16 / 37
2.ループしました
6
しおりを挟む
表情筋の死んでる者同士だったのに。
「メイが……笑った」
今はそんな場合ではないのに、年上の美形に弱すぎる。
(美形の笑顔、可愛すぎる)
本当にすぐに戻ってきたメイナードは、ブランケットを二枚抱えていた。
「寒そうなので。これを」
そう言って、一枚は予備なのか空いているソファにかけていた。
ジェラルドを立たせて、ブランケットを肩にかけて、全身を包み込んできた。そのまま横抱きかかえられて、メイナードの膝の上に乗せられままソファ座った。
ジェラルドは十三歳だから、メイナードは十五歳だ。
なんで、こんなにスマートに抱っこされているんだろう?
BLの世界だから、BL補正が入るのかも。
なら、勘違いしてはいけない。
ブランケットを巻かれているので暖かい。それ以上にメイナードの腕の中というシチュエーションに心臓が煩く、やっぱり頬が熱くなってしまう。
「ジェラルド様が、落ち着くまでこうしていてもいいですか?」
きっと下心なんてなくて、本当に優しさで包んでくれているのだ。この世界では悪役だから、ずっと嫌われてる。
父上やメイナードが、いなければもっと心が折れていたに違いない。
ゲーム内のヴィオレット侯爵家が、ジェラルドに対して、酷い仕打ちをしていたようなエピソードはなかった。
特に嫌われるのは、学園生活の中で関わる人たちと王家と攻略対象者からだ。主人公のライラックが登場するのも、学園からだ。
クリス殿下との交流から、性格の悪さが顔に出ていると言われ続けた。それが広まって今に至っている。
無駄に傷つけられてきたジェラルドの心は、メイナードの腕の中にいることに安心してしまう。
彼は従者だから恋愛は駄目だ。強制して縛ることになったらいやだ。
そんなのは主従関係でしかなくて、愛されるわけではないのだから。
それでも今だけ、十三歳の今だけなら甘えても許されるのではないか? そんな欲がわいてしまった時、メイナードがあの日のことを話始めた。
「ジェラルド様が、刺されてしまったところを見ました」
あの光景を見たのなら、その後ライラックはどうしたんだろう? 本当に正当防衛が成立してしまったとしたら?
一体どのタイミングで、ここに戻ってきたのだろう?
(ヴィオレット侯爵家が取り潰されたんじゃ……? 父上がまさか処刑されたとか?)
「ジェラルド様。顔色が悪いです。この話は、また今度にしまょう」
「メイナードが知ってること教えて!僕が刺されたあとどうなったの? でも、今の僕はここにいるから……世界が別になった? ヴィオレット侯爵家は? 父上は……処刑とかされてないよね!? 僕のせいで、皆が、酷いことにっ」
僕が悪役だから……だ。
この世界の父上だけは、唯一の味方だった。陽斗の父親と違って、大切にしてもらっていたんだ。
ジェラルドせいで……巻き込んだ? 皆……は? 無事?
息が苦しくて、空気を取り込もうとしても上手くいかない。視界が定まらなくて、涙で滲む。酸欠のようになっていく。水中にでも沈められていくようだった。
───いやだ。だれか、たすけて。
「大丈夫。ゆっくり。ゆっくり息を吐いてください」
───息を吐く?
背中を優しくさすられて、メイナードの胸に耳が押し付けられる。
「俺の心臓の音が聞こえますか?」
ゲームの中じゃない、ちゃんと彼は生きていている。ジェラルドもヴィオレット侯爵も生きている。今はまだ失ってなんかいない。
「上手です。傍にいますから、数えてる間ゆっくりと長く吐いて。それから……」
メイナードが言う通りに、カウント数に合わせて呼吸を吸ったり吐いたりしていく。
「少しこのまま、目をつぶってください。落ち着いたら、きちんと話しますから」
「う……ん」
メイナードの心地の良い体温と心音によって、ジェラルドはそのまま身を預けた。
「メイが……笑った」
今はそんな場合ではないのに、年上の美形に弱すぎる。
(美形の笑顔、可愛すぎる)
本当にすぐに戻ってきたメイナードは、ブランケットを二枚抱えていた。
「寒そうなので。これを」
そう言って、一枚は予備なのか空いているソファにかけていた。
ジェラルドを立たせて、ブランケットを肩にかけて、全身を包み込んできた。そのまま横抱きかかえられて、メイナードの膝の上に乗せられままソファ座った。
ジェラルドは十三歳だから、メイナードは十五歳だ。
なんで、こんなにスマートに抱っこされているんだろう?
BLの世界だから、BL補正が入るのかも。
なら、勘違いしてはいけない。
ブランケットを巻かれているので暖かい。それ以上にメイナードの腕の中というシチュエーションに心臓が煩く、やっぱり頬が熱くなってしまう。
「ジェラルド様が、落ち着くまでこうしていてもいいですか?」
きっと下心なんてなくて、本当に優しさで包んでくれているのだ。この世界では悪役だから、ずっと嫌われてる。
父上やメイナードが、いなければもっと心が折れていたに違いない。
ゲーム内のヴィオレット侯爵家が、ジェラルドに対して、酷い仕打ちをしていたようなエピソードはなかった。
特に嫌われるのは、学園生活の中で関わる人たちと王家と攻略対象者からだ。主人公のライラックが登場するのも、学園からだ。
クリス殿下との交流から、性格の悪さが顔に出ていると言われ続けた。それが広まって今に至っている。
無駄に傷つけられてきたジェラルドの心は、メイナードの腕の中にいることに安心してしまう。
彼は従者だから恋愛は駄目だ。強制して縛ることになったらいやだ。
そんなのは主従関係でしかなくて、愛されるわけではないのだから。
それでも今だけ、十三歳の今だけなら甘えても許されるのではないか? そんな欲がわいてしまった時、メイナードがあの日のことを話始めた。
「ジェラルド様が、刺されてしまったところを見ました」
あの光景を見たのなら、その後ライラックはどうしたんだろう? 本当に正当防衛が成立してしまったとしたら?
一体どのタイミングで、ここに戻ってきたのだろう?
(ヴィオレット侯爵家が取り潰されたんじゃ……? 父上がまさか処刑されたとか?)
「ジェラルド様。顔色が悪いです。この話は、また今度にしまょう」
「メイナードが知ってること教えて!僕が刺されたあとどうなったの? でも、今の僕はここにいるから……世界が別になった? ヴィオレット侯爵家は? 父上は……処刑とかされてないよね!? 僕のせいで、皆が、酷いことにっ」
僕が悪役だから……だ。
この世界の父上だけは、唯一の味方だった。陽斗の父親と違って、大切にしてもらっていたんだ。
ジェラルドせいで……巻き込んだ? 皆……は? 無事?
息が苦しくて、空気を取り込もうとしても上手くいかない。視界が定まらなくて、涙で滲む。酸欠のようになっていく。水中にでも沈められていくようだった。
───いやだ。だれか、たすけて。
「大丈夫。ゆっくり。ゆっくり息を吐いてください」
───息を吐く?
背中を優しくさすられて、メイナードの胸に耳が押し付けられる。
「俺の心臓の音が聞こえますか?」
ゲームの中じゃない、ちゃんと彼は生きていている。ジェラルドもヴィオレット侯爵も生きている。今はまだ失ってなんかいない。
「上手です。傍にいますから、数えてる間ゆっくりと長く吐いて。それから……」
メイナードが言う通りに、カウント数に合わせて呼吸を吸ったり吐いたりしていく。
「少しこのまま、目をつぶってください。落ち着いたら、きちんと話しますから」
「う……ん」
メイナードの心地の良い体温と心音によって、ジェラルドはそのまま身を預けた。
147
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
聖女を演じた巻き添え兄は、王弟殿下の求愛から逃げられない
深嶋(深嶋つづみ)
BL
谷口理恩は一年ほど前、妹と一緒に異世界に転移してしまった。
聖女として魔術の才を開花させた妹・世奈のおかげもあって、二人はアルゼノール王国の大教会に保護され、不自由のない暮らしを送ることができている。が、最近は世奈の奔放さに理恩は頭を抱えることもあった。
ある日、世奈の仕事を肩代わりした理恩は、病に臥せっている幼い第二王子・イヴァン王子のもとに参じることに。
――「僕が大人になったら、僕の妃になってくれませんか」。
何度も謁見を重ねるうちに理恩に懐いた彼は、目の前の聖女が偽者であることに気付かぬまま、やがて理恩に求愛する。
理恩は驚き、後ろめたい気持ちを抱きながらも、「大人になっても同じ気持ちでいてくれたなら」と約束を交わした。
その直後、何者かの陰謀に陥れられた世奈の巻き添えとなり、理恩は辺境の地へと飛ばされてしまい……。
――数年後、アルゼノール王国を出て世界中を巡っていた理恩は、とある国で偶然、王弟・イヴァンと再会する。
傷心の旅をしているのだという彼は、どういうわけか理恩との交流を持ちたがって――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる