、兄妹だ。
 その事は、国中の貴族であれば誰でも知っている。
 そして、今回レックスがウェンディを個人的にパーティーに招待した、と言う噂も出回っていたのだ。
 どこからそんな情報を入手しているのかは分からないが、皆、ウェンディが現れるのを待ちわびていたのだ。

 そして、ヴァンの手を借りて馬車から降りてくるウェンディを目にした貴族達は、男女関係なく、息を呑んだ──。

 侯爵家に設置されている照明の光を受け、まるでウェンディがキラキラと輝いているように見える。
 ふわり、と舞うウェンディの金色の髪がまるで夜空に掛かるヴェールのように幻想的だった。


 そして、誰が呟いたか分からないが。
 その幻想的な光景と。
 ウェンディの美しさに目を奪われた人が、呟いた。


「まるで……妖精のようだ……」
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