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68. 神様からのお願い
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まず魂だけど、魂は生きている物すべてが持っている。どのように下等な生物であれ植物でもね。そして魂はその生き物が死ぬと次の身体に転生するんだ。それを繰り返していく内に、魂は少しづつ成長して行く。魂が成長すると転生するときに成長した魂にふさわしい身体に入るんだ。だから、魂が成長するに連れて、身体の方も下等な生物からより高度な思考や感情を持った生物に変わって行く。その生物の頂点のひとつが人族ってわけ。だから、人族に生まれたというだけでかなり成長した魂をもっていることになる。
だけど、魂の成長はそれで終わりではないんだよ。人族の魂がさらに成長すると、魔力を得て魔法が使える様になり、さらに成長すると前世の記憶を覚えている様になる。だから、イルちゃんの魂はこの世界に生まれた時点で、他の人より少し上の段階まで成長していたと言えるだろうね。でもね、それより更に魂が成長すると人族の身体も成長した魂に合わなくなるんだ。魔力が強くなり過ぎて人族の身体では耐えられないんだよ。もっとも、そうなるまでには前世の記憶を覚えている様になってからでも、何十回、何百回も生まれ変わる必要があるのが普通だけどね。
だから、ほんの数日の間に起こったというイルちゃんの魂の成長は異例中の異例なんだ。恐らく魔晶石の魔力を使ったことで、最高神であるリリ様の魔力に触れたからだと思うけど、通常は神の魔力に触れた途端に魔力中毒で死んでしまうよ。そしてもうひとつ不思議なことは、魂が成長した後も人の身体のままで平然と暮らしていることだね。だけど、イルちゃんの魂を見て、魂が成長した後も人の身体で過ごせている理由は分かったよ。魂のコントロールが完全に出来ているよね。魂をコントロールして、余計な魔力が身体に流れ込んで魔力中毒になることを防いでいるわけだ。>>
なんと、私の魂の成長は神様から見ても異例中の異例だったのか! でも、どうして?
<< 最高神様の魔力に触れると誰でも魂が成長するのですか? >>
<< 分からない、ほとんど前例がないんだ。先ほども言った様に、人がリリ様の魔力にまともに触れれば、魔力中毒で確実に死んでしまうからね。>>
<< そうなんですね...。>>
<< ごめん、話が長くなったね。それで、僕からイルちゃんへのお願いと言うのは...一言で言うと、イルちゃんにこの世界を管理する神になって欲しいんだ。イルちゃんの魂は既に神レベルにまで成長しているからね。>>
なんと、この神様までドスモさんの様に勘違いしている様だ。
<< あの、私は神には成れません。ドスモさんが、私は神になるには経験が1000年分足りないと言ってました。>>
<< ああ、それはドスモから聞いているよ。正直僕も、もう少し経験があった方が良いだろうとは思うんだけどね。でも実は、今この宇宙はそんなことを言ってられる状態では無くて...。正直に言うと、ある理由で神の数が大幅に減ってしまったんだよ。そのため、神の加護が得られない世界が1万個ほど出来てしまっていてね。その内5000ほどの世界は最高神のリリ様と中級神達が順繰りに巡って加護を与えているけれど、残りの5000には何も出来ていないのが実情なんだ。このままではそれらの世界の多くが滅びてしまうだろうけど、現状ではこれが限界でね...。>>
<< それって、私達の世界も滅びてしまうと言うことですか!? >>
<< いいや、この世界は僕が定期的にやって来て加護を与えている。もっとも長く留まるだけの余裕はないので、この世界に大規模な地震や火山の噴火、地殻変動、異常気象などの自然災害が起きない様にしているだけで、それ以上のことは出来てないけどね。ドスモ達に声をかける余裕すらなかったんだ。僕が担当している世界はここ以外にも沢山あるからね。それでね、イルちゃんがこの世界を守る下級神となってくれるなら、僕は神の加護が与えられていない別の世界を救いに行くことが出来るわけ。もうひとつ世界を救うことが出来るんだ。>>
ちょっと待ってくれ...話が大きすぎて付いて行けない。5000もの世界が滅びかけているって??? なにより世界ってそんなに沢山あるってことに驚いた。流石神様だ、スケールが違うと言うか、付いて行けないと言うか、混乱して考えが纏まらない。世界が滅びるなんて聞いて、知らんぷりなんて出来ないけど、でも神様になったらアマルと結婚できないだろうな。母さんや兄さん、ラナさんとも別れなければならないかもしれない。それはいやだよ!
<< 泣かないで。そのことなら、何とかなるかもしれないよ。>>
そう言われて、自分が涙を流しているのに気付いた。それに何とかなるって??? あ、念話で話していたから考えていることを読まれたんだと気付く。
<< ご免ね、勝手に思考を読んでしまった。でも、神になっても結婚は出来るよ。珍しいのは確かだけど、実際に人と結婚している神がいるからね。家族とも別れる必要はない。それにイルちゃんにやって欲しいのは、今まで僕がやっていた自然災害の防止だけさ。これは神の魔力がないとできないことだけど、そのための魔道具が発明されていてね。必要なのは魔道具への魔力チャージだけだから、それほど手間は取らない。この魔道具が発明されたので5000もの世界を救うことが出来たんだ。だから、イルちゃんは神になった後も今まで通りの生活を送ることが出来るし、ご家族とも別れる必要はないだろう。
自然災害の防止以外のことは、それぞれの世界を管理する神の裁量に任されているよ。自然災害以外の理由で世界が滅びることはめったにない。例えば大規模な戦争が起こっても、少なくとも勝った方は生き残る可能性が高いからね。だから、神の中には人同士の争いを防ぐために積極的に人の社会に関与する奴もいるし、戦争が起こっても放置する奴もいる。どうするかはイルちゃんが決めて良いんだ。>>
<< 自然災害ってそんなに恐ろしいものなんですか? >>
と疑問に思ったことを聞いてみる。短い人生だけど、嵐に遭った経験はあるし、遠くには火を噴く山があるという話を聞いたこともある。でもそれで世界が滅びてしまうとは思えない。
だけど、魂の成長はそれで終わりではないんだよ。人族の魂がさらに成長すると、魔力を得て魔法が使える様になり、さらに成長すると前世の記憶を覚えている様になる。だから、イルちゃんの魂はこの世界に生まれた時点で、他の人より少し上の段階まで成長していたと言えるだろうね。でもね、それより更に魂が成長すると人族の身体も成長した魂に合わなくなるんだ。魔力が強くなり過ぎて人族の身体では耐えられないんだよ。もっとも、そうなるまでには前世の記憶を覚えている様になってからでも、何十回、何百回も生まれ変わる必要があるのが普通だけどね。
だから、ほんの数日の間に起こったというイルちゃんの魂の成長は異例中の異例なんだ。恐らく魔晶石の魔力を使ったことで、最高神であるリリ様の魔力に触れたからだと思うけど、通常は神の魔力に触れた途端に魔力中毒で死んでしまうよ。そしてもうひとつ不思議なことは、魂が成長した後も人の身体のままで平然と暮らしていることだね。だけど、イルちゃんの魂を見て、魂が成長した後も人の身体で過ごせている理由は分かったよ。魂のコントロールが完全に出来ているよね。魂をコントロールして、余計な魔力が身体に流れ込んで魔力中毒になることを防いでいるわけだ。>>
なんと、私の魂の成長は神様から見ても異例中の異例だったのか! でも、どうして?
<< 最高神様の魔力に触れると誰でも魂が成長するのですか? >>
<< 分からない、ほとんど前例がないんだ。先ほども言った様に、人がリリ様の魔力にまともに触れれば、魔力中毒で確実に死んでしまうからね。>>
<< そうなんですね...。>>
<< ごめん、話が長くなったね。それで、僕からイルちゃんへのお願いと言うのは...一言で言うと、イルちゃんにこの世界を管理する神になって欲しいんだ。イルちゃんの魂は既に神レベルにまで成長しているからね。>>
なんと、この神様までドスモさんの様に勘違いしている様だ。
<< あの、私は神には成れません。ドスモさんが、私は神になるには経験が1000年分足りないと言ってました。>>
<< ああ、それはドスモから聞いているよ。正直僕も、もう少し経験があった方が良いだろうとは思うんだけどね。でも実は、今この宇宙はそんなことを言ってられる状態では無くて...。正直に言うと、ある理由で神の数が大幅に減ってしまったんだよ。そのため、神の加護が得られない世界が1万個ほど出来てしまっていてね。その内5000ほどの世界は最高神のリリ様と中級神達が順繰りに巡って加護を与えているけれど、残りの5000には何も出来ていないのが実情なんだ。このままではそれらの世界の多くが滅びてしまうだろうけど、現状ではこれが限界でね...。>>
<< それって、私達の世界も滅びてしまうと言うことですか!? >>
<< いいや、この世界は僕が定期的にやって来て加護を与えている。もっとも長く留まるだけの余裕はないので、この世界に大規模な地震や火山の噴火、地殻変動、異常気象などの自然災害が起きない様にしているだけで、それ以上のことは出来てないけどね。ドスモ達に声をかける余裕すらなかったんだ。僕が担当している世界はここ以外にも沢山あるからね。それでね、イルちゃんがこの世界を守る下級神となってくれるなら、僕は神の加護が与えられていない別の世界を救いに行くことが出来るわけ。もうひとつ世界を救うことが出来るんだ。>>
ちょっと待ってくれ...話が大きすぎて付いて行けない。5000もの世界が滅びかけているって??? なにより世界ってそんなに沢山あるってことに驚いた。流石神様だ、スケールが違うと言うか、付いて行けないと言うか、混乱して考えが纏まらない。世界が滅びるなんて聞いて、知らんぷりなんて出来ないけど、でも神様になったらアマルと結婚できないだろうな。母さんや兄さん、ラナさんとも別れなければならないかもしれない。それはいやだよ!
<< 泣かないで。そのことなら、何とかなるかもしれないよ。>>
そう言われて、自分が涙を流しているのに気付いた。それに何とかなるって??? あ、念話で話していたから考えていることを読まれたんだと気付く。
<< ご免ね、勝手に思考を読んでしまった。でも、神になっても結婚は出来るよ。珍しいのは確かだけど、実際に人と結婚している神がいるからね。家族とも別れる必要はない。それにイルちゃんにやって欲しいのは、今まで僕がやっていた自然災害の防止だけさ。これは神の魔力がないとできないことだけど、そのための魔道具が発明されていてね。必要なのは魔道具への魔力チャージだけだから、それほど手間は取らない。この魔道具が発明されたので5000もの世界を救うことが出来たんだ。だから、イルちゃんは神になった後も今まで通りの生活を送ることが出来るし、ご家族とも別れる必要はないだろう。
自然災害の防止以外のことは、それぞれの世界を管理する神の裁量に任されているよ。自然災害以外の理由で世界が滅びることはめったにない。例えば大規模な戦争が起こっても、少なくとも勝った方は生き残る可能性が高いからね。だから、神の中には人同士の争いを防ぐために積極的に人の社会に関与する奴もいるし、戦争が起こっても放置する奴もいる。どうするかはイルちゃんが決めて良いんだ。>>
<< 自然災害ってそんなに恐ろしいものなんですか? >>
と疑問に思ったことを聞いてみる。短い人生だけど、嵐に遭った経験はあるし、遠くには火を噴く山があるという話を聞いたこともある。でもそれで世界が滅びてしまうとは思えない。
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