黒鱗病の特別

汐凪吟

文字の大きさ
3 / 3

一章 あれ?治ってる?

しおりを挟む
「おいしかった。ありがとう、霧夜」
 最近食よくがなくてぜんぜんたべれなかったのに、ぜんぶ、たべれた。霧夜のおかげだなぁ。痛いのもなくなったし、肌のくろいところもうすくなった。
「別にこのくらいは…。むしろお前はいつも強がるんだから病気の時くらい甘えてくれ。強がらないでくれ。生きてる心地がしないから」
 霧夜の声、ふるえてる。ごめん。ごめんね、霧夜。
「でも、私は霧夜に弱ってるのを見せたくなかったの。きれいなままの思い出でよかったんだよ」
 つらくて、くるしかったけど霧夜に見せるさいごはきれいなままで…。
 「お前も俺に村の奴らと同じように嘘をつくのか?晴華。黒鱗病は治ったんだから偽る必要はないだろ。”まだ”最後じゃない。…始まってすらいない」
 霧夜?もうはじまってるよ。

「晴華ー、霧夜くん、ご飯はたべれた?入るわよ」
「お母さん、ご飯ぜんぶたべれたよ。おいしかった」
 「全部食べれたの。そう、良かった。それにしても昨日までほとんど食べれなかったのに…。あ、やっぱり霧夜くんがいるからかしら?」
「なんでかは秘密です」
 あ、霧夜がわるいかお?してる。霧夜がいるといつものことがキラキラするなぁ。
「ねぇ、お母さん。裏山のいずみで水浴びしてきていい?からだがベタベタして気持ちわるいよ」
「でも晴華、病気は大丈夫なの?うごけるの?」
「うん、霧夜のおかげでだいじょぶになったからへいき」
「でも……」
 だいじょうぶだって言ってるのに!
「俺がついていきますから大丈夫です。これでもいざとなったら晴華くらい運んでみますよ」
 ん?私くらい?そんなに軽くないはずなんだけど…。
「うーん、まぁ霧夜くんがついてるなら安心ね。気分転換にもなるだろうし気をつけて行ってくるのよ。安全第一に」
『はーい』
「晴華は私がやるから霧夜くんは一度家に戻って濡れた時用の着替えとかとってきたらどう?」
「分かりました。ちょっと離れます」
 お母さん、霧夜がぬれるぜんてい...。まぁ、いつもそんな感じだからびしょびしょで帰ってくるよりはいいのかな。それにしてもお母さんからの信用がない!なんにも変なことしてないのに。バタンとドアの閉まる音がする。なんだか部屋のなかがあつくなった。
「ほら、晴華。起きられそう?体は大丈夫?」
 お母さんに支えられながらゆっくりからだをおこす。
「もう大丈夫だよ、霧夜がなおしてくれて楽になったから」
「黒鱗病を…?でも、不思議な霧夜くんならありえるのかしら」
「ありえるよ、だって霧夜だもん!」
 ほんとに霧夜さまさまだなぁ。なんでもできる。…ありがたいなぁ。そう思うとなみだがでてきた。霧夜がいなかったらいま、こうやってたのしめなかったとくるしんでるとおもうと怖かった。今ごろになって怖くなった。
「…ほんとに霧夜さまさまだよね」
「晴華、泣くことは許されないわよ。一族の約束を破るのはあってはならないわ。笑いなさい、最後まで」
「ごめんなさい、お母さま」
「ほら、はやく準備する!霧夜くんを病気だからっていって待たせるんじゃない!」
「はい、分かりました」
 お母さまの言うことは絶対。従わなきゃ…。ただえさえうごかない体をむりやりうごかす。ずっと寝ていたせいで体がかたまっている。それでもなんとか一人でよういを終えることができた。
「晴華?用意できたか?入るぞ」
「うん、もうできたよ、霧夜」
「ごめんね、霧夜くん。待たせちゃって」
「いえ、大丈夫です」
 あ、お母さまじゃなくなってるいつもの優しいお母さんだ。よかった…。
「そろそろ行こう、晴華」
「じゃあ、お母さん行ってきます!」
「病気だってことをわすれないで安全に気をつけていくのよ」
「はーい、わかってる!」
はやくいずみにつかないかなぁ。霧夜に支えてもらいながら私はいずみへとゆっくり足をすすめていった。
「霧夜、ありがとうね。守ってくれて」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...