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番外 新たな神殿編

互いの必要性

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2人はドサっと雪崩れ込む様にベッドへ倒れ込んだ。

「カテリーナ。」

フィリップはカテリーナの頬を優しい手つきで撫でるとそのまま彼女の柔らかい唇を味わうように口付けた。

時間が早朝と言う事もあり、神殿での話し合いの後、2人は王城の居室に一度引き上げていた。

移動中の馬車内では2人とも無言ではあるものの、その手は堅く繋がれていた。

「フィリップ様…、ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。」

そして、寝室のベッドに倒れ込む様に口付けたカテリーナは神殿を出てから初めて口を開いた。

まずは謝らなくてはいけないと思っていた。
カテリーナはフィリップの的を得た心配を考え過ぎだと拒絶したのだから。

「いや…僕の方こそ…何があってもカテリーナを怖がらせるような事をしてはいけなかった。」

カテリーナに覆い被さるフィリップがしゅんっと眉を下げるので、カテリーナはぶんぶんと首を左右に振った。

「フィリップ様の事を怖いなどと思った事はありません。」

カテリーナは自信のこもった瞳でフィリップを見上げた。

昨晩、フィリップが怒りを露わにした際は、確かにあまりの勢いに身をすくめてしまったが、それだって条件反射の様な物で、フィリップが自分を傷付ける様な事をするなどとは一切考えて居なかった。

「…リーナ。」

カテリーナの視線を正面から受け止めたフィリップは、少し泣きそうに顔を歪めてから、柔らかなカテリーナの唇にそっと自身のものを重ねた。

「可愛いリーナ。愛してるよ。君が少しでも僕から離れてしまうんじゃないかと思うと、心配で仕方なくて…許してくれる?」

カテリーナはそんなフィリップスの背に手を回し、優しく包むように引き寄せた。

「許すも何も…私は初めから怒ってなどいません。フィリップ様は私の事を閉じ込めてしまいそうだと仰いましたが…既に一度閉じ込められているのをお忘れですか?」

カテリーナは2人の婚姻前の経緯を思い出し、フィリップを見上げた。
その表情は悪戯が成功した子供の様だ。

「え…あっ…もちろん覚えているよ。あの時は…本当にあぁするしか無かった。カテリーナを失うくらいなら、それ以外の物はどうでもいいと思っていたから。」

「では、その時と一緒です。確かにフィリップ様は皇太子として、私は聖女として…重い立場におりますが、私はフィリップ様と共にある事が一番大切だという気持ちは変わっておりません。例え今後閉じ込められる事があったとしても…です。」

カテリーナの柔らかな笑顔に、フィリップはクシャリと表情を崩した。

「カテリーナ…、本当に君には敵わないよ。」

フィリップがカテリーナの唇、おでこ、頬、耳と思い付く限りの所にキスを落とすと、カテリーナはくすぐったそうに身を捩った。

「フィリップ様、愛しています。」

「あぁ、カテリーナ。愛している。」

フィリップの唇がカテリーナの首筋をなぞり、胸元へと近付いていく。

「あ…あの、フィリップ様、まだ朝なのですが…。」

カテリーナはフィリップから与えられる僅かな刺激にもピクリと体を反応させながら、慌てた様に声を上げた。

「カテリーナは皇太子妃としての重要な役割を忘れているようだ。僕たちの子をもうける事だよ。」

「いえ…それはもちろん承知しておりますが…何も朝からせずとも…。」

フィリップがカテリーナの言葉に満面の笑みを浮かべると、カテリーナは交渉が決裂した事を静かに悟った。

「すぐにカテリーナの方から入れてくれとせがむ事になるよ。」

フィリップはそう言うと、優しくカテリーナの衣服を脱がし、その胸の蕾を少し乱暴と思えるほどに激しく口に含んだ。

「あっ…だめぇ…。」

先程まで与えられていた唇で肌をなぞられるだけの微かな刺激と比べ物にならない快感にカテリーナは背をのけぞって反応した。

「朝なのに感じているの?可愛いリーナ。」

フィリップはそう言いながらも、カテリーナの胸を刺激し続ける。
舌と手によってフィリップの思いのままに形を変え、刺激を与えられる度に、カテリーナは自分でも我慢出来ない程の衝動が湧き上がって来るのを感じていた。

「あっ…あぁ…。」

「カテリーナ、腰がいやらしく動いているよ。まるで僕を誘っているみたいだ。きっともう濡れているんだろうね。触らなくてもわかるよ。本当…カテリーナは淫乱だね。」

「いやぁ…言わないでぇ…。」

カテリーナは自分の状態を正しく言い当てられた羞恥に、両手で顔を覆った。

「どうして欲しいのか、ちゃんとお願いしてごらん?」

フィリップが意地悪な笑みを浮かべてカテリーナを見た。
毎日の様に睦あっているのだから、フィリップには今のカテリーナの状態が手に取る様にわかるのだ。

「フィリップさまぁ…。下も…下も触って下さいませ…ぇ。」

「もちろんだよ。素直なカテリーナは本当に可愛いね。」

フィリップは満足そうに、カテリーナに口付けると、その手を彼女の秘所へと運んだ。

「あっ…あ…。」

「こんなにトロトロにして…。僕に触られる事を期待していたんだね。」

「あぁ…フィリップさまぁ…。」

「こんなに濡れていたら、すぐにでも入りそうだよ。」

フィリップはカテリーナにも聞こえるように、わざとぐちゃぐちゃと音を立てて秘所を刺激した。

「あ…ひぃ…。」

「気持ちいいなら、素直に言うんだよ。」

「あっ…気持ち…ぃ。気持ちぃですっ。フィリップさまに…あぁ…ぐちゃぐちゃにされて…気持ちぃ。」

ほぼ欲望に侵されたカテリーナの発言を包み込む様に、フィリップは何度も角度を変えてカテリーナに口付けた。

カテリーナがフィリップを潤んだ瞳で見上げれば、フィリップは我慢の限界と言わんばかりに、自身のものを一気に彼女の奥まで突き立てた。

「あぁっ…。」

「あぁ、本当に可愛い。好きだよ。カテリーナ、愛してる。」

「あぁ…好き…です。フィリップさまぁ…愛してます。」

2人は求め合うように、深く口付けを交わした。



そろそろ公務の時間だから…と、早朝の外出から戻ったっきり寝室から出て来ない主人夫妻を呼ぶ為に、扉の前に立っていたアンディはノックの寸前でその手を止めた。

お二人揃って、昨夜はあまり寝付けなかった様だから、眠っているのだろうと来てみたが…。

中からのただならぬ雰囲気を察してノックをやめた…などと言うことはない。
アンディの立つ戸の前まで、しっかりと2人の声が漏れ聞こえているのだ。
この状況で扉をノック出来る者は相当な強者だろう。

「予定を調整しなくては…。」

既に2人の営む声を聞き慣れてしまったアンディは、全く動揺を見せない。

それより、きっと午前中…いや、ヘタをすると今日一日の予定を全て調整しなくてはいけないかもしれない。

頭の中で2人のスケジュールを組み立てながら、アンディは静かに主人の寝室に背を向けて歩き出した。

アンディにとっては、実に平和な朝の始まりだった。

新たな神殿編 Fin.
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みんなの感想(16件)

とまとさん
2021.05.13 とまとさん

( *´艸`)。
久しぶりの番外編更新
ありがとうございます。
2人はずっーと変わらないんですね。
甘々で安心しました。

皐月 誘
2021.05.13 皐月 誘

とまとさん様
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
久しぶりの更新になってしまいましたが、変わらずお読み頂けて嬉しいです(^^)
2人は変わりません!でも、2人を見守り続けるアンディの器はドンドン大きくなっていますw

解除
ライア
2021.03.19 ライア

もう本当にありがとうございます!!
首輪…良かったです…
散歩とかもみててキュンキュンしました!!

皐月 誘
2021.03.20 皐月 誘

ライア様
ありがとうございますっ!
首輪…どうだったかなぁ?と気になっていたので、感想頂けて嬉しいです(๑˃̵ᴗ˂̵)
引き続き、よろしくお願いします♫

解除
RoseminK
2021.03.10 RoseminK

面白かったですわ。
アンディさんご苦労様、ふふふ。
番外編も楽しみにしております。

皐月 誘
2021.03.11 皐月 誘

RoseminK様

感想ありがとうございます!
楽しんでお読み頂けた様で嬉しいです(^^)

今後もよろしくお願いします!

解除
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