【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第5章 学園編☆入学

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いよいよ。
この日が来た!前世の記憶とか思い出してから待ちに待ってた入学式のイベントの日だ。


それなのに、朝から少しだけ熱が出てしまった。以前無理して散々迷惑をかけた事がある。この感じだと、熱が上がるはずだから。
大切な出会いを邪魔したくない。

殿下の安全の為にフェルは、護衛に行かせた。その為に寮も貴賓エリアに入れてもらったのに、僕に付いてたらダメだ。
本当に熱が上がった時は、ディーネ様を呼べば大丈夫だから。そう言って、シス兄様達を見送った。


今日の入学式後、青空の青の世界でピンク色のライラの花びらが舞散る。幻想的な景色の中、2人が出会う。
──殿下が恋をする瞬間だ。




朝は、晴れてたと思う。
徐々に熱が上がってきたからディーネ様を呼んで、今は手を繋いでもらっている。

もう、入学式は終わったかな?
朦朧とした頭で、考えるけど、ちっともまとまらなくて。

「ルナ苦しいか?今日は良くないな。イアソ様とノームに薬草を頼んで来るから。少しだけ、1人で待てるか?」

「─うん」

ディーネ様が姿を消した。

大丈夫。大丈夫。
すぐ、戻って来てくれる。

怖くない。大丈夫。
うつら、うつらしながら、皆が寮に戻って来るのを待つ。

どの位寝てたか分からない。
ほんの少しかも知れない。

雨音で意識がはっきりして来た。

──外が暗い。

ゴロゴロと嫌な響きが微かに聞こえ始めた。

「う、そ」
やだ。まって、心臓がバクバクし始める。

「ぼ、防音の、魔術を」
ベッドから身体を起こそうとしても、支えきれない。

閃光が走る。
すぐに、落雷のバリバリとした音と振動が起きる。
ダメだ…音が聞こえてからじゃ、無理。

目の前が赤く染まる。

ブランケットにうずくまり、自身を抱きしめる。
震えが止まらない。

お母さんの手が……
叩かれる!

怖い。

誰か──ディーネ様、早く戻って来て。

また、閃光が走る。

だめ、いや。

バリバリと裂けるような音、
ドォォォォォォォォンと落雷と分かる轟音。
「いやぁぁぁぁぁぁ」
震えが止まらない、助けて──



バン!大きな音がした。
内側のドアが、開いた?
誰か寝室に入ってきたの?




誰?

お、かあ、さん──?






怖い。怖い。怖い。
「だれ、か」
逃げようと、した。

ブランケットごと抱き込まれる。



「ルナ、大丈夫だ」





この声は、レグルス殿下?

「あ、入学式は?どう……」

布地の隙間から閃光が見えた。


怖い──落雷の音が、また。


ギュッと抱き締められて、背中をさすられる。

「防音をかけた。落雷の音は聞こえないし、お前の泣き声も漏れないから。泣いていいぞ?カーテンもしっかり閉めたぞ。部屋も明るくしたから、雷の光も分からないはずだ」

ブランケットを頭からスッポリ被ったまま、抱き締められている。
だからそのまま、質問をする。
「あ、どうして?」

「式の後、天候が悪化したから解散になった。シリウスは、アルデバラン先生と護衛関係の打ち合わせをしている。
お前が1人でいるとか思わないからな。
俺は、フェルとソレイユと先に戻って来たんだ。
念のためシリウスの部屋を抜けて見に来たんだ。
叫び声がするし。怖かっただろう?」

ぼろぼろと涙がこぼれていく。

「ルナ、熱のせいで防音が間に合わなかったんだろ?もう、怖くないからな」

えぐえぐと、泣きながら抱きしめられている。

殿下に甘えちゃダメだって思うのに。1人にされたくない。
雨なら、あの出会いは別の日になる?邪魔したのかな?分からない。

けど──

被っていたブランケットから、そろそろと頭を出した。顔を上げても視界がぼやけて殿下の顔が見えない。
「レグルス様?」
どうしたんだろう?反応がない。
涙で前がよく見えない。殿下も考え事でもしているのか、ぴくりともしない。
とりあえず涙を拭こうと長袖のシャツで擦ろうとしたら、腕を掴まれた。
表情は見えないけど、動きが止まってた殿下が、ハンカチを取り出してくれたみたいで僕の顔を優しく拭いてくれた。


「──まだ、熱があるから横になった方がいい」
涙を拭かれ、前髪をかき上げられたら、優しい顔をが見えた。
ゆっくりとベッドに寝かされる。
殿下と一緒に来ただろうフェルが、横に来てすりすりしている。

「フェルが来たからもう大丈夫です。殿下は、を済ませないと……」

「今、優先するのはお前だ」

また、熱が上がってきたみたい。
熱い。苦しい。

「フェル?」
首元が冷んやりする。良かった。

「ごめんなさ、い。ディーネ様が薬を探しに……」

繋いだ手から、冷んやりとした温度を感じる。

殿下?それともディーネ様?

熱を下げてくれる為の手だから、冷たいのに。だけど、気持ちが温められて、ゆっくりと意識が沈んで行った。




◇◇◇◇



「あの時、精霊と思っていたのは、ルナだったんだな。7年、か。
俺の呪いを受け取ったのに責めもしない。一生懸命、魔術を習ったり、ちょこまかと動いてよく笑ってて。だんだん遠慮が無くなってフォレスト領だと身分も気にならなくてお前の側は居心地がよくて。
それにトラウマも、必死に克服しようとしてたな。
同い年なのに小さくて、実の弟がいるのに、あいつより弟みたいで、本当に可愛くてしょうがなくて。シリウスが堂々とお前に優しくするのが羨ましくて、俺が好きなのはあの子だと思うようにずっとして来たんだ。

メガネは、魔道具か……
ずっと、隠してきたんだな」


空間が揺れた。

「ウンディーネ様、ルナをお願いします」





いつ、殿下とディーネ様が交代したのか分からない。
熱のせいで色々曖昧だったけど、殿下が駆けつけてくれた事が嬉しかった。








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