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第一章
第十九話 しゃべるモンスター
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砂漠エリアでクタクタになった次に日。
[エンジェル・ハーツ]は第二階層にある氷河エリアにいた。
「わぁー、すごくかわいいですね!」
ユリカは、砂漠エリアとは違い、いつもより多くの装備を着こんでいた。
そんなユリカは、氷床の上にいるペンギンを見ていた。
そこには多くのペンギンが存在しており、中にはお腹を器用に使い、氷の上を滑ったり、ばたばたと羽を動かし、空にあこがれているペンギンもいた。
「そうですね! ……あれ? あのペンギンは何をしているんでしょうか?」
一香も、装備はいつもより厚く着込んでいた。これは瑠美やセノンも同様で、まるでファッションショーのようでもあった。
「ん、どのペンギンのことかな? 変わった動きをしているペンギンはたくさんいるけど……」
ユリカはたくさんのペンギンの中でこれかな? と思うペンギンがいた。
そのペンギンは二匹いた。二匹は俯いた状態で重なり合っていた。上にいたペンギンは下のペンギンから落ちないように、もう一匹のペンギンは少し羽をばたつかせていた。
「あのペンギンです。二匹が合体している……あれです!」
(あれに目をつけてしまったのか……ユリカはなんて答えるのだろう……)
セノンは心の中でつぶやき、微妙な表情をした。
「やっぱりあのペンギンのことでしたか――」
(やばい、やばすぎる。本人も気づいていたのか……)
セノンは本当に最悪だと思った。
これは吉と出るか凶と出るかわからない。というより、どちらの転がっても凶だと、そう思った。それは、あのペンギンは交尾をしていたのだ。
考えられる要素は主に二つだ。ユリカが何をやっているかわからず、自分に説明が回ってくること。
そして、もう一つはユリカがペンギンの交尾について知っており、それを一香達に説明させられることだ。
「あれは、何をしているのですかね……」
セノンは一瞬ほっとした。しかし、思いもよらない一番最悪なことが起きてしまった。
政次はニヤニヤとしながらユリカの隣に行ったのだ。
「あれはですね――」
政次は交尾のことを知っていたのだ。政次はいつもよりトーンが高めで話しかけたが、
「あれは、あれだよ。ペンギンはああやって体についた虫を取っているんだよ」
「なるほど、そういうことだったんですね! セノンさんって、なんでも知っているんですね!」
「あ、そ、そうだね……」
セノンは少し、一香から目をそらしながら言った。
そして、ひと段落着くと、ふぅ、とため息をこぼす。この時、同じタイミングでユリカもため息をついていた。
ユリカはそれに気が付くと、少し申し訳なさそうにセノンの方を見る。セノンもユリカの方を見ていたため、一瞬目が合い固まった。
数秒後、二人はすぐに目をそらした。
政次はというと、下ネタトークを楽しくやろうと思っていたが、セノンの邪魔が入って悔しがる。今からでも交尾の話に戻そうかと思ったが、自分の今のヒエラルキーからすると、どう抗おうとも、セノンの言ったことはひっくり返らないと思いやめた。
政次はここでやめていなければ、さらにこれからのギルドでの立場を失うところであった。
そこで、ユリカは切り替えを入れて、みんなに話しかける。
「さて、可愛いペンギンたちにも癒されたところで、本題の冒険を始めますよ!」
そんなことを言っていると、モンスターの方からユリカ達に姿を見せるのだった。
そのモンスターは二息歩行をしたアザラシのようなモンスター。
そのモンスターには知性というものが存在していた。そのモンスターはその時一番前にいた政次に話しかける。
「私の名前はアシラザ。あなたの名前は何ですか?」
「お、俺は政次。向井政次」
「ちょっと、なんで簡単に自分の名前を言ってんのよ!」
一香は後ろからアシラザには聞こえないように政次を怒鳴りつける。
「だって、あいつも名前言ってたし……」
「……」
一香はあきれてものも言えなかった。
「私が皆さんの前に自ら姿を見せた。この理由はわかっていますよね?」
「そんな、ことわからないです……」
政次は勢い余って答えを返してしまう。が、途中で気が付き落ち着く。
「それでは一度、説明を入れた方がいいのですね。コホンッ」
アシラザは一度、口に手を当て話始める。
「――まず、モンスターの方から姿を現す。これは人間界ではモンスターが価値を確信した場合のみに起こることだといわれています。つまり、ここで私が姿を現したのはあなた方に勝つという確信があってこそなのです。今までににも必ず名前はお聞きしていました。そして、たまに決闘を選ぶ馬鹿者がいるのです。しかし、そんな奴はみんな殺してしまいました。あ、名前は聞いているので、全員言えますよ? もちろん。言いましょうか? 言い始めえたらきりがないですが……」
これには五人も呆れた顔で聞いていた。
そして、各々、テキトーに相槌を打っている。
「なんですか! その微妙な反応は!」
「いやだって、そんなこと聞いたことないし……それに、僕に勝つことはやってみないとわかんないけど、こっちにはセノンさんもいて、それで、勝とうなんて……胡散臭い」
「せ、せのん?」
アシラザはその名前を少し耳にしたことがあるような気がして、少し考えこむ。
しかし、それは気のせいだと思った。
「そんなことは、どうでもいいのです。死にたくなかったらここにアイテムを全て置いていきなさい。そうすれば見逃してあげましょう」
アシラザは両手を広げ、言ってやったぞ感を出していた。
しかし、そんなこと、この五人には通じるはずもなかった。
政次はゆっくりと刀を引き抜いた。
「なら、俺は戦う方を選択します! さぁ、やりあいましょう!」
氷河エリアの上空にあった太陽の光が政次の刀で反射し、その光がアシラザの目に映る。
すると、アシラザは短い脚をがくがくと振るわせ始めた。
「知らないですからね。選択したのは、あなたです」
アシラザのこえは震え、だんだん小さくなっていた。
しかし、ものすごい勢いで政次の方に飛び掛かった。
それには一瞬政次も驚いたが……アシラザは急に方今転換し、海の中に逃げて行った。
「すみませんでしたー! もうしませーん!」
アシラザはその言葉だけを残していった。
「逃げちゃいましたね」
「そうですね」
「こんなこともあるんですね……」
ユリカはボソッと言ってしまう。これにはアシラザを逃がした政次が反応した。
そして、瑠美でさえも唖然としていた。
「まあ、いいです。これから、ですよ! 私たちのここでの本番は!」
[エンジェル・ハーツ]は第二階層にある氷河エリアにいた。
「わぁー、すごくかわいいですね!」
ユリカは、砂漠エリアとは違い、いつもより多くの装備を着こんでいた。
そんなユリカは、氷床の上にいるペンギンを見ていた。
そこには多くのペンギンが存在しており、中にはお腹を器用に使い、氷の上を滑ったり、ばたばたと羽を動かし、空にあこがれているペンギンもいた。
「そうですね! ……あれ? あのペンギンは何をしているんでしょうか?」
一香も、装備はいつもより厚く着込んでいた。これは瑠美やセノンも同様で、まるでファッションショーのようでもあった。
「ん、どのペンギンのことかな? 変わった動きをしているペンギンはたくさんいるけど……」
ユリカはたくさんのペンギンの中でこれかな? と思うペンギンがいた。
そのペンギンは二匹いた。二匹は俯いた状態で重なり合っていた。上にいたペンギンは下のペンギンから落ちないように、もう一匹のペンギンは少し羽をばたつかせていた。
「あのペンギンです。二匹が合体している……あれです!」
(あれに目をつけてしまったのか……ユリカはなんて答えるのだろう……)
セノンは心の中でつぶやき、微妙な表情をした。
「やっぱりあのペンギンのことでしたか――」
(やばい、やばすぎる。本人も気づいていたのか……)
セノンは本当に最悪だと思った。
これは吉と出るか凶と出るかわからない。というより、どちらの転がっても凶だと、そう思った。それは、あのペンギンは交尾をしていたのだ。
考えられる要素は主に二つだ。ユリカが何をやっているかわからず、自分に説明が回ってくること。
そして、もう一つはユリカがペンギンの交尾について知っており、それを一香達に説明させられることだ。
「あれは、何をしているのですかね……」
セノンは一瞬ほっとした。しかし、思いもよらない一番最悪なことが起きてしまった。
政次はニヤニヤとしながらユリカの隣に行ったのだ。
「あれはですね――」
政次は交尾のことを知っていたのだ。政次はいつもよりトーンが高めで話しかけたが、
「あれは、あれだよ。ペンギンはああやって体についた虫を取っているんだよ」
「なるほど、そういうことだったんですね! セノンさんって、なんでも知っているんですね!」
「あ、そ、そうだね……」
セノンは少し、一香から目をそらしながら言った。
そして、ひと段落着くと、ふぅ、とため息をこぼす。この時、同じタイミングでユリカもため息をついていた。
ユリカはそれに気が付くと、少し申し訳なさそうにセノンの方を見る。セノンもユリカの方を見ていたため、一瞬目が合い固まった。
数秒後、二人はすぐに目をそらした。
政次はというと、下ネタトークを楽しくやろうと思っていたが、セノンの邪魔が入って悔しがる。今からでも交尾の話に戻そうかと思ったが、自分の今のヒエラルキーからすると、どう抗おうとも、セノンの言ったことはひっくり返らないと思いやめた。
政次はここでやめていなければ、さらにこれからのギルドでの立場を失うところであった。
そこで、ユリカは切り替えを入れて、みんなに話しかける。
「さて、可愛いペンギンたちにも癒されたところで、本題の冒険を始めますよ!」
そんなことを言っていると、モンスターの方からユリカ達に姿を見せるのだった。
そのモンスターは二息歩行をしたアザラシのようなモンスター。
そのモンスターには知性というものが存在していた。そのモンスターはその時一番前にいた政次に話しかける。
「私の名前はアシラザ。あなたの名前は何ですか?」
「お、俺は政次。向井政次」
「ちょっと、なんで簡単に自分の名前を言ってんのよ!」
一香は後ろからアシラザには聞こえないように政次を怒鳴りつける。
「だって、あいつも名前言ってたし……」
「……」
一香はあきれてものも言えなかった。
「私が皆さんの前に自ら姿を見せた。この理由はわかっていますよね?」
「そんな、ことわからないです……」
政次は勢い余って答えを返してしまう。が、途中で気が付き落ち着く。
「それでは一度、説明を入れた方がいいのですね。コホンッ」
アシラザは一度、口に手を当て話始める。
「――まず、モンスターの方から姿を現す。これは人間界ではモンスターが価値を確信した場合のみに起こることだといわれています。つまり、ここで私が姿を現したのはあなた方に勝つという確信があってこそなのです。今までににも必ず名前はお聞きしていました。そして、たまに決闘を選ぶ馬鹿者がいるのです。しかし、そんな奴はみんな殺してしまいました。あ、名前は聞いているので、全員言えますよ? もちろん。言いましょうか? 言い始めえたらきりがないですが……」
これには五人も呆れた顔で聞いていた。
そして、各々、テキトーに相槌を打っている。
「なんですか! その微妙な反応は!」
「いやだって、そんなこと聞いたことないし……それに、僕に勝つことはやってみないとわかんないけど、こっちにはセノンさんもいて、それで、勝とうなんて……胡散臭い」
「せ、せのん?」
アシラザはその名前を少し耳にしたことがあるような気がして、少し考えこむ。
しかし、それは気のせいだと思った。
「そんなことは、どうでもいいのです。死にたくなかったらここにアイテムを全て置いていきなさい。そうすれば見逃してあげましょう」
アシラザは両手を広げ、言ってやったぞ感を出していた。
しかし、そんなこと、この五人には通じるはずもなかった。
政次はゆっくりと刀を引き抜いた。
「なら、俺は戦う方を選択します! さぁ、やりあいましょう!」
氷河エリアの上空にあった太陽の光が政次の刀で反射し、その光がアシラザの目に映る。
すると、アシラザは短い脚をがくがくと振るわせ始めた。
「知らないですからね。選択したのは、あなたです」
アシラザのこえは震え、だんだん小さくなっていた。
しかし、ものすごい勢いで政次の方に飛び掛かった。
それには一瞬政次も驚いたが……アシラザは急に方今転換し、海の中に逃げて行った。
「すみませんでしたー! もうしませーん!」
アシラザはその言葉だけを残していった。
「逃げちゃいましたね」
「そうですね」
「こんなこともあるんですね……」
ユリカはボソッと言ってしまう。これにはアシラザを逃がした政次が反応した。
そして、瑠美でさえも唖然としていた。
「まあ、いいです。これから、ですよ! 私たちのここでの本番は!」
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