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32. ラナさんの魔法
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念話でラナさんにオカミの群が逃げたことを伝える。<< 了解しました。>> と念話が返って来たが、念に力が無い。心配して急いで戻ると、案の定、居住地の出入り口近くで座り込んでいた。魔力が枯渇する一歩手前だ。探査魔法で確認すると、私が先ほど作った様なアーススピアが並んだ地面が、出入り口を除いて帯状に居住地を取り囲んでいる。私がラナさんに居住地の防御を頼んだばっかりに、無理をさせてしまった様だ。出入り口近くで待機していたのは、一族の男達が帰還したら出入り口もアーススピアで塞ぐつもりだったのだろう。とりあえずアーススピアが一族の者に見つかるとまずいのでラナさんに断ってから消去する。その後は歩いて自分達の天幕に向かった。
「ラナさん、無理をさせてしまって御免なさい。それにせっかく作ってくれたアーススピアも無駄にさせてしまったしね。」
「イルさん、何言っているんですか、私のアーススピアが役に立つとしたら、この居住地がオカミに襲われた時でしたからね。無駄になって良かったんですよ。」
「それに...」
と私は、ラナさんを苦しめたオカミのボスを見逃してしまったことを伝える。するとラナさんは意外にも嬉しそうに笑った。
「うふふ。イルさん、いえ、イル様。私、以前から魔導士様ってどんな方だろうと色々考えていたんです。私達魔法使いの頂点で、人の枠を超えた力を持っておられて、王様ですら一目置くとっても偉いお方だから、きっと貴族様の様に、私達奴隷や庶民のことなんて眼中にないだろうなって思っていました。でもイル様は奴隷の私だけでなく、オカミまで気に掛けて下さるとってもお優しい方です。私、それがとっても嬉しいんです。イル様にお会いできたことは私の人生で最高の幸運です。」
と、とんでもないことを言い出した。私はただの小娘だよ。魔導士という称号だってララ女王が勝手に言い出しただけだし。恥ずかしさを誤魔化すのに、
「ラナさんの幸運は、私じゃなくヤラン兄さんに会えたことじゃないのかな?」
と返すと、ラナさんの顔が真っ赤になった。なんと分かり易い人だろう。ヤラン兄さんとラナさんが結婚したら、美男美女の夫婦になる。獣人族と人間族の違いがあるけど、そんなの耳の形がちょっと違うのと、しっぽが有るか無いかだけだ。ラナさんは良い人だし、頑張り屋だし、私はいいと思う。親友のカライには悪いけど、歳から言っても似合いのカップルだと思うよ。
ラナさんと天幕にもどり、ふたりで待っているとヤラン兄さんが帰って来た。オカミの群はどこかに去った様なので見張りを除いて解散となったらしい。母さんと姉さんもすぐに戻って来るだろうとのことだ。そこまでは良かったのだが、兄さんが私の顔を見ながら、
「それで、イルは何をしたのかな?」
と聴いてくる。バレてる?
「居住地にもどる俺達を追いかけていたオカミの群が、いつの間にかいなくなっていたんだ。あんなに必死に追いかけていたのにあまりに不自然だよ。」
そうか、まあ母さんには心配させない様に黙っておくつもりだったけど、兄さんには後で話すつもりだったからバレても構わない。私がオカミのボスを逃がしてしまったことを白状すると、兄さんは少し間を置いてから言った。
「イル、お前が戦士だったら叱っていたところだが、お前は女の子だ。女の子は優しいって言うからな、それでいいんじゃないか。それに俺達がイルに助けられたのは間違いない。あのままオカミの群が居住地に来ていたら、犠牲者なしでは済まなかったはずだ。ありがとうな。」
「本当はね、居住地にオカミが来ても大丈夫だったの。ラナさんが魔法でオカミが居住地に入れない様にしてくれていたのよ。ヘトヘトになるまで頑張ってくれたんだから。」
と言うとヤラン兄さんが驚いた様にラナさんを見た。あれ、ラナさんが魔法使いだって言うのは報告済みだよね。
「それはすごいな。ありがとう、ラナ。」
「と、とんでもありません。私なんか...」
と言いながら真っ赤になっている。あれ、目に涙が。兄さんに褒められたのがよほど嬉しかったのだろう。このままふたりがいい雰囲気になれば良いなと思ったが、直後に母さんと姉さんが帰ってきて、ふたりの会話はここまでで終わってしまった。さらに姉さんがラナさんの涙を見つけて、
「ヤラン! 女の子を泣かせるなんて最低よ!」
と言い出したから話がややこしくなった。ラナさんがあわてて否定するが、母さんの前で私達の行動を報告する訳にも行かず困っていると、今度は母さんが発言した。
「違うわよ、アイラ。これはそんなんじゃないわ。うふふ、口を挟むだけヤボってやつよ。」
母さんのこの一言でその場は収まった。さすが私の恋愛の師匠だ、ふたりのこともお見通しの様である。
翌日、明るくなると直ぐ偵察隊が出発した。オカミの足跡を追いかけ、この近くに潜んでいるのか、それとも遠くに去ってしまったのか探るのだ。兄さんも長老から頼まれ偵察隊に加わった。頼りにされている兄である。私とラナさんはラクダルの世話をしながら兄さんの帰りを待っていた。ふたりになるとラナさんが呟いた。
「私、最近変なんです。すぐに涙がこぼれてしまって。昨日もアイラさんに誤解されて、ヤラン様にご迷惑をお掛けしてしまいました。いやな女と思われたでしょうね...。」
と落ち込んでいる様子だ。
「ラナさん、無理をさせてしまって御免なさい。それにせっかく作ってくれたアーススピアも無駄にさせてしまったしね。」
「イルさん、何言っているんですか、私のアーススピアが役に立つとしたら、この居住地がオカミに襲われた時でしたからね。無駄になって良かったんですよ。」
「それに...」
と私は、ラナさんを苦しめたオカミのボスを見逃してしまったことを伝える。するとラナさんは意外にも嬉しそうに笑った。
「うふふ。イルさん、いえ、イル様。私、以前から魔導士様ってどんな方だろうと色々考えていたんです。私達魔法使いの頂点で、人の枠を超えた力を持っておられて、王様ですら一目置くとっても偉いお方だから、きっと貴族様の様に、私達奴隷や庶民のことなんて眼中にないだろうなって思っていました。でもイル様は奴隷の私だけでなく、オカミまで気に掛けて下さるとってもお優しい方です。私、それがとっても嬉しいんです。イル様にお会いできたことは私の人生で最高の幸運です。」
と、とんでもないことを言い出した。私はただの小娘だよ。魔導士という称号だってララ女王が勝手に言い出しただけだし。恥ずかしさを誤魔化すのに、
「ラナさんの幸運は、私じゃなくヤラン兄さんに会えたことじゃないのかな?」
と返すと、ラナさんの顔が真っ赤になった。なんと分かり易い人だろう。ヤラン兄さんとラナさんが結婚したら、美男美女の夫婦になる。獣人族と人間族の違いがあるけど、そんなの耳の形がちょっと違うのと、しっぽが有るか無いかだけだ。ラナさんは良い人だし、頑張り屋だし、私はいいと思う。親友のカライには悪いけど、歳から言っても似合いのカップルだと思うよ。
ラナさんと天幕にもどり、ふたりで待っているとヤラン兄さんが帰って来た。オカミの群はどこかに去った様なので見張りを除いて解散となったらしい。母さんと姉さんもすぐに戻って来るだろうとのことだ。そこまでは良かったのだが、兄さんが私の顔を見ながら、
「それで、イルは何をしたのかな?」
と聴いてくる。バレてる?
「居住地にもどる俺達を追いかけていたオカミの群が、いつの間にかいなくなっていたんだ。あんなに必死に追いかけていたのにあまりに不自然だよ。」
そうか、まあ母さんには心配させない様に黙っておくつもりだったけど、兄さんには後で話すつもりだったからバレても構わない。私がオカミのボスを逃がしてしまったことを白状すると、兄さんは少し間を置いてから言った。
「イル、お前が戦士だったら叱っていたところだが、お前は女の子だ。女の子は優しいって言うからな、それでいいんじゃないか。それに俺達がイルに助けられたのは間違いない。あのままオカミの群が居住地に来ていたら、犠牲者なしでは済まなかったはずだ。ありがとうな。」
「本当はね、居住地にオカミが来ても大丈夫だったの。ラナさんが魔法でオカミが居住地に入れない様にしてくれていたのよ。ヘトヘトになるまで頑張ってくれたんだから。」
と言うとヤラン兄さんが驚いた様にラナさんを見た。あれ、ラナさんが魔法使いだって言うのは報告済みだよね。
「それはすごいな。ありがとう、ラナ。」
「と、とんでもありません。私なんか...」
と言いながら真っ赤になっている。あれ、目に涙が。兄さんに褒められたのがよほど嬉しかったのだろう。このままふたりがいい雰囲気になれば良いなと思ったが、直後に母さんと姉さんが帰ってきて、ふたりの会話はここまでで終わってしまった。さらに姉さんがラナさんの涙を見つけて、
「ヤラン! 女の子を泣かせるなんて最低よ!」
と言い出したから話がややこしくなった。ラナさんがあわてて否定するが、母さんの前で私達の行動を報告する訳にも行かず困っていると、今度は母さんが発言した。
「違うわよ、アイラ。これはそんなんじゃないわ。うふふ、口を挟むだけヤボってやつよ。」
母さんのこの一言でその場は収まった。さすが私の恋愛の師匠だ、ふたりのこともお見通しの様である。
翌日、明るくなると直ぐ偵察隊が出発した。オカミの足跡を追いかけ、この近くに潜んでいるのか、それとも遠くに去ってしまったのか探るのだ。兄さんも長老から頼まれ偵察隊に加わった。頼りにされている兄である。私とラナさんはラクダルの世話をしながら兄さんの帰りを待っていた。ふたりになるとラナさんが呟いた。
「私、最近変なんです。すぐに涙がこぼれてしまって。昨日もアイラさんに誤解されて、ヤラン様にご迷惑をお掛けしてしまいました。いやな女と思われたでしょうね...。」
と落ち込んでいる様子だ。
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