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やきもち

シュリナ編

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お兄様と仲の良いサナバート様とタッグを組んだ私たち。
なぜかというと、お互いに好きな人がくっつきそうだから離すために。

サナバート様がアナスタシア嬢を、好きなのに気付くのは早かった。
どの女性にもなびかない彼に、何かあることはすぐに分かった。そしてたどり着いたのがアナスタシア嬢であった。
彼女は可憐であり淑女として素晴らしいとわたしも思うが、たまに変な言葉使いだったり動作だったり、不思議な方。
そんなお方に未来のウィリアム国家を担う方のお嫁さんになんて考えてはならないものよ。

私がその座を奪い取って見せるわ。
最近はアナスタシア嬢も、アルバート様に寄り添う感じが伝わってくる。
彼をみている目も優しくなり、拒否するようなことはしなくなった。

サナバートと、アナスタシアとアルバートは同じくクラス、今日は運動場で魔力向上のために、クラス合同で魔力を使っていく。
どこでどんな魔力を使おうが勝手なのだ。

近くにいたらアナスタシア嬢の腕を掴み、

「私と決闘してくださる?」

とウキウキした顔が沈められなかった。
やっとこの方にやり返しができる。ほぼ八つ当たりなのだが。

「あっすみませんシュリナ様。アルバート様との約束がありますの。」

と言われた。
すると声を聞いたのかアルバート様がいち早くこちらにきた。
私が彼女の腕をとっているのが気にくわないのか、外すように、私が持っている腕を引いた。

「アルバート様?」

私はアナスタシアが触られた腕を名残惜しく眺めていた。アルバート様に掴まれた腕が羨ましく…
悲しくなってしまったが、ここで引いたら女が廃るわ。
お兄様も勝負事に投げて良いわけではないと教えてくれた。
正々堂々勝負して欲しい!アルバート様は私がいただく。

「シュリナ、アナスタシア様に構うなと言っただろう?」

「ですが、私は…」

アルバート様が呆れたように私に向かって構うなと言った。
かなり傷ついた。
愛しい人の言葉は聞きたいが、こればかりは、だめだ。
アナスタシア嬢を倒して、アルバート様を私のものにする。
権力も魔力も美力も上であればアルバート様はきっと私を選んでくれるから。

「アナスタシア様どうですか?私は炎を使います。」

「…私は、そうですね。魔力的にすぐに負けてしまう案件ですのでお引き取りを願いたいですがシュリナ様からの挑戦上であれば受けるしかありませんわ。」

…勝った。
アルバート様は心配そうにアナスタシア嬢を見ているが、彼女も余裕があるのか、アルバート様に「すみませんお約束投げてしまい。」「心配するな、何かあればすぐに助ける。」イチャイチャしないで欲しいわ。
今からアルバート様は私のものになるんだから。

先生が騒ぎを聞きつけやってきたが、私を無碍にできないことは知っている。
隣国の姫ですものね。

「ではこれより、アナスタシア様とシュリナ様の決闘を始める。お互い構え。」

武器を使用しないため、構えるのは手である。
彼女は綺麗な姿勢で立っており、構えと言われても深呼吸を繰り返している。

「はじめ!」

そして一気に私は彼女に向かって炎を飛ばす。
アナスタシア様は花のオールを出しガードした。
そして運動場一面に花が咲き誇る。
何をするつもり?


目を覚めるとそこは医務室。
保健医と、アナスタシア様が不安そうにみていた。

体を起こすと、前にはアルバート様もいた。

「ごめんなさいシュリナ様。私はなんてことを。」

今にも泣きそうなアナスタシア様。
勝負に負けたのは私の様子。
アルバート様は勝ち誇ったように私に微笑んでいた。

「魔力的には私の上のはずなのにどうして!?」

とても言いにくそうにアナスタシア嬢が口籠る。私には負けてはいけない戦いだった。
今も愛おしそうにアナスタシア嬢を見ているアルバート様に勢いで口付けでもしてあげたい。
でも届かない。
まだ体は回復していないみたいで、倦怠感が強い。

なぜ負けたの。

「花の絨毯を引くと、相手の魔力をすいあげることができます。それでその、魔力が暴走してしまって…」

要するに魔力量でもあの時は負けていたのだ。私が一瞬に落ちるほどに。
炎魔法は一度だけ、それにそこまで魔力を使うものでもない。

「そんな、相性も私の方が有利なのに…」

「それが分かっていて、決闘を申し込むなんて汚いな。」

アルバート様の野次が飛んでくる。
確かに相性は私の方が格段に上。
格段に上だから負けるはずがないと思っていたのに…

「そんな相手に負けるなんて姫もまだまだだな。」

厳しい言葉がずしっとのっかかった。
幼少期から魔法は好きではなかったが、10歳過ぎたあたりから、努力を重ねた。
そして得意分野まで成長したはずなのに…

「アナスタシア様いきましょう。今回のことはシュリナ様の自業自得です。」

「ですが、私が暴走しなければ…」

「…なによ、出て行って!お見舞いなんていらないわ!人を馬鹿にして楽しいかしら?」

「そんなつもりはなかったんです。」

アナスタシア嬢は、馬鹿にしているつもりはないようだが、すごく惨めだ。
早くここから居なくなって。アルバート様は居なくならなくて良いのに。
私が飛ばした激昂に、アナスタシア嬢はひどく落ち込んでいた。
そんな彼女をほぼ抱えるようにアルバート様は退室して行った。
保険医も私の元気な姿を見て、安心したのか、仕事に戻って行った。

次は負けないから。
あんな女に、あんな良い男をあげれないわ。
ただ勝負事に負けたのは事実。
おまけに決闘だった。
負けたものは勝ったものの、命令を一つ聞かなければならないルールがある。
私は勝手アルバート様に近づかないようにとお伝えする予定だった。
悔しい。悔しい。悔しい。

次はもっとうまくやるわ!
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