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第3章 それぞれのはじまり
(3) フロンティア・オブ・プログレス
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駅から降りてオンステージに戻ると、その正面はフロンティア・オブ・プログレスとスチームストリートの境になっている。スラリーコートと呼ばれる平らな舗装はそのテーマエリアごとに色が異なるが、スチームストリートはレンガ敷きであることを再現して赤と橙色が混ざったレンガ色であるの対して、フロンティア・オブ・プログレス側は近代的な街ということで黒味が強いグレーになっている。
ここも例外なく、のぼり、ポスター、時代背景無視の商品ワゴン、塗装そのままの自動販売機などが並んでいた。それでも「ここが近未来だから」と考えると、みんなは許容範囲ではあるように思えた。
……いずみとSV以外は。
「10分ぐらいなら、私が見える範囲で見て回っていいわよ」
とSVがみんなを自由にさせた。みんなうれしそうだった。
さくらと美咲が、気乗りしなさそうないずみの手を引いていき、その後ろ姿に
「困ったこととか、ゲストにわからないこと聞かれたら戻っておいで!」
とSVが声をかけていた。
その姿を目で追いかけつつ、
せめて夏までにはのぼりと自販機ぐらいは何とかしないと……
と考え込んでいた。
再建計画の決定権が自分にあれば、こんなことはみんなが見るまえに何とかするのに……と思いつつ、目をつぶって目頭を指で揉んだ。自分が思い上がった考えをしていると自覚したからだ。監督との立場を考えればいくらでも傲慢にふるまえるし、それを止める人も社内にはいないだろう。だからこそ、自制をしなくては。
「私がやればとか、そんな考えは傲慢よね…… 私だけのパークじゃないんだから」
こまちとつばさは、家電メーカーが提供している「ザ・タイムジャーニー」という日本の歴史を学ぶシアター形式のアトラクションのエントランスで、展示されている昔の日本の電化製品を見ていた。最新式のドラム式洗濯機の横で、昔の洗濯機のついているローラーに洗濯物を挟んで回す手動の脱水機を興味深そうに見ていた。そばにいたキャストが解説してくれていた。その後ろに立つ田澤はまるで母親か姉の様だった。
広森と舞、それに藤森は、「スペースステーション・オアシス」というレストランで、猫型の宇宙人が操作する食糧製造プラントの様子を見ていた。
もちろん本当に製造しているわけではない。提供しているのはカレーのルーなどを製造する会社で、レトルト食品に関する啓発が目的だった。
去年改良されたばかりで、人感センサーで視線を外で見ているゲストにあわせていろいろな会話をするようにプログラムされている。そのセンサーのターゲットに舞が選定されたようで猫型宇宙人が
「そこの君、そう、君だよ。どうだい? カレーは好きかい?」
などと聞いてくるので、「ふぇ!?」と驚いていた。
その様子を広森や、まわりのゲストが面白そうに見ていた。
10分ほどたったころ。広森が「あ、そろそろもどらないと」と藤森に声をかける。
「舞ちゃんは?」
「あれ、さっきまで隣に……」
藤森が周りを見渡すと、ごみ箱の脇にかがんでいるのが見えた。
二人で近寄ってみると、舞の前には涙目の小学1年生くらいの女の子がベンチに座り込んでいた。泣くのをこらえているのがはっきりわかり、舞が必死にあやしていた。
ここも例外なく、のぼり、ポスター、時代背景無視の商品ワゴン、塗装そのままの自動販売機などが並んでいた。それでも「ここが近未来だから」と考えると、みんなは許容範囲ではあるように思えた。
……いずみとSV以外は。
「10分ぐらいなら、私が見える範囲で見て回っていいわよ」
とSVがみんなを自由にさせた。みんなうれしそうだった。
さくらと美咲が、気乗りしなさそうないずみの手を引いていき、その後ろ姿に
「困ったこととか、ゲストにわからないこと聞かれたら戻っておいで!」
とSVが声をかけていた。
その姿を目で追いかけつつ、
せめて夏までにはのぼりと自販機ぐらいは何とかしないと……
と考え込んでいた。
再建計画の決定権が自分にあれば、こんなことはみんなが見るまえに何とかするのに……と思いつつ、目をつぶって目頭を指で揉んだ。自分が思い上がった考えをしていると自覚したからだ。監督との立場を考えればいくらでも傲慢にふるまえるし、それを止める人も社内にはいないだろう。だからこそ、自制をしなくては。
「私がやればとか、そんな考えは傲慢よね…… 私だけのパークじゃないんだから」
こまちとつばさは、家電メーカーが提供している「ザ・タイムジャーニー」という日本の歴史を学ぶシアター形式のアトラクションのエントランスで、展示されている昔の日本の電化製品を見ていた。最新式のドラム式洗濯機の横で、昔の洗濯機のついているローラーに洗濯物を挟んで回す手動の脱水機を興味深そうに見ていた。そばにいたキャストが解説してくれていた。その後ろに立つ田澤はまるで母親か姉の様だった。
広森と舞、それに藤森は、「スペースステーション・オアシス」というレストランで、猫型の宇宙人が操作する食糧製造プラントの様子を見ていた。
もちろん本当に製造しているわけではない。提供しているのはカレーのルーなどを製造する会社で、レトルト食品に関する啓発が目的だった。
去年改良されたばかりで、人感センサーで視線を外で見ているゲストにあわせていろいろな会話をするようにプログラムされている。そのセンサーのターゲットに舞が選定されたようで猫型宇宙人が
「そこの君、そう、君だよ。どうだい? カレーは好きかい?」
などと聞いてくるので、「ふぇ!?」と驚いていた。
その様子を広森や、まわりのゲストが面白そうに見ていた。
10分ほどたったころ。広森が「あ、そろそろもどらないと」と藤森に声をかける。
「舞ちゃんは?」
「あれ、さっきまで隣に……」
藤森が周りを見渡すと、ごみ箱の脇にかがんでいるのが見えた。
二人で近寄ってみると、舞の前には涙目の小学1年生くらいの女の子がベンチに座り込んでいた。泣くのをこらえているのがはっきりわかり、舞が必死にあやしていた。
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