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第1章 堕ちる
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2日たった。
アルルの機嫌は悪くなる一方だ。
「すぐに引き離せないと思っていたが……まさか、本当にラティア様の邸にいるとは思わなかった」
身の回りの世話をまかされているアキが、ただ黙ってアルルの髪の毛を綺麗に櫛でとかしていく。
「本気で伴侶に迎える気なのか?なぜだ?後ろ盾などないだろう?側付きも誰もいないノラ猫をラティア様が抱きかかえて連れてきたのだと聞いた。あの髪……のせいなのか?」
アルルが思わず、アキの手首掴んだ。
「私は、私はあのノラ猫より劣るのか?」
アキがふるふると首を横に振る。
「いいえ。アルル様はお美しいです。私は、こんなに醜い。くすんだ黄色の髪の毛が嫌いで、どれほど憧れたか知っているではありませんか?
お傍にいて、美しい髪の毛を触れさせていただけるこんなに光栄なことはありません。
白狐の一族にお仕え出来るのは、喜びでしかないのですから」
「なら、なぜ。なぜ会いに来てくださらないのか!5尾の能力では足りないのか?いずれ9尾となれるはずだ。私は直系なのだから。尾の艶が足りないのか?アキ……椿油をより上質なものを探して欲しい」
「例の薬と一緒に頼んでおります。白神様は、珍しいものに興味を持たれただけです。長きに渡りお傍にいたのは、アルル様だけです」
「──そうだな。私がノラ猫に負ける訳がない。引き剥がせばいい。きっと……きっと」
知らず掴んだ手首に力が入っていく。
ミシリ……と部屋に嫌な音が響く。
「アルル様!!力を抑えてくださいっ!アキの手首が折れてしまいます!」
シンの声でアルルが力を緩める。
「アキ。悪かった」
アルルの手から淡い光がもれていく。
「アキ……痛い思いをさせてしまった。どうだ?痛みは平気か?すまない」
治癒の力を使ってアキの腕を治す。
「気にしないでください。アルル様のためなら何でもやります。何をされても構わないのです。触れさせていただける、私にとって至福の時ですから」
アキはうっとりとアルルを見つめて微笑んだ。
「情けないな。中断させて悪かった。また、綺麗に結って欲しい。シン、リン様と話はすすんでいるのか?」
シンが元の位置に戻り頷いた。
「はい。本日、こちらに移ってくるそうです。部屋の用意も問題ありません。神使としての教育は明日からとなります。ただ条件として夕食は必ず白神様とご一緒して習った事を本人から報告させるようにと言われております」
アルルの顔がまた歪んだ。
「そうか……そうだろうな。信用してはいないな。まぁ……想定内といったところだ。可愛がり、振る舞いを美しくした後に薬を使えばいい。誰にも疑わせるな?」
「もちろんです。アルル様が疑われるような事は有りません」
シンが応えた。
「全部、私の仕組んだ事です。私が最愛のアルル様の為に薬を使うのです。私の首が役立つのです。その時は誉めていただけますか?」
「ああ。アキ。お前の忠義を受け取る」
「嬉しい」
アルルは、そっとアキを引き寄せ抱き締めた。
「アルル様、ユラ様が到着したようです。客間に通した後にお呼びしたらよいでしょうか?」
カイがユラの到着を告げる。
「いや。私が出迎えるよ。この屈辱を返すために胸に刻む。ラティア様を取り返すのだから」
「はい。我々も全てはアルル様の為にこの身を捧げます」
「ああ。期待している」
シンとカイに守られながら邸のエントランスへ向かうとそこには、リンとユラそしてラティアが立っていた。
「ラティア様!なぜここに?」
「アルルには迷惑をかけてしまい申し訳ない。ユラは怪我が治ったばかりだから部屋が不自由ではないか見ておきたくてね」
「怪我はラティア様が治療したと聞きましたので問題はないかと思いましたが……そのように酷い怪我をされたのですね。では、早くユラ様の部屋を案内いたしましょう。ユラ様の好みに合えばいいのですが、どうぞこちらに」
アルルの後にラティアとユラが並んでついてくる。
「どうでしょうか?」
「すごい。こんな素敵な部屋を貸していただけるのですか?」
ユラが嬉しそうに笑うとつられてラティアが微笑んだ。
「さすが、アルルだね。私の好み合わせた上で若いユラの為に用意してくれたんだね。少しの間だがユラの教育を頼んだよ。夕食にはこちらに連れてきてくれ。その時にユラつきの世話係を1人つけるからその子の指導も頼む」
ユラの方にラティアが向きを変えて頭をそっと撫でて耳くすぐるとユラが真っ赤になった。
「また、後で」
そう言ってリンと戻って行ってしまった。
「アルル様、足はもう平気です。これからよろしくお願いします」
ユラが深々と頭を下げた。
「そうだね。ユラよろしくね」
優しくアルルが微笑む。
だが、一切目が笑ってないことにユラは気がつかなかった。
アルルの機嫌は悪くなる一方だ。
「すぐに引き離せないと思っていたが……まさか、本当にラティア様の邸にいるとは思わなかった」
身の回りの世話をまかされているアキが、ただ黙ってアルルの髪の毛を綺麗に櫛でとかしていく。
「本気で伴侶に迎える気なのか?なぜだ?後ろ盾などないだろう?側付きも誰もいないノラ猫をラティア様が抱きかかえて連れてきたのだと聞いた。あの髪……のせいなのか?」
アルルが思わず、アキの手首掴んだ。
「私は、私はあのノラ猫より劣るのか?」
アキがふるふると首を横に振る。
「いいえ。アルル様はお美しいです。私は、こんなに醜い。くすんだ黄色の髪の毛が嫌いで、どれほど憧れたか知っているではありませんか?
お傍にいて、美しい髪の毛を触れさせていただけるこんなに光栄なことはありません。
白狐の一族にお仕え出来るのは、喜びでしかないのですから」
「なら、なぜ。なぜ会いに来てくださらないのか!5尾の能力では足りないのか?いずれ9尾となれるはずだ。私は直系なのだから。尾の艶が足りないのか?アキ……椿油をより上質なものを探して欲しい」
「例の薬と一緒に頼んでおります。白神様は、珍しいものに興味を持たれただけです。長きに渡りお傍にいたのは、アルル様だけです」
「──そうだな。私がノラ猫に負ける訳がない。引き剥がせばいい。きっと……きっと」
知らず掴んだ手首に力が入っていく。
ミシリ……と部屋に嫌な音が響く。
「アルル様!!力を抑えてくださいっ!アキの手首が折れてしまいます!」
シンの声でアルルが力を緩める。
「アキ。悪かった」
アルルの手から淡い光がもれていく。
「アキ……痛い思いをさせてしまった。どうだ?痛みは平気か?すまない」
治癒の力を使ってアキの腕を治す。
「気にしないでください。アルル様のためなら何でもやります。何をされても構わないのです。触れさせていただける、私にとって至福の時ですから」
アキはうっとりとアルルを見つめて微笑んだ。
「情けないな。中断させて悪かった。また、綺麗に結って欲しい。シン、リン様と話はすすんでいるのか?」
シンが元の位置に戻り頷いた。
「はい。本日、こちらに移ってくるそうです。部屋の用意も問題ありません。神使としての教育は明日からとなります。ただ条件として夕食は必ず白神様とご一緒して習った事を本人から報告させるようにと言われております」
アルルの顔がまた歪んだ。
「そうか……そうだろうな。信用してはいないな。まぁ……想定内といったところだ。可愛がり、振る舞いを美しくした後に薬を使えばいい。誰にも疑わせるな?」
「もちろんです。アルル様が疑われるような事は有りません」
シンが応えた。
「全部、私の仕組んだ事です。私が最愛のアルル様の為に薬を使うのです。私の首が役立つのです。その時は誉めていただけますか?」
「ああ。アキ。お前の忠義を受け取る」
「嬉しい」
アルルは、そっとアキを引き寄せ抱き締めた。
「アルル様、ユラ様が到着したようです。客間に通した後にお呼びしたらよいでしょうか?」
カイがユラの到着を告げる。
「いや。私が出迎えるよ。この屈辱を返すために胸に刻む。ラティア様を取り返すのだから」
「はい。我々も全てはアルル様の為にこの身を捧げます」
「ああ。期待している」
シンとカイに守られながら邸のエントランスへ向かうとそこには、リンとユラそしてラティアが立っていた。
「ラティア様!なぜここに?」
「アルルには迷惑をかけてしまい申し訳ない。ユラは怪我が治ったばかりだから部屋が不自由ではないか見ておきたくてね」
「怪我はラティア様が治療したと聞きましたので問題はないかと思いましたが……そのように酷い怪我をされたのですね。では、早くユラ様の部屋を案内いたしましょう。ユラ様の好みに合えばいいのですが、どうぞこちらに」
アルルの後にラティアとユラが並んでついてくる。
「どうでしょうか?」
「すごい。こんな素敵な部屋を貸していただけるのですか?」
ユラが嬉しそうに笑うとつられてラティアが微笑んだ。
「さすが、アルルだね。私の好み合わせた上で若いユラの為に用意してくれたんだね。少しの間だがユラの教育を頼んだよ。夕食にはこちらに連れてきてくれ。その時にユラつきの世話係を1人つけるからその子の指導も頼む」
ユラの方にラティアが向きを変えて頭をそっと撫でて耳くすぐるとユラが真っ赤になった。
「また、後で」
そう言ってリンと戻って行ってしまった。
「アルル様、足はもう平気です。これからよろしくお願いします」
ユラが深々と頭を下げた。
「そうだね。ユラよろしくね」
優しくアルルが微笑む。
だが、一切目が笑ってないことにユラは気がつかなかった。
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