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45. デュエル開始
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(シロム視点)
石畳の広場の上でゴリアスと名乗った戦士と向かい合う。広場に立っているのは僕達ふたりだけ、アーシャ様達や精霊王様達は広場の外にでてこちらを見守っている。チーアルは僕の背中だ。
この頃になると恐怖が心に沸き上がって来きた。やはり僕はヘタレだ、アキュリス皇子に腹を立てて対戦を受け入れたものの、僕なんか指一本で倒しそうな相手を見ている内に全身が振るえてきた。
「若いの、全力で来い。俺も遠慮はせん。」
ゴリアスさんが僕に声を掛けて来る。
「わ、わ、わかりました。」
応じる声が震える。
<< シロム! しっかりしなさい。ウィンディーネ様を助けたいんでしょう。まずはこの戦いに勝つことよ。>>
<< どうしてそれを.... >>
<< バカね、シロムの心はバレバレだって言ったでしょう。>>
そうだった.....チーアルに隠し事はできない。
<< そうなんだ。ウィンディーネさんを助けたい。力を貸してくれ。>>
<< まったく恋は盲目ね。ヘタレのシロムが戦う気になるなんて、アルムの事をとやかく言えないわね。>>
<< そうかもな。>>
「始め!」
精霊王様の号令が下る。ハッとした途端目の前に長剣が迫る。ゴリアスさんが開始の合図とともに剣を投げたのだ。見事に僕の眉間目掛けて飛んできた剣は指1本分の隙間を残し停止し、僕は恐怖の余りその場に座り込んだ。股間が温かい、漏らした....。
<< しっかりして! 次が来る。>>
見るとゴリアスさんが短剣を手にすぐ傍まで迫っている。剣を投げるのと同時に僕に突進してきたのだろう。死ぬ! と思った瞬間、ゴリアスさんが跳び退いて距離を取った。
いつの間にか、僕を中心としてドーナツ状に真っ黒い影が石畳に延びていた。ゴリアスさんはこの影に踏み込む直前に跳び退いた様だ。
<< もうちょっとだったのに....思ったより手強いわよ。>>
チーアルの仕業だ。ゴリアスさんがあの影に踏み込んでいたらどうなっていたのだろう....。
だが考えている暇はなかった。ゴリアスさんは僕の周りを走りながらナイフを投げて来るが、ナイフも剣と同様、僕に達する直前空中で停止する。その後もゴリアスさんは広場をジグザグに走り回りながら時折ナイフを投げて来る。走り回っているのは自分を追いかけて来る影から逃げているのだ。
<< 不味いわね。普通ならこの広場くらい影で覆えるのだけど、今はこれが精いっぱい。あれだけすばしっこいとこのまま追いかけっこを続けるしかない。相手の体力が尽きるか、私の力が尽きるかの勝負になる。シロム、貴方も走るの。走って相手をコーナーに追い詰めなさい。逃げ場を無くすのよ。>>
チーアルにそう言われて走り出す。僕が走ると僕の両側に1列に並んだ影が一緒に移動する。この影を使ってゴリアスさんをコーナーに追い詰める作戦なのだろう。だが、この作戦は大きな欠点があった。僕の情けない体力だ。身軽に駆け回るゴリアスさんを必死で追いかけるうちに直ぐに体力が尽きた。僕が止って息を整えているとゴリアスさんも立ち止る。
そうだ、なにもずっと走っていることはない、ゴリアスさんの動きに合わせて動き、少しずつ追い詰めるんだ。要はどうすれば相手を追い詰められるか頭の勝負だ。そう考えて体力を温存しながらゴリアスさんの動きに合わせて僕も動く。ゴリアスさんが右に動けば僕も右に、左に動けは左に、後ろに下がれば前に出る。この作戦は功を奏し、ゴリアスさんは徐々にコーナーのひとつに追い詰められた。
もうちょっとと思った時、チーアルが「危ない!」と叫ぶ。次の瞬間頭上から沢山の氷の矢が落ちて来た。チーアルが必死に防御してくれるが、その内の1本が僕の左肩に深々と突き刺さった。小型の槍くらいある大きな矢だ。ゴリアスさんは魔法も使えたのだ。こっそりと上空に氷の矢を作って、その地点に僕をおびき寄せたわけだ。
<< シロム! 大丈夫? しっかりして! >>
幸い急所は外れている、だが氷の矢が霧となって消えると傷口から大量の血が噴き出した。左腕の感覚が無い、痛くない代わりに肩から腕にかけてが燃える様に熱い。もちろん左腕は全く動かない。これでは長くは持たない。出血により戦闘不能になったら僕の負けだ。
<< シロム最後の賭けよ。このまま反対側のコーナーまで走るの。>>
<< 分かった >>
訳は分からないがチーアルの指示通りに全力で走る、だが徐々に目の前が暗くなって来る。
<< もうちょっとよ! >>
もう目が霞む....。体力が尽きて僕はそのまま石畳の上に倒れ込んだ。その途端チーアルが宙に舞う。チーアル! 僕から離れたら消えてしまうと言っていた! 必死に右手を伸ばすが届かない。霞む視界の中、空から再び氷の矢が降って来るのが見えた。そしてチーアルが妖精に分解する....もう駄目だ....。
だが結果は僕の予想とは180度違った。降り注ぐ氷の矢はすべてチーアルが分解した妖精によって防がれ、留めを刺そうと走り寄って来ていたゴリアスさんは残りの妖精の総攻撃を受け場外まで吹き飛んだ。
<< チーアル!!!! >>
必死に叫ぶが応答はない。
「それまで! 勝負ありだ。」
精霊王様が戦いの終了を宣言するが、僕はそれどころじゃない。
<< チーアル。バカ....僕から離れたら消えてしまうと言っていたじゃないか。こっちに戻らずに攻撃に転じるなんて.... >>
僕は石畳に倒れたまま動けなかった。涙が止まらない.....。
<< ふふん。ご主人様はやっぱり私が居ないとダメな様ね。>>
目を開けると、上空からチーアルがゆっくりと降りて来るところだった。必死で立ち上がり動く右手でチーアルを抱きしめる。
<< それより、早く肩の傷を治療しなさいよ。もう勝負は着いたのだから預言者の杖を使っても良いのよ。>>
そう言われて預言者の杖を取り出す。杖を使うと僕の身体が金色に輝き忽ち傷が全快する。その上で改めてチーアルを抱きしめた。
<< ちょっと! 苦しいって! 力を入れ過ぎよ。>>
<< チーアルどうして? 僕から離れたら消えてしまうと言ってたじゃないか....>>
<< 後ろを見てみなさいよ。>>
そう言われて振り向くと、僕達のいるコーナーのすぐ外に精霊王様の巨大なお姿があった。
<< ここは神の気が強すぎるから精霊にとっては危険な場所だけど、精霊王様の周りだけは違う。精霊王様が発する気が神の気を追い出しているからね。ここなら私の本来の力が使えるかもと思ったわけ。賭けだったけどね。>>
そうか、結果はともかく危険な賭けだったのは間違いないわけだ。
<< ごめんな、不甲斐ない主人で....。>>
<< バ、バカね。シロムがヘタレで頼りにならないことぐらい最初から分かっているわよ。>>
思わずもう一度チーアルを抱きしめた。だが僕が感傷に浸っていると冷酷な声が聞こえて来た。
「愚か者! そんな役立たずは放って置け。とっとと引き返すぞ! 」
声のした方をみると、アキュリス皇子がウィンディーネさんを叱責していた。ウィンディーネさんはゴリアスさんの傍に屈みこんでいるから、ゴリアスさんの治療をしようとしていたのかもしれない。
「嫌です!」
ウィンディーネさんが叫び、ゴリアスさんの身体が光る。やはりゴリアスさんの治療をしてくれているのだ。
石畳の広場の上でゴリアスと名乗った戦士と向かい合う。広場に立っているのは僕達ふたりだけ、アーシャ様達や精霊王様達は広場の外にでてこちらを見守っている。チーアルは僕の背中だ。
この頃になると恐怖が心に沸き上がって来きた。やはり僕はヘタレだ、アキュリス皇子に腹を立てて対戦を受け入れたものの、僕なんか指一本で倒しそうな相手を見ている内に全身が振るえてきた。
「若いの、全力で来い。俺も遠慮はせん。」
ゴリアスさんが僕に声を掛けて来る。
「わ、わ、わかりました。」
応じる声が震える。
<< シロム! しっかりしなさい。ウィンディーネ様を助けたいんでしょう。まずはこの戦いに勝つことよ。>>
<< どうしてそれを.... >>
<< バカね、シロムの心はバレバレだって言ったでしょう。>>
そうだった.....チーアルに隠し事はできない。
<< そうなんだ。ウィンディーネさんを助けたい。力を貸してくれ。>>
<< まったく恋は盲目ね。ヘタレのシロムが戦う気になるなんて、アルムの事をとやかく言えないわね。>>
<< そうかもな。>>
「始め!」
精霊王様の号令が下る。ハッとした途端目の前に長剣が迫る。ゴリアスさんが開始の合図とともに剣を投げたのだ。見事に僕の眉間目掛けて飛んできた剣は指1本分の隙間を残し停止し、僕は恐怖の余りその場に座り込んだ。股間が温かい、漏らした....。
<< しっかりして! 次が来る。>>
見るとゴリアスさんが短剣を手にすぐ傍まで迫っている。剣を投げるのと同時に僕に突進してきたのだろう。死ぬ! と思った瞬間、ゴリアスさんが跳び退いて距離を取った。
いつの間にか、僕を中心としてドーナツ状に真っ黒い影が石畳に延びていた。ゴリアスさんはこの影に踏み込む直前に跳び退いた様だ。
<< もうちょっとだったのに....思ったより手強いわよ。>>
チーアルの仕業だ。ゴリアスさんがあの影に踏み込んでいたらどうなっていたのだろう....。
だが考えている暇はなかった。ゴリアスさんは僕の周りを走りながらナイフを投げて来るが、ナイフも剣と同様、僕に達する直前空中で停止する。その後もゴリアスさんは広場をジグザグに走り回りながら時折ナイフを投げて来る。走り回っているのは自分を追いかけて来る影から逃げているのだ。
<< 不味いわね。普通ならこの広場くらい影で覆えるのだけど、今はこれが精いっぱい。あれだけすばしっこいとこのまま追いかけっこを続けるしかない。相手の体力が尽きるか、私の力が尽きるかの勝負になる。シロム、貴方も走るの。走って相手をコーナーに追い詰めなさい。逃げ場を無くすのよ。>>
チーアルにそう言われて走り出す。僕が走ると僕の両側に1列に並んだ影が一緒に移動する。この影を使ってゴリアスさんをコーナーに追い詰める作戦なのだろう。だが、この作戦は大きな欠点があった。僕の情けない体力だ。身軽に駆け回るゴリアスさんを必死で追いかけるうちに直ぐに体力が尽きた。僕が止って息を整えているとゴリアスさんも立ち止る。
そうだ、なにもずっと走っていることはない、ゴリアスさんの動きに合わせて動き、少しずつ追い詰めるんだ。要はどうすれば相手を追い詰められるか頭の勝負だ。そう考えて体力を温存しながらゴリアスさんの動きに合わせて僕も動く。ゴリアスさんが右に動けば僕も右に、左に動けは左に、後ろに下がれば前に出る。この作戦は功を奏し、ゴリアスさんは徐々にコーナーのひとつに追い詰められた。
もうちょっとと思った時、チーアルが「危ない!」と叫ぶ。次の瞬間頭上から沢山の氷の矢が落ちて来た。チーアルが必死に防御してくれるが、その内の1本が僕の左肩に深々と突き刺さった。小型の槍くらいある大きな矢だ。ゴリアスさんは魔法も使えたのだ。こっそりと上空に氷の矢を作って、その地点に僕をおびき寄せたわけだ。
<< シロム! 大丈夫? しっかりして! >>
幸い急所は外れている、だが氷の矢が霧となって消えると傷口から大量の血が噴き出した。左腕の感覚が無い、痛くない代わりに肩から腕にかけてが燃える様に熱い。もちろん左腕は全く動かない。これでは長くは持たない。出血により戦闘不能になったら僕の負けだ。
<< シロム最後の賭けよ。このまま反対側のコーナーまで走るの。>>
<< 分かった >>
訳は分からないがチーアルの指示通りに全力で走る、だが徐々に目の前が暗くなって来る。
<< もうちょっとよ! >>
もう目が霞む....。体力が尽きて僕はそのまま石畳の上に倒れ込んだ。その途端チーアルが宙に舞う。チーアル! 僕から離れたら消えてしまうと言っていた! 必死に右手を伸ばすが届かない。霞む視界の中、空から再び氷の矢が降って来るのが見えた。そしてチーアルが妖精に分解する....もう駄目だ....。
だが結果は僕の予想とは180度違った。降り注ぐ氷の矢はすべてチーアルが分解した妖精によって防がれ、留めを刺そうと走り寄って来ていたゴリアスさんは残りの妖精の総攻撃を受け場外まで吹き飛んだ。
<< チーアル!!!! >>
必死に叫ぶが応答はない。
「それまで! 勝負ありだ。」
精霊王様が戦いの終了を宣言するが、僕はそれどころじゃない。
<< チーアル。バカ....僕から離れたら消えてしまうと言っていたじゃないか。こっちに戻らずに攻撃に転じるなんて.... >>
僕は石畳に倒れたまま動けなかった。涙が止まらない.....。
<< ふふん。ご主人様はやっぱり私が居ないとダメな様ね。>>
目を開けると、上空からチーアルがゆっくりと降りて来るところだった。必死で立ち上がり動く右手でチーアルを抱きしめる。
<< それより、早く肩の傷を治療しなさいよ。もう勝負は着いたのだから預言者の杖を使っても良いのよ。>>
そう言われて預言者の杖を取り出す。杖を使うと僕の身体が金色に輝き忽ち傷が全快する。その上で改めてチーアルを抱きしめた。
<< ちょっと! 苦しいって! 力を入れ過ぎよ。>>
<< チーアルどうして? 僕から離れたら消えてしまうと言ってたじゃないか....>>
<< 後ろを見てみなさいよ。>>
そう言われて振り向くと、僕達のいるコーナーのすぐ外に精霊王様の巨大なお姿があった。
<< ここは神の気が強すぎるから精霊にとっては危険な場所だけど、精霊王様の周りだけは違う。精霊王様が発する気が神の気を追い出しているからね。ここなら私の本来の力が使えるかもと思ったわけ。賭けだったけどね。>>
そうか、結果はともかく危険な賭けだったのは間違いないわけだ。
<< ごめんな、不甲斐ない主人で....。>>
<< バ、バカね。シロムがヘタレで頼りにならないことぐらい最初から分かっているわよ。>>
思わずもう一度チーアルを抱きしめた。だが僕が感傷に浸っていると冷酷な声が聞こえて来た。
「愚か者! そんな役立たずは放って置け。とっとと引き返すぞ! 」
声のした方をみると、アキュリス皇子がウィンディーネさんを叱責していた。ウィンディーネさんはゴリアスさんの傍に屈みこんでいるから、ゴリアスさんの治療をしようとしていたのかもしれない。
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