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呪樹に囚われた従者
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"そんな…ありえない…ありえない!人間が、そんな……!まだ意識があるなんて……!?"
商人だった男はこの言葉に、もしやと繭状の蔓を見る。
何かの鋭い音が聞こえ、形状が歪み、それらが崩れて地に落ちていく中から姿を見せたのは、自分の足でしっかりと立つ天定だった。
しかも刀を力強く握りしめていて、その目つきはまるで別人のよう。
「言ったはずだ。俺の従者に手を出した事、後悔するがいい。」
キッと呪樹を真っ向から睨みつける。
そして両手で刀を柄を持つと静かに構えた。
"殺してやる!"
呪樹は蔓でなく、無数の触手を使って天定に襲いかかる。
しかし天定が刀を一振りしただけで、触手たちは一度に大量に斬られた。
尋常では無い身のこなしで瞬く間に距離を詰め、跳躍しながら刀を振るい次々と薙ぎ倒す。
体を翻して回転させ、その勢いをもって永海のほんの数センチ上の幹を一振りで真っ二つに斬り倒した。
拘束力が弱まり緩やかになったところで永海への口内に入っている物を引き抜き、その手を彼の後頭部へ回して引き寄せる。
天定が幹を足場に後方へ跳躍すると、永海の身体は完全に解放された。
一旦距離を取り、天定は永海を抱えたまま片膝を地につける。
横目で彼が弱々しく息をしている事を確認してから、静かに詫びた。
「永海、すまない。よく耐えてくれた。」
刀を地に刺して手を離し、上の着物を脱ぐと永海に羽織らせる。
髪の先から足のつま先まで全身が粘液にまみれ、意識が朦朧としているのかぐったりとしている永海は、薄く開いていた瞼を力なく閉じた。
天定が永海を左肩に担ぎ上げて対の手で刀を持つと、まだ諦めきれていない触手が地から生えてうねっている。
"彼は私のものよ…!返しなさい!今だったら貴方だけは見逃してあげるわ!"
「断る。二度も言ったはずだ。」
ーーーー後悔するがいい、と。
本気を出した天定を前に、呪樹は全く叶わなかった。
呪樹は永海を取り返そうと、無数の触手で天定に襲いかかる。
が、天定の身のこなしと刀捌きにより触手は次々と斬られていくばかり。
その芯の宿る強い眼差しは呪樹をしっかりと捉え、天定は強く地を蹴り、再び間合いを詰めた。
その気迫に圧され始めた呪樹は地中から根を生やし、近づいてくる天定を今以上に近寄らせまいとする。
「遅い。」
触手の攻撃を瞬時に斬り、空高く跳躍すると身を翻す。
振り上げた刀を素早く振り下ろし、切り株を縦に真っ二つに斬り裂いた。
"ーーーーーーーーーー!!"
高さからの衝撃も加わったことで、斬撃は呪樹の核となる部分である根の一番奥にまで響き渡った。
音を立てて亀裂が入り、裂け、そして塵と化して風に乗り消えていく。
触手たちも本体同様、エネルギー源を失い地に落ち横たわっていたが塵と化して順番に消えていった。
そして、この男もーーー。
「あぁ……呪……樹…さ……。」
商人は既に屍人であり、呪樹から与えられるエネルギーで動けていた。
精気の源が消えた事により、男も同様に消えてしまう。
彼の様子を見送る天定の表情はとこか寂しげで、申し訳なさを滲ませていた。
一気に静まり返る、森の中。
天定は刀を鞘に納め、左肩に担ぐ永海をそっと地に下ろす。
両手で彼を抱きしめた天定は、小さな声でもう一度、永海に謝った。
その後、反動が天定を襲う。
全身の力が入らず、意識が朦朧としてきた。
この状態になってしまうと、天定にはどうすることもできない。
そのまま天定は、意識を失った。
街外れから女性の叫び声のようなものを聞いて駆けつけてくれた住民数名により、倒れていた天定と永海の2人は連泊している商人だった男の家へと運び込まれる。
遠くの空がほんのりと明るくなる、夜明け前の事だった。
商人だった男はこの言葉に、もしやと繭状の蔓を見る。
何かの鋭い音が聞こえ、形状が歪み、それらが崩れて地に落ちていく中から姿を見せたのは、自分の足でしっかりと立つ天定だった。
しかも刀を力強く握りしめていて、その目つきはまるで別人のよう。
「言ったはずだ。俺の従者に手を出した事、後悔するがいい。」
キッと呪樹を真っ向から睨みつける。
そして両手で刀を柄を持つと静かに構えた。
"殺してやる!"
呪樹は蔓でなく、無数の触手を使って天定に襲いかかる。
しかし天定が刀を一振りしただけで、触手たちは一度に大量に斬られた。
尋常では無い身のこなしで瞬く間に距離を詰め、跳躍しながら刀を振るい次々と薙ぎ倒す。
体を翻して回転させ、その勢いをもって永海のほんの数センチ上の幹を一振りで真っ二つに斬り倒した。
拘束力が弱まり緩やかになったところで永海への口内に入っている物を引き抜き、その手を彼の後頭部へ回して引き寄せる。
天定が幹を足場に後方へ跳躍すると、永海の身体は完全に解放された。
一旦距離を取り、天定は永海を抱えたまま片膝を地につける。
横目で彼が弱々しく息をしている事を確認してから、静かに詫びた。
「永海、すまない。よく耐えてくれた。」
刀を地に刺して手を離し、上の着物を脱ぐと永海に羽織らせる。
髪の先から足のつま先まで全身が粘液にまみれ、意識が朦朧としているのかぐったりとしている永海は、薄く開いていた瞼を力なく閉じた。
天定が永海を左肩に担ぎ上げて対の手で刀を持つと、まだ諦めきれていない触手が地から生えてうねっている。
"彼は私のものよ…!返しなさい!今だったら貴方だけは見逃してあげるわ!"
「断る。二度も言ったはずだ。」
ーーーー後悔するがいい、と。
本気を出した天定を前に、呪樹は全く叶わなかった。
呪樹は永海を取り返そうと、無数の触手で天定に襲いかかる。
が、天定の身のこなしと刀捌きにより触手は次々と斬られていくばかり。
その芯の宿る強い眼差しは呪樹をしっかりと捉え、天定は強く地を蹴り、再び間合いを詰めた。
その気迫に圧され始めた呪樹は地中から根を生やし、近づいてくる天定を今以上に近寄らせまいとする。
「遅い。」
触手の攻撃を瞬時に斬り、空高く跳躍すると身を翻す。
振り上げた刀を素早く振り下ろし、切り株を縦に真っ二つに斬り裂いた。
"ーーーーーーーーーー!!"
高さからの衝撃も加わったことで、斬撃は呪樹の核となる部分である根の一番奥にまで響き渡った。
音を立てて亀裂が入り、裂け、そして塵と化して風に乗り消えていく。
触手たちも本体同様、エネルギー源を失い地に落ち横たわっていたが塵と化して順番に消えていった。
そして、この男もーーー。
「あぁ……呪……樹…さ……。」
商人は既に屍人であり、呪樹から与えられるエネルギーで動けていた。
精気の源が消えた事により、男も同様に消えてしまう。
彼の様子を見送る天定の表情はとこか寂しげで、申し訳なさを滲ませていた。
一気に静まり返る、森の中。
天定は刀を鞘に納め、左肩に担ぐ永海をそっと地に下ろす。
両手で彼を抱きしめた天定は、小さな声でもう一度、永海に謝った。
その後、反動が天定を襲う。
全身の力が入らず、意識が朦朧としてきた。
この状態になってしまうと、天定にはどうすることもできない。
そのまま天定は、意識を失った。
街外れから女性の叫び声のようなものを聞いて駆けつけてくれた住民数名により、倒れていた天定と永海の2人は連泊している商人だった男の家へと運び込まれる。
遠くの空がほんのりと明るくなる、夜明け前の事だった。
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