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生き残るために、逃げる体力はつけたい。
ジェラルドは、倒れて虚弱になっている体を、先ずは鍛えることから始めることにした。
明日、メイナードと話して、今後の訓練のメニューを考えてもらおうと拳を握りしめた。
結局ジェラルドは、一週間ほどベッドの上で過ごす羽目になった。皆が優しいを通り越して、過保護な気がする。
(このままじゃ、何も変わらない)
そんな焦りの中、メイナードが会いに来てくれた。メイドにお茶を用意させて、その後は二人だけにしてもらう。
ジェラルドの私室は、小さな図書室といっていいくらいの書籍が棚に置いてある。ヴィオレット侯爵領の資料も多い。
机に、ソファに、小侯爵の執務室と呼ばれるくらいに、私室はきちんとした家具が備えられていた。
最初の転生ではゲームの記憶がなかったけど、ここにちゃんとジェラルドの努力が詰まってる。ジェラルドが生きていた世界だとわかる。
ゲームじゃない。陽斗とジェラルドは、生き残りをかけた運命共同体なのだ。
そこに本当はメイナードを巻き込みたい。彼は『らぶそな』のメインキャラではない。ただモブというには、メイナードはきれい過ぎる。本人は相変わらず紅い瞳が嫌いみたいだった。
(悪役令息の傍にいるから……迫力のある美形なのかな?)
この世界の人たち、特に貴族は顔が整っている。BLゲーム補正と言っても過言ではない。ジェラルドだけが悪役顔なのだろう。こればかりはどうしようもない。そういうビジュアルにされたのだから。
ヴィオレット侯爵である父は、イケオジだと思う。ジェラルドは母上に似ているらしい。侯爵家にある二人の肖像画は、美しかった。
ジェラルドと違って、幸せそうに笑っているから母上はきれいな気がする。
もしもうまく笑えたら、この冷たい顔の印象が違うのかもしれない。
でもクリス殿下に、嫌味を言われ続けて、もう笑い方がわからないのだ。
だいたい、もう陽斗の顔も思い出せなくなっている。
笑顔って、どうしたらいいのかな?
「顔……マッサージでもしようかな?」
「急にどうしたんですか?」
向かい合うように座って、菓子を持ったまま変なことを呟いてしまった。
またここに戻ってくるとは思わなかったけど、メイナードにもう一度会えて良かった。気がかりなことがあって、聞きたかったから。
「表情筋を解そうかな……なんてね。それより……あのねメイナードに会いたかったんだ」
「ジェラルド様?」
「ほら、倒れた時? 迷惑かけたみたいだから、謝っておきたくて」
スッと立ち上がったメイナードは、ジェラルドの座っている前で片膝をついた。
「違います。謝罪なんていりません」
「違う? いや、でも迷惑をかけたと思うよ」
「本当に違うんです。俺のせいで巻き込みました」
「そんなことないはず」
むしろ巻き込もうとしてるのは、ジェラルドの方だ。
学園はともかく、それまでは一緒にいても、許してくれるのではないかと思っている。
メイナードの大事な人にも、この年齢なら浮気などと、疑わないのではないと思うから。
「今はまだ、詳しいことが言えないんですが」
「まだ言えないことなんて、聞かないから。言わなくていいよ」
そんなの、死亡フラグっぽくて聞きたくない。
「誓約魔法で契約さえすれば……」
「待って、本当に待って。まだ僕は十三歳だよ? ほら、この先の人生何があるかわからないから!」
陽斗は二十二歳で死んで、一回目のジェラルドは十六歳で刺されで倒れた。
ループした二回目は十三歳だけど、三十八年分、生きてたってことであってるのかな?
いや、巻き戻ってるならさらに加算するのが正解?
もう、よくわからない。
たぶん精神年齢だけなら、メイナードより上のはずだ。
「誓約魔法なんて、王族に騎士が忠誠の時にするものじゃない? まだ侯爵家を、継ぐことができるかもわからないんだから。早まらないで」
「ジェラルド様を二度と失わなくて済むのなら、忠誠を誓わせてください」
「え、待って」
二度と失わなくて済むのならって、一度は失ったって言ってるのだろうか?
理解が及ばなくて、体温が奪われ指先から冷たくなっていくみたいだ。
目眩がして、体を支えられなくなったところでメイナードの胸の中にいた。
「あんな思いをしたくないのです」
「メイも……戻って来た記憶があるの?」
メイナードの腕の中、力いっぱい抱きしめられた。
落ち着くまで、メイナードに支えられていた。
お茶を飲んで、体が少し温まったけれど不安からか寒く感じてしまう。
あれは夢ではなく、本当に刺されたんだ。
「少し待っててください」
離れたくなかったのに、ジェラルドはソファに取り残されてしまう。不安からメイナードの背中を追って見ていると、一度振り向いて「すぐに戻ります」そう言って微笑んだあとに、部屋から出て行ってしまった。
ジェラルドは、倒れて虚弱になっている体を、先ずは鍛えることから始めることにした。
明日、メイナードと話して、今後の訓練のメニューを考えてもらおうと拳を握りしめた。
結局ジェラルドは、一週間ほどベッドの上で過ごす羽目になった。皆が優しいを通り越して、過保護な気がする。
(このままじゃ、何も変わらない)
そんな焦りの中、メイナードが会いに来てくれた。メイドにお茶を用意させて、その後は二人だけにしてもらう。
ジェラルドの私室は、小さな図書室といっていいくらいの書籍が棚に置いてある。ヴィオレット侯爵領の資料も多い。
机に、ソファに、小侯爵の執務室と呼ばれるくらいに、私室はきちんとした家具が備えられていた。
最初の転生ではゲームの記憶がなかったけど、ここにちゃんとジェラルドの努力が詰まってる。ジェラルドが生きていた世界だとわかる。
ゲームじゃない。陽斗とジェラルドは、生き残りをかけた運命共同体なのだ。
そこに本当はメイナードを巻き込みたい。彼は『らぶそな』のメインキャラではない。ただモブというには、メイナードはきれい過ぎる。本人は相変わらず紅い瞳が嫌いみたいだった。
(悪役令息の傍にいるから……迫力のある美形なのかな?)
この世界の人たち、特に貴族は顔が整っている。BLゲーム補正と言っても過言ではない。ジェラルドだけが悪役顔なのだろう。こればかりはどうしようもない。そういうビジュアルにされたのだから。
ヴィオレット侯爵である父は、イケオジだと思う。ジェラルドは母上に似ているらしい。侯爵家にある二人の肖像画は、美しかった。
ジェラルドと違って、幸せそうに笑っているから母上はきれいな気がする。
もしもうまく笑えたら、この冷たい顔の印象が違うのかもしれない。
でもクリス殿下に、嫌味を言われ続けて、もう笑い方がわからないのだ。
だいたい、もう陽斗の顔も思い出せなくなっている。
笑顔って、どうしたらいいのかな?
「顔……マッサージでもしようかな?」
「急にどうしたんですか?」
向かい合うように座って、菓子を持ったまま変なことを呟いてしまった。
またここに戻ってくるとは思わなかったけど、メイナードにもう一度会えて良かった。気がかりなことがあって、聞きたかったから。
「表情筋を解そうかな……なんてね。それより……あのねメイナードに会いたかったんだ」
「ジェラルド様?」
「ほら、倒れた時? 迷惑かけたみたいだから、謝っておきたくて」
スッと立ち上がったメイナードは、ジェラルドの座っている前で片膝をついた。
「違います。謝罪なんていりません」
「違う? いや、でも迷惑をかけたと思うよ」
「本当に違うんです。俺のせいで巻き込みました」
「そんなことないはず」
むしろ巻き込もうとしてるのは、ジェラルドの方だ。
学園はともかく、それまでは一緒にいても、許してくれるのではないかと思っている。
メイナードの大事な人にも、この年齢なら浮気などと、疑わないのではないと思うから。
「今はまだ、詳しいことが言えないんですが」
「まだ言えないことなんて、聞かないから。言わなくていいよ」
そんなの、死亡フラグっぽくて聞きたくない。
「誓約魔法で契約さえすれば……」
「待って、本当に待って。まだ僕は十三歳だよ? ほら、この先の人生何があるかわからないから!」
陽斗は二十二歳で死んで、一回目のジェラルドは十六歳で刺されで倒れた。
ループした二回目は十三歳だけど、三十八年分、生きてたってことであってるのかな?
いや、巻き戻ってるならさらに加算するのが正解?
もう、よくわからない。
たぶん精神年齢だけなら、メイナードより上のはずだ。
「誓約魔法なんて、王族に騎士が忠誠の時にするものじゃない? まだ侯爵家を、継ぐことができるかもわからないんだから。早まらないで」
「ジェラルド様を二度と失わなくて済むのなら、忠誠を誓わせてください」
「え、待って」
二度と失わなくて済むのならって、一度は失ったって言ってるのだろうか?
理解が及ばなくて、体温が奪われ指先から冷たくなっていくみたいだ。
目眩がして、体を支えられなくなったところでメイナードの胸の中にいた。
「あんな思いをしたくないのです」
「メイも……戻って来た記憶があるの?」
メイナードの腕の中、力いっぱい抱きしめられた。
落ち着くまで、メイナードに支えられていた。
お茶を飲んで、体が少し温まったけれど不安からか寒く感じてしまう。
あれは夢ではなく、本当に刺されたんだ。
「少し待っててください」
離れたくなかったのに、ジェラルドはソファに取り残されてしまう。不安からメイナードの背中を追って見ていると、一度振り向いて「すぐに戻ります」そう言って微笑んだあとに、部屋から出て行ってしまった。
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