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蛇男 出会編
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「なーんかさ。あの坊主の話聞いてると、眠くなるのは俺だけか?」
「坊主とか言うな。法師様だ。」
法師との情報共有が終わり、蛇男の巣の場所も地図にて確認した2人は陽が傾きかけている町を歩いていた。
その時には術も解き、従者は商人の姿へ戻る。
あと数時間後には、この風景も夕陽に染まることだろう。
「なぁなぁ天定。女の俺って、そんなに美人?」
「……は?」
突然質問を投げかけてくる永海に、天定は豆鉄砲を食らったかのように目を丸くする。
「だってさ、あの主も屋敷内の野郎も俺のこと"美しい"と色々と言ってたんだぜ?あの時は良い気してたけどよ、天定から見たらどうなんだろうなーって。」
「…………。」
ここで素直に"綺麗だよ"とか言えたら、苦労しない天定である。
「そうだな…。そう思うのは人それぞれ、だろ?」
「そっか。」
永海の表情が一瞬だけ曇ったことに、天定は気づいていない。
先日は自分のせいで天定を固まらせてしまったが、その事と自分の容姿とは無関係だったのかと永海は感じた。
2人が並んで歩いている町の雰囲気は、打って変わって静かである。
法師が教えてくれた言葉に現実味を感じ、天定の表情が少し険しいものになった。
「思っていた以上に事態は深刻だな。」
理由は大きく分けて、二つある。
一つは、蛇の化物の巣は分かっているものの洞窟内の何処にいるかまでは分かっていないこと。
もう一つは、蛇を操る元凶ーーー法師は蛇男と言っていたが、蛇男を討伐するのに警備隊士の人数が不足していること。
一度総力を上げて洞窟内へ入っていった際、蛇に噛まれたことにより体内に毒が回ってしまったことで、多くのものが亡くなってしまった。
現在は、戦闘経験の浅い者が過半数を占めている状況なのだとか。
「……俺らだけでやっちゃう?経験の無い奴らがたくさんいたところで、邪魔になるだけだ。」
「確かにそうなんだが、主様と約束をしただろう。俺たちは化物の居場所を突き止めるだけだ。」
「んー……。」
真面目というか頑固というか、一度交わした約束は必ず果たそうとする主に従者はつまらないと言わんばかりに瞳を細めてそっぽ向く。
天定に黙って建物の物陰に隠れたと思いきや、数秒後に戻ってくる。
影纏の術で、女性の姿に変身して。
そういえばどこから調達してきたのか謎だった、屋敷に行った時とは別の女性物の着物にちゃっかりと着替えている。
「ねぇ、天定?」
突然天定の腕にしがみつき、女性特有の胸の柔らかな膨らみを押し付ける。
身長差から見上げる形になってしまうのは仕方ない。
仕方ないのだが、不意打ちで腕に当たるそれに天定は一気に顔を赤くした。
「お、おい永海!ふざけてる場合か!?」
「ふざけてなんか無いけど?天定が意識しすぎなんじゃなーい?」
少しでも肘を曲げようにも意識せざるを得ず、天定は硬直してしまう。
着物を着る時に押しつぶされる胸が、着装の上からでも分かるほど柔らかい。
これがもし着物を脱いだらと想像してしまったが、必死に頭を振って冷静になろうと努める。
「耳まで真っ赤にしちゃって、か~わいい~。」
この明るい時間帯から何をしているのだろうか。
天定の恥ずかしさを突いてきて永海は一人楽しんでいる様子に対し、堅物の男はワナワナと体を小刻みに振るわせている。
「い、良い加減に…し、し…………。」
「え?何ーー?聞こえなーい。」
側から見たら微笑ましい男女のやり取りなのかもしれないが、その様子を物陰から隠れて見ている者が一人いる。
その者は口を閉じたまま、細長い舌を上下に細かくうねらせた。
「美味そうな女。」
昨日、町娘を一人捕まえ、捕食したばかりのこの者。
緑の着物を着た男に密着している紫の髪の女から漂う甘い匂いに、ついつい口角が上がる。
まさかこの時に永海がターゲットにされてしまったとは、2人とも気が付いていない。
何か気配を感じて永海が振り返るものの、その時にはその気配は跡形もなく消えていた。
「坊主とか言うな。法師様だ。」
法師との情報共有が終わり、蛇男の巣の場所も地図にて確認した2人は陽が傾きかけている町を歩いていた。
その時には術も解き、従者は商人の姿へ戻る。
あと数時間後には、この風景も夕陽に染まることだろう。
「なぁなぁ天定。女の俺って、そんなに美人?」
「……は?」
突然質問を投げかけてくる永海に、天定は豆鉄砲を食らったかのように目を丸くする。
「だってさ、あの主も屋敷内の野郎も俺のこと"美しい"と色々と言ってたんだぜ?あの時は良い気してたけどよ、天定から見たらどうなんだろうなーって。」
「…………。」
ここで素直に"綺麗だよ"とか言えたら、苦労しない天定である。
「そうだな…。そう思うのは人それぞれ、だろ?」
「そっか。」
永海の表情が一瞬だけ曇ったことに、天定は気づいていない。
先日は自分のせいで天定を固まらせてしまったが、その事と自分の容姿とは無関係だったのかと永海は感じた。
2人が並んで歩いている町の雰囲気は、打って変わって静かである。
法師が教えてくれた言葉に現実味を感じ、天定の表情が少し険しいものになった。
「思っていた以上に事態は深刻だな。」
理由は大きく分けて、二つある。
一つは、蛇の化物の巣は分かっているものの洞窟内の何処にいるかまでは分かっていないこと。
もう一つは、蛇を操る元凶ーーー法師は蛇男と言っていたが、蛇男を討伐するのに警備隊士の人数が不足していること。
一度総力を上げて洞窟内へ入っていった際、蛇に噛まれたことにより体内に毒が回ってしまったことで、多くのものが亡くなってしまった。
現在は、戦闘経験の浅い者が過半数を占めている状況なのだとか。
「……俺らだけでやっちゃう?経験の無い奴らがたくさんいたところで、邪魔になるだけだ。」
「確かにそうなんだが、主様と約束をしただろう。俺たちは化物の居場所を突き止めるだけだ。」
「んー……。」
真面目というか頑固というか、一度交わした約束は必ず果たそうとする主に従者はつまらないと言わんばかりに瞳を細めてそっぽ向く。
天定に黙って建物の物陰に隠れたと思いきや、数秒後に戻ってくる。
影纏の術で、女性の姿に変身して。
そういえばどこから調達してきたのか謎だった、屋敷に行った時とは別の女性物の着物にちゃっかりと着替えている。
「ねぇ、天定?」
突然天定の腕にしがみつき、女性特有の胸の柔らかな膨らみを押し付ける。
身長差から見上げる形になってしまうのは仕方ない。
仕方ないのだが、不意打ちで腕に当たるそれに天定は一気に顔を赤くした。
「お、おい永海!ふざけてる場合か!?」
「ふざけてなんか無いけど?天定が意識しすぎなんじゃなーい?」
少しでも肘を曲げようにも意識せざるを得ず、天定は硬直してしまう。
着物を着る時に押しつぶされる胸が、着装の上からでも分かるほど柔らかい。
これがもし着物を脱いだらと想像してしまったが、必死に頭を振って冷静になろうと努める。
「耳まで真っ赤にしちゃって、か~わいい~。」
この明るい時間帯から何をしているのだろうか。
天定の恥ずかしさを突いてきて永海は一人楽しんでいる様子に対し、堅物の男はワナワナと体を小刻みに振るわせている。
「い、良い加減に…し、し…………。」
「え?何ーー?聞こえなーい。」
側から見たら微笑ましい男女のやり取りなのかもしれないが、その様子を物陰から隠れて見ている者が一人いる。
その者は口を閉じたまま、細長い舌を上下に細かくうねらせた。
「美味そうな女。」
昨日、町娘を一人捕まえ、捕食したばかりのこの者。
緑の着物を着た男に密着している紫の髪の女から漂う甘い匂いに、ついつい口角が上がる。
まさかこの時に永海がターゲットにされてしまったとは、2人とも気が付いていない。
何か気配を感じて永海が振り返るものの、その時にはその気配は跡形もなく消えていた。
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