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1章 家族になろう
タヌキ、泊まっていくみたい
しおりを挟む気がついたら女の子には部屋に入られていた。
何を意味不明なと思われるかも知れないけど、自分でもよく分からなかったんだよ。
「じゃあ、失礼するなう。」
それだけ言って女の子はササササと入り込んで行ったんだよ。
とりあえず俺は玄関の鍵をかけて、今まで使った事の無かったチェーンをかける。
違うから、あの子を逃がさない為じゃないから、逆だから、もしも怖い人が攻めて来た時に少しでも時間を稼いで俺が窓から逃げ出す為だから。
3階だけど、飛び降りるからさ。
あの子が乱雑に脱いだ赤い靴を揃えて後を追う、なんかかわいい子の靴を揃えるってそれだけでトキメクな。
「ここが漫画家さんの部屋なう?噂に違わず汚いなー。」
悪かったな、男の一人暮らしなんてこんなもんだよ。
嘘です、全国の平均的な男性よりもだらしない自覚はある。
ゴミ袋に入れてないペットボトルは落ちてるし、洗濯して乾いた服は小さく山を作っている、コンビニの袋も散らばっていて一見足の踏み場も無く見えなくもない。
「おっ、あそことか寝心地よさそうですな。」
女の子の琴線に何かが触れたのか、服の小山に何か反応してる。
「あの、俺漫画家じゃないんだけど。」
俺の言葉に彼女の動きが止まった、と思ったら勢いよく俺の方に歩いて来る、俺の胸に顔を突っ込んできた。
「すんすん。」
えええーー!!?
何故匂いを嗅ぐ!?
そして首を傾げられた。
何を考えているのか女の子は廊下に出ると洗濯機を漁って俺のTシャツの匂いを嗅ぐ。
いや、やめてほしいんだけど。
「なう!この汗と油の混じった匂い!」
俺のTシャツを掲げるな!
いや、仕事で天ぷら揚げてるからな。
というか何がしたいの?
「間違えたな!ここは食べ物くれるおじさんの家なう!」
なんだ、その呼び方は。
分かっていたけど俺はもうおじさんなんだな。
だが、君にご飯を食べさせた覚えはない、食べさせていいならいくらでもご馳走するけど、今のご時世それだけで警察の厄介になりそうだし。
「そうか、おじさん、やたらとあたしに油っぽい物ばっかり食べさせてくる、油おじさんか。」
なんだ、その不名誉な呼び名は、そしてそんな事実はない!
「おじさん、いつも油っぽい物ばっかりありがとうな。あたし、あのタヌキなう。」
?
??
???
狸?ああ、公園の。
「ああ、あの狸か。人の姿になるとかわいいんだな。・・・凄いかわいいんだな。」
ってなるかー!!
そんな事があるかー!!
「なう、なーう、日本人のお家芸ロリコンな。」
「いや、ロリコンが日本人だけみたいな言い方はやめておけ。」
なんだかんだ世界中みんな若くてかわいい子が好きなんだよ、きっと。
熟女好きなんてのはただの都市伝説だと俺は思ってる。
「まあ、それはどうでもいいなう。そっか、エロ漫画家の先生じゃないのな、間違えたなう。」
俺の目を見ながら改めて間違えたと言ってくる自称タヌキ。
漫画家ってエロ漫画家だったのか、それは年齢的にダメだろ。
「誰なんだ?その漫画家ってのは。」
「公園で自分が描いた漫画だってエロいのを見せてくるエライ先生だな。」
いや、それはエロい先生だ!
でも、そんな話最近どこかで。
「あっ、その漫画家最近捕まったぞ!」
ニュースで見た、それも全国ニュースで。
小学生の低学年の子達に自分のエロ漫画を見せてる自称漫画家が捕まったって、近所だから職場のパートさんともその話したわ。
俺の言葉に女の子がガクンと項垂れる、大きな動作がかわいいな。
「そんな、それじゃ私はどうすれば」
「とりあえず、家に帰った方がいいんじゃないか?」
若い子が夜遅くに出歩くのは良くない、30超えると独身でも父性というのが湧いてきてだな。
そこで彼女は俺の目を見上げてくる。
黒と茶色のまん丸お目目がかわいい、あと小さい口が少し尖っててそれもかわいい。
「私に漫画の描き方を教えてくださいなう!」
いや、そんな真剣に見つめられても、だから俺漫画家じゃないんだって。
「じゃあ、せめて漫画の材料を用意してくださいなー。」
まじかよ、なんて図々しさだ。
決してかわいい子でなければ許されない。
そして、まあ、かわいい子だから許すんだけど。
「分かった、それくらいなら。」
言ってから気付く、やっぱりおかしくない!?
なんで俺見ず知らずの人にそんなの買わなくちゃいけないの?
いやー、でも、かわいいは正義って言うしな。
実際かわいいしな。
「じゃあ、早速買ってくるなう!」
いや、やっぱりおかしい!
もう夜遅いからな!
俺明日も仕事あるし!
女の子はポスんって俺の服の山に座った、あの、その中には俺が明日着る服もあって。
とりあえず女の子のスカートから覗く太ももが目の毒だ。
どれだけ、どれだけ瑞々しいの?
今が旬とか鮮度が違うとかってこういう時に使う言葉なの?
「あの、画材は買っとくから、とりあえず今日は帰らない?ほら、家族も心配してるだろうしさ。」
「家ならないのなー、家族はみんな出て行ったなう。」
あっさりと言う彼女に俺は動揺する。
「そ、そーなんだ。そ、それは大変だね。」
思わず棒読みになってしまった。
それは帰る場所がないって事だよね?
今夜泊まってくって事?
嬉しい、
嬉しい、
いや、そんな事になったら人生終わってしまう。
もちろん、やましい事なんてするつもりなんてない。
それでもずっと一人だったんだから、かわいい女の子と一緒にいられるなら嬉しくて。
そして、そんなことになったら何も無くても人生終わるのがこの世の中なんだろ!
くそー、分かってるよ。
分かってるんだからな!
上手いことやる奴ばっかり上手いことやって、俺みたいのは一生夢見ながらAV見て生きていくんだろ!
分かってるよ!
気が付いたらコンビニで買い物が終わっていた。
俺一人でだ。
いや、深夜に若い子と一緒にコンビニとか犯罪臭がするし全然一人でいいんだけどさ。
買ったのはとりあえずノートとシャーペン消しゴム、あと何か食べるかと思って唐揚げ弁当とサラダに飲み物。
俺、こんな事してていいのかな?
本当に人生終わったりしない?
家族泣かない?
全国ニュースで事実無根に SNSで知り合った未成年を、とか言われない?
もやもやした気持ちを抱えながらアパートの階段を上っていく。
玄関の鍵を開けて、あの子の靴は今もある。
「ただいま。」
うわ、ただいまなんて凄い久し振りに言ったよ!
なんだ、これ、これだけでなんか幸せだ。
なんだよ、この気持ち、笑えてきそう。
でも、返事は返ってこない。
というか、部屋にあの子いないわ。
「・・・。」
あのね、俺のね、服の山にね、狸がいてね、寝息を立ててるんだけどね、どうすればいいの?
えっ、こういう時は他の人ならどうするの?
写真撮ってSNSに上げたりすればいいの?
俺の部屋で狸が寝てるって?
いやだよ、誰も反応してくれなかったら泣いちゃうだろ。
いや、本当どうしたらいいの?
とりあえず、俺も寝る?
狸が寝てる部屋で?
まあ、そうするか。
幸せそうに寝てるしな、っていうか、こいつはあの狸だよな?
そして、あの女の子なのか?
頭は混乱してるのに、すんなりと、そしてやっぱり今日はいつもより暖かい気持ちで眠りにつけた。
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