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第一章
第十七話 長蛇障壁
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セノン達一行は、赤いマグマに存在していたドラゴンと戦い終わった後すぐに第二階層に進んでいた。
彼らが今いる場所は南北に二層を半分に区切っている巨大な壁の中だ。
その壁は万里の長城のようで、試練の塔の長い壁は長蛇障壁という。しかし、この名前は無駄に長いため、巷では[蛇壁]や[長壁]といわれている。
そしてここは何を隠そう、世界的観光スポットなのだ。
そのため、今場所にはセノン達みたいな冒険者以外にも観光客、ツアー客でガヤガヤとした雰囲気であった。
「そうだ、せっかくここに来たんだし、みんなで刊行してみるっていうのはどうでしょうか?」
ユリカはキラキラと輝く壁の中を見渡しながら言った。
ユリカが上を見ると、シャンデリア。横を見ると、絵画に彫刻。そういった様々な芸術が並べられていた。
「確かにせっかくここに来たんだし、みんなで観光することも悪くないですね」
セノンも四方に目をやっている。
「私もみにいきたい!」
「わたしも見て回りたいです」
一香、瑠美も目をキラキラと輝かせていた。
「なら、みんなで見て回りましょうか。では、最初に北の方から見て回りますか」
ユリカは北の方を指さしながら言った。
「そうですね!」
それには政次が一番元気よく反応し、ユリカの隣に行く。
「ユリカさんはどういったものが気になるんですか?」
政次はユリカと話すべく、すぐに話の話題を振る。
「そうだね~、結構絵画とか見たりするかな~。この前リアルの方でフランスのパリに行ったときルーブル美術館に行ってきたし。まぁ、それでも芸術は全般好きかな?」
「そうなんですか! 実は僕も好きなんです。あれとかいいですよね。ゴッホが書いたモナ・リザとか?」
「……ゴッホ? モナ・リザはレオナルドダヴィンチが書いたかな? ゴッホはヒマワリとか、糸杉と星の見える道、夜のカフェテラスとかが有名なんだけど……」
「え、あ、間違えちゃいました。けど、あれも好きですよ! ムンクの雄たけび!」
「あ、それはムンクの叫びかな?」
「あ、そうでしたっけ……」
「ほんとに好きなの~?」
一香は後ろから政次の方へ回り込み言う。
すると、政次は少し後ずさり、
「教養はちゃんと勉強してきます」
少ししょんぼりしていた。
「けど、まだ中学生でしょ? これから知っていけるよ!」
ユリカは政次にとって天使のような存在だった。
「はい!」
「前までたくさん読んできた本は何だったんだろ」
瑠美はボソッとつぶやいた。
「え、今せっかく丸く収まったのに! なんで蒸し返すの?」
「別に蒸し返したつもりは……」
瑠美は両手を使い否定している。
「まぁ、実際悪いのは政次だし、瑠美が責められる必要はないよ!」
一香は場所を瑠美の隣に移動させた。
「まぁまぁ、そこまでにして。あれとかすごいよ?」
五十メートルくらい移動した先でユリカは指をさした。その指の先にあったのは、[北極星とその仲間]という題の絵画だった。
「あれは誰の作品なんですか?」
「あの作品はセカルドの中で発展していったAIが作ったものなんですよ?」
セノンは興味本位でユリカに質問すると、予想もつかない答えが返ってきた。
少し驚いたセノンはゆっくりとした足取りで、その作品に近づいた。
(仮想世界にもしっかりとした文化朱華いているんだな~)
セノンは心の中でそう思った。
「このほかにも、この世界ならではの作品は北にも南にもたくさん並んでいるんですよ!」
「それは楽しみです。これから案内お願いします。先輩」
セノンはAIの作品が少し気になっていた。
「わかりました。後輩さん」
ユリカも自分が好きなことが人に伝わっていて、楽しくなっていた。
こうしてゆっくりと足を進めて行き、南のほうにも足を運んでいた。
ユリカは[インヴァース]という作品を見ていた。
すると、後ろからお祖母ちゃんの声が聞こえてきた。
「あんた、そこのあんただよ」
ユリカは自分ではないと思っていたが、声が強くなっていたため後ろを振り向いた。
そして、やっと自分の言われているということを気づいた。
「私ですか?」
「そうだよ、あんただよ」
「……あ、何でしょう?」
ユリカは急に声を掛けられ少し驚いた。そして、少し声を震わせていた。
「あんた、いい目持ってるよ!」
ユリカはドキドキしていたが、褒められて素直にうれしかった。
「あんた、さっきからこの子達やこの男性にいろいろ作品のいいところとかを教えているが、その説明は完璧じゃ。ネットの情報にも頼っておらんのは話を聞いていれば分かった」
「そ、それはありがとうございます」
ユリカはゆっくりとお辞儀をした。すると、お祖母ちゃんはさらに熱くなった。
「そして、礼儀もいいし、何よりかわええ! あんた、もしよかったらわしのモデルになってはくれまいか?」
お祖母ちゃんは絵描きだったのだ。
「え、……」
「もちろんただとは言わん。そうじゃな、今見ておるこの作品でもやろうか?」
「え、でもこれは……」
「ええんじゃ、ええんじゃ。これはわしが描いたのよ。これはまだわしのだしの。ここにおいてくれといわれて置いとるだけなんじゃ。だからええんじゃ」
「その言葉はとてもうれしいのですが……今回はお断りさせてもらってもよろしいですか?」
「なんでじゃ? 何が不満なんじゃ? 金がいいのか? いくらでもやるぞ?」
「それは、私はいま、この方たちと冒険をして、いろいろなことを学んでいる途中で……今は冒険が楽しいんです! だから、私はこれからこの二層には観光ではなく本当は旅に来たんです。だから、今回はお断りさせてください」
「なんじゃ、それは……あんたのことはますます気に入った。が、あんたの気持ちは尊重してやりたい。が、あんたがいなくてもあんたを思い出し絵にさせてほしい。それもダメか?」
「そんな、ダメだなんてとんでもない。うれしいに決まってます。ぜひ書いてください。書きあがったら、ここへ見に来ます」
「そうか、それはよかった。ここに並べてもらえる絵にするために頑張るぞ! わしは」
「はい! 頑張ってください!」
「それじゃ、達者でな!」
「はい!」
そして、ユリカは深くお辞儀をして、起き上がると軽く手を振った。
この後、ユリカは先ほどよりも少し気合が入った説明を、三人にしていた。
こうして、ギルド[エンジェル・ハーツ]はロングスネークバリアーをゆっくりと観光していた。
彼らが今いる場所は南北に二層を半分に区切っている巨大な壁の中だ。
その壁は万里の長城のようで、試練の塔の長い壁は長蛇障壁という。しかし、この名前は無駄に長いため、巷では[蛇壁]や[長壁]といわれている。
そしてここは何を隠そう、世界的観光スポットなのだ。
そのため、今場所にはセノン達みたいな冒険者以外にも観光客、ツアー客でガヤガヤとした雰囲気であった。
「そうだ、せっかくここに来たんだし、みんなで刊行してみるっていうのはどうでしょうか?」
ユリカはキラキラと輝く壁の中を見渡しながら言った。
ユリカが上を見ると、シャンデリア。横を見ると、絵画に彫刻。そういった様々な芸術が並べられていた。
「確かにせっかくここに来たんだし、みんなで観光することも悪くないですね」
セノンも四方に目をやっている。
「私もみにいきたい!」
「わたしも見て回りたいです」
一香、瑠美も目をキラキラと輝かせていた。
「なら、みんなで見て回りましょうか。では、最初に北の方から見て回りますか」
ユリカは北の方を指さしながら言った。
「そうですね!」
それには政次が一番元気よく反応し、ユリカの隣に行く。
「ユリカさんはどういったものが気になるんですか?」
政次はユリカと話すべく、すぐに話の話題を振る。
「そうだね~、結構絵画とか見たりするかな~。この前リアルの方でフランスのパリに行ったときルーブル美術館に行ってきたし。まぁ、それでも芸術は全般好きかな?」
「そうなんですか! 実は僕も好きなんです。あれとかいいですよね。ゴッホが書いたモナ・リザとか?」
「……ゴッホ? モナ・リザはレオナルドダヴィンチが書いたかな? ゴッホはヒマワリとか、糸杉と星の見える道、夜のカフェテラスとかが有名なんだけど……」
「え、あ、間違えちゃいました。けど、あれも好きですよ! ムンクの雄たけび!」
「あ、それはムンクの叫びかな?」
「あ、そうでしたっけ……」
「ほんとに好きなの~?」
一香は後ろから政次の方へ回り込み言う。
すると、政次は少し後ずさり、
「教養はちゃんと勉強してきます」
少ししょんぼりしていた。
「けど、まだ中学生でしょ? これから知っていけるよ!」
ユリカは政次にとって天使のような存在だった。
「はい!」
「前までたくさん読んできた本は何だったんだろ」
瑠美はボソッとつぶやいた。
「え、今せっかく丸く収まったのに! なんで蒸し返すの?」
「別に蒸し返したつもりは……」
瑠美は両手を使い否定している。
「まぁ、実際悪いのは政次だし、瑠美が責められる必要はないよ!」
一香は場所を瑠美の隣に移動させた。
「まぁまぁ、そこまでにして。あれとかすごいよ?」
五十メートルくらい移動した先でユリカは指をさした。その指の先にあったのは、[北極星とその仲間]という題の絵画だった。
「あれは誰の作品なんですか?」
「あの作品はセカルドの中で発展していったAIが作ったものなんですよ?」
セノンは興味本位でユリカに質問すると、予想もつかない答えが返ってきた。
少し驚いたセノンはゆっくりとした足取りで、その作品に近づいた。
(仮想世界にもしっかりとした文化朱華いているんだな~)
セノンは心の中でそう思った。
「このほかにも、この世界ならではの作品は北にも南にもたくさん並んでいるんですよ!」
「それは楽しみです。これから案内お願いします。先輩」
セノンはAIの作品が少し気になっていた。
「わかりました。後輩さん」
ユリカも自分が好きなことが人に伝わっていて、楽しくなっていた。
こうしてゆっくりと足を進めて行き、南のほうにも足を運んでいた。
ユリカは[インヴァース]という作品を見ていた。
すると、後ろからお祖母ちゃんの声が聞こえてきた。
「あんた、そこのあんただよ」
ユリカは自分ではないと思っていたが、声が強くなっていたため後ろを振り向いた。
そして、やっと自分の言われているということを気づいた。
「私ですか?」
「そうだよ、あんただよ」
「……あ、何でしょう?」
ユリカは急に声を掛けられ少し驚いた。そして、少し声を震わせていた。
「あんた、いい目持ってるよ!」
ユリカはドキドキしていたが、褒められて素直にうれしかった。
「あんた、さっきからこの子達やこの男性にいろいろ作品のいいところとかを教えているが、その説明は完璧じゃ。ネットの情報にも頼っておらんのは話を聞いていれば分かった」
「そ、それはありがとうございます」
ユリカはゆっくりとお辞儀をした。すると、お祖母ちゃんはさらに熱くなった。
「そして、礼儀もいいし、何よりかわええ! あんた、もしよかったらわしのモデルになってはくれまいか?」
お祖母ちゃんは絵描きだったのだ。
「え、……」
「もちろんただとは言わん。そうじゃな、今見ておるこの作品でもやろうか?」
「え、でもこれは……」
「ええんじゃ、ええんじゃ。これはわしが描いたのよ。これはまだわしのだしの。ここにおいてくれといわれて置いとるだけなんじゃ。だからええんじゃ」
「その言葉はとてもうれしいのですが……今回はお断りさせてもらってもよろしいですか?」
「なんでじゃ? 何が不満なんじゃ? 金がいいのか? いくらでもやるぞ?」
「それは、私はいま、この方たちと冒険をして、いろいろなことを学んでいる途中で……今は冒険が楽しいんです! だから、私はこれからこの二層には観光ではなく本当は旅に来たんです。だから、今回はお断りさせてください」
「なんじゃ、それは……あんたのことはますます気に入った。が、あんたの気持ちは尊重してやりたい。が、あんたがいなくてもあんたを思い出し絵にさせてほしい。それもダメか?」
「そんな、ダメだなんてとんでもない。うれしいに決まってます。ぜひ書いてください。書きあがったら、ここへ見に来ます」
「そうか、それはよかった。ここに並べてもらえる絵にするために頑張るぞ! わしは」
「はい! 頑張ってください!」
「それじゃ、達者でな!」
「はい!」
そして、ユリカは深くお辞儀をして、起き上がると軽く手を振った。
この後、ユリカは先ほどよりも少し気合が入った説明を、三人にしていた。
こうして、ギルド[エンジェル・ハーツ]はロングスネークバリアーをゆっくりと観光していた。
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