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第一章
第十八話 砂漠エリアでの事件
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[エンジェル・ハーツ]はロングスネークバリアーでの観光を終えると、その壁の西側に位置している、砂漠エリアにいた。
その砂漠エリアは気温四十度を超えていた。地面にある軽い砂は、風が少し吹くだけで強く舞う。それが体にあたるとまれにダメージになることもある。また、その風すらも暖かい。そのため、体を休める場所はどこにもない。
「ここって本当に暑いんですね~」
一香はいつもより緩めに装備を付けていた。
しかし、地肌にあたるのは、暖かい風、ぶつかってくる砂。一香から滴る汗はというと地面に落ちるとすぐに蒸発してしまっていた。
「そうだね~。ここでモンスターに攻撃されると、ダメージはいつもの一・五倍。回復はいつもの半分しかしなくなります。つまり、ここではいかにモンスターの攻撃をよけるか、が大事なのです。そうですよね? セノンさん」
ユリカは人差し指を立てて、愉快に話す。そして、ユリカも、一香同様汗をかいていたため露出がいつもより激しくなっていた。
「そうですね。大体はユリカさんの言う通りです。しかし、ダメージを避ける。ということよりも、いかに早く相手を倒すか。僕はこれを大事にしていますね。まぁ、これは僕が後衛だから言えることであって、前衛の人は命大事にって感じの方がいいと思います」
「なるほど。確かにその考え方もありますね。まぁ、実践あるのみですので、みんなでモンスターを探しに行きましょう!」
「「「はい!」」」
三人の少年少女は勢いよく返事をする。
しかし、暑さにやられ、すこしHPを消費してしまう。
「「「あ、……」」」
三人はHPが減ったことに気づき、口をポカンと開け、唖然とする。
「最初はよくあることです。僕も初めて来たときは、……ずいぶんはしゃぎましたしね」
セノンが初めて砂漠のエリアにいたのは試練の塔ではなかった。しかし、セノンもそのとき走り回ってHPが気づいたら赤になっていた。ということがあったのだ。
「セノンさんでもそんなことがあったんですか?」
瑠美は少し首を傾げた。
「そうですよ。僕だって昔は子供でしたから」
「まぁ、そうですよね」
瑠美は少し頭の中でセノンの昔を想像してしまう。しかし、瑠美は何度セノンの昔のことを考えても、真面目なお坊ちゃんという感じにしかならなかった。
「まぁ、砂漠エリアにはオアシスがあることが多い。そのオアシスの周りには必ずといっていいほどモンスターがいるからそこに向かうとしますか」
セノンはそう言って、一歩一歩を踏みしめ、五人みんなでゆっくりとオアシスに向かい始める。
五人はオアシスに向かって歩いている。ゆっくりと、ゆっくりと、歩いている。
しかし、オアシスにいく道中、まったくモンスターは出なかった。
そのとき、初めはしりとりなど、暑さを紛らわせながら歩いていた。
が、そんなことは長くは続いていなかった。気が付いたら、無言になっていた。
「やっと、着きましたね」
ユリカはクタクタになりながらもゆっくりと辺りを見渡す。
だがしかし、おかしかった。
「いませんね……」
一香もおかしいことには気づいていた。一香やユリカだけでなく、メンバー全員がおかしいことに気づいていた。
「これは、……どういうことなんですか?」
ユリカは体をセノンの方に向け、手を膝に乗せて言った。
「僕も、こんなことになったことは初めてで、何が起きているかいまいち把握しきれていません。ただ言えることは、水がないところにはモンスターであっても存在することはできないのではないか……ということです」
セノンはほかのメンバーとは違い、身体は疲労には全くというほど襲われていなかった。
が、おかしいのはセノンがいつも通りってことではない。
おかしいことはオアシスに水がない。そこにあったのは少し窪んだ土地だけだった。さらに、モンスターが一体も存在していない。このことだった。
「とりあえず、きっとこの砂漠エリアにはモンスターはもう存在してないと思います。なので、これは塔の隣にある役場、そこの受付に報告するべきです」
「……そう、ですよね……」
ユリカはセノンほど体力が残っていなかった。
そして、三人の子供たちはもう話すことがいやになるくらいであった。
「では、この報告は僕が行ってきます。皆さんは初めての砂漠エリアで慣れていないこともあるでしょう。今日はゆっくり体を休めてください。もちろん、ユリカさんも、無理だけはしないように」
「はい。……ありがとうございます」
セノンは、ギルドメンバーを家に帰した。
そして、自分はというと役場に向かっていた。
彼が役場につくと、一ノ瀬のもとへ行っていた。
「あ、セノンさん。昨日はありがとうございます。ローレンさんのギルド、全員無事で何よりでした。それで、今日はどんなご用件ですか?」
「実は――」
セノンは先ほど砂漠エリアであったことをすべて話した。
「なるほど……それはこちらの調査不足です。申し訳ございませんでした」
「いえいえいえいえ。一ノ瀬さんのせいではありませんよ」
「そういっていただけて、助かります。では、その件については、こちらで、原因を調べておきますね。こちらでの調査が終わるまでは、二階層の砂漠エリアは進入禁止となります」
「わかりました」
「それで、調査し、結果が出た後、セノンさんには連絡が行くようにしますね」
「わかりました。ありがとうございます」
セノンは一ノ瀬に向かい、軽く礼をした。そして、その場を立ち去った。
そのとき、後ろから、「ありがとうございました」という一ノ瀬の声が聞こえた。
一ノ瀬はその後セノンには何も聞こえないように「さすがセノンさんですね」と呟いた。
その砂漠エリアは気温四十度を超えていた。地面にある軽い砂は、風が少し吹くだけで強く舞う。それが体にあたるとまれにダメージになることもある。また、その風すらも暖かい。そのため、体を休める場所はどこにもない。
「ここって本当に暑いんですね~」
一香はいつもより緩めに装備を付けていた。
しかし、地肌にあたるのは、暖かい風、ぶつかってくる砂。一香から滴る汗はというと地面に落ちるとすぐに蒸発してしまっていた。
「そうだね~。ここでモンスターに攻撃されると、ダメージはいつもの一・五倍。回復はいつもの半分しかしなくなります。つまり、ここではいかにモンスターの攻撃をよけるか、が大事なのです。そうですよね? セノンさん」
ユリカは人差し指を立てて、愉快に話す。そして、ユリカも、一香同様汗をかいていたため露出がいつもより激しくなっていた。
「そうですね。大体はユリカさんの言う通りです。しかし、ダメージを避ける。ということよりも、いかに早く相手を倒すか。僕はこれを大事にしていますね。まぁ、これは僕が後衛だから言えることであって、前衛の人は命大事にって感じの方がいいと思います」
「なるほど。確かにその考え方もありますね。まぁ、実践あるのみですので、みんなでモンスターを探しに行きましょう!」
「「「はい!」」」
三人の少年少女は勢いよく返事をする。
しかし、暑さにやられ、すこしHPを消費してしまう。
「「「あ、……」」」
三人はHPが減ったことに気づき、口をポカンと開け、唖然とする。
「最初はよくあることです。僕も初めて来たときは、……ずいぶんはしゃぎましたしね」
セノンが初めて砂漠のエリアにいたのは試練の塔ではなかった。しかし、セノンもそのとき走り回ってHPが気づいたら赤になっていた。ということがあったのだ。
「セノンさんでもそんなことがあったんですか?」
瑠美は少し首を傾げた。
「そうですよ。僕だって昔は子供でしたから」
「まぁ、そうですよね」
瑠美は少し頭の中でセノンの昔を想像してしまう。しかし、瑠美は何度セノンの昔のことを考えても、真面目なお坊ちゃんという感じにしかならなかった。
「まぁ、砂漠エリアにはオアシスがあることが多い。そのオアシスの周りには必ずといっていいほどモンスターがいるからそこに向かうとしますか」
セノンはそう言って、一歩一歩を踏みしめ、五人みんなでゆっくりとオアシスに向かい始める。
五人はオアシスに向かって歩いている。ゆっくりと、ゆっくりと、歩いている。
しかし、オアシスにいく道中、まったくモンスターは出なかった。
そのとき、初めはしりとりなど、暑さを紛らわせながら歩いていた。
が、そんなことは長くは続いていなかった。気が付いたら、無言になっていた。
「やっと、着きましたね」
ユリカはクタクタになりながらもゆっくりと辺りを見渡す。
だがしかし、おかしかった。
「いませんね……」
一香もおかしいことには気づいていた。一香やユリカだけでなく、メンバー全員がおかしいことに気づいていた。
「これは、……どういうことなんですか?」
ユリカは体をセノンの方に向け、手を膝に乗せて言った。
「僕も、こんなことになったことは初めてで、何が起きているかいまいち把握しきれていません。ただ言えることは、水がないところにはモンスターであっても存在することはできないのではないか……ということです」
セノンはほかのメンバーとは違い、身体は疲労には全くというほど襲われていなかった。
が、おかしいのはセノンがいつも通りってことではない。
おかしいことはオアシスに水がない。そこにあったのは少し窪んだ土地だけだった。さらに、モンスターが一体も存在していない。このことだった。
「とりあえず、きっとこの砂漠エリアにはモンスターはもう存在してないと思います。なので、これは塔の隣にある役場、そこの受付に報告するべきです」
「……そう、ですよね……」
ユリカはセノンほど体力が残っていなかった。
そして、三人の子供たちはもう話すことがいやになるくらいであった。
「では、この報告は僕が行ってきます。皆さんは初めての砂漠エリアで慣れていないこともあるでしょう。今日はゆっくり体を休めてください。もちろん、ユリカさんも、無理だけはしないように」
「はい。……ありがとうございます」
セノンは、ギルドメンバーを家に帰した。
そして、自分はというと役場に向かっていた。
彼が役場につくと、一ノ瀬のもとへ行っていた。
「あ、セノンさん。昨日はありがとうございます。ローレンさんのギルド、全員無事で何よりでした。それで、今日はどんなご用件ですか?」
「実は――」
セノンは先ほど砂漠エリアであったことをすべて話した。
「なるほど……それはこちらの調査不足です。申し訳ございませんでした」
「いえいえいえいえ。一ノ瀬さんのせいではありませんよ」
「そういっていただけて、助かります。では、その件については、こちらで、原因を調べておきますね。こちらでの調査が終わるまでは、二階層の砂漠エリアは進入禁止となります」
「わかりました」
「それで、調査し、結果が出た後、セノンさんには連絡が行くようにしますね」
「わかりました。ありがとうございます」
セノンは一ノ瀬に向かい、軽く礼をした。そして、その場を立ち去った。
そのとき、後ろから、「ありがとうございました」という一ノ瀬の声が聞こえた。
一ノ瀬はその後セノンには何も聞こえないように「さすがセノンさんですね」と呟いた。
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