あなたは微笑む

茶々

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執着

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結論から言うと妻の命は助かった。だが、あれは生きていると言うのか。

「キャサリン」
「・・・」

呼び掛けても、貴女の瞳には空を写し私と目が合うことは無い。貴女の唇が言葉を成す事も無い。
時折、貴女の瞳は狂気を帯び唇からは耳を覆いたくなる様な叫びの後に悲鳴の様な笑い声。
その後は疲れはて幼子の様に眠る。

私は仕事の合間に貴女の側に寄り添い、閨を共にする。
貴女を抱きしめ愛を囁く。
嫌々と最初は頭を横に振るが、私を受け入れると身体は徐々に赤く染まり目を潤ませ手は私に縋り付く。

「キャサリン・・・愛しているよ。」
「~♪?※#~」

言葉にならない音を唇から紡ぎ空を見る瞳がふと緩み唇が弧を形どる。
私はその顔を息を潜め見守る事しか出来ない。





貴女と結婚した時に私の仕事を説明すれば、或いは辞めていればこの様な結果にはならなかっただろう。


今更だが・・・


だが、結婚当時は私の代わりはいなかった。それに私の仕事を言うのも躊躇ってしまった。
私はいわゆる陰の仕事をしていた。諜報活動の他、陛下に向けて来る暗殺者の拷問や処理等の汚い仕事だ。本来なら結婚等するつもりは無かった。

キャサリンは陛下に送られて来た暗殺者の娘だった。暗殺者の家族は拷問の後全員処理する筈だったが、当時4歳のキャサリン、2歳の弟に陛下が幼子の処理を取り止めにしたのだ。それにキャサリンは親の仕事の事は知らなかった。

陛下の気紛れか、キャサリンの保護と監視及び養護を命じられた。
表向きは穏やかな日々が過ぎ去って行く。

無垢な幼子との生活が、血塗られ淀んだ私の生活に彩りを与えてくれる。


「#※♪?~」
「キャサリン・・・まだ朝では無い。寝るんだよ。」

貴女の言葉にならない声で私の思考が途切れる。モソモソと布団に入り込み枕を抱いて再び寝息をたて始めた。

「愛している・・・」

私が貴女に執着するのは必然だったのだろう。


『・・・ダリウス様。』

人見知りをする大人しい子だった。慣れる迄は侍女の後ろに隠れ挨拶も儘ならない。

『ダリウス様。』

何時の頃か、私の後を追いかけて来る様になった。
私の為にと勉学、淑女としてのマナーを熱心に学ぶ姿に微笑ましく思った。
貴女は双葉から蕾へそして可憐なマーガレットの様に成長して行く。

だが、私は貴女が思う様な立派な人間では無い。
暗殺者の家系に生まれた彼女は侯爵家。私は子爵家の養子とはいえ只の孤児。養護院の玄関先にぼろ布にくるまれていたそうだ。
その事実が私の劣等感を蝕んで行く。

「※#・ダ♪?~リ&*」
「?キャサリン?」

貴女は相変わらず空を見て私と目が合うことは無い。
・・・取り止めの無い思考に耽っていたが窓が白んで来た。

私は深い溜息と共にベットから出てキャサリンの頬に口付けた。
今日は、陛下に謁見しなければならない。
私は鬱々と仕度をした。

    
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