餌をあげてた狸が女の子の姿でアシスタントにしてくれと来たけど俺は漫画家じゃない。

D−con

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1章 家族になろう

タヌキとお出かけするみたい

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「なうなー、なんだかエルフがいそうな森なうな。」

 いや、ここはお前が住んでた公園だろ。
 なんで他人事みたいな言い方なんだよ。

 という訳で俺の休みの日、俺と朱花は公園に来ていた。
 散歩である。
 どこに隠していたのか朱花はまた俺が初めて見る服を着ている。
 白のスカートに上はデニムのジャケット、いつもはゴムで結んでる髪には今日は白のリボンが装着されてる。

 今日もかわいいなー。
 もうこのかわいさはヒロインだな、俺がお父さんだったら嫁に行く時に超泣くわ。

「エルフ! エルフ! 大魔王油おじさんもいるかもしれないなう!!」

 いねーよ!!
 と思っていたら朱花は木の根元とかを見て回り始めた。
 え、待って! それって昨日描いてたリアルな方のやつの事?
 やめて! 俺が悪かったから探さないで! 掴んで来られたりしたら泣いちゃうから。

「なうな!」

 ビク!!

「ドングリなう!」

「・・・。」

 ドングリか、危うく走って逃げる所だったぜ。
 俺この公園昼間に来たの初めてだけど、思っていたよりずっと大きくてビックリしてる。
 この森みたいな場所だって今にも上から何か落ちて来そうで怖い。

「なー、あっちに行ってみないか?遊具みたいのあるよ。」

「待つなう。資料用にここらの写真が欲しいなうな。」

 おー、なんかやる気にあふれてるな。

「じゃあ俺が撮ってやるから。」

 早く森から脱出したい俺はスマホを取り出して・・・あれ、普段写真撮らないから使い方が・・・。

「なんで動画撮ってるなうか?」

 それは俺にも分からない。
 いや、分かった、大丈夫大丈夫。
 ようやく響いたシャッター音に一安心だ。
 そのまま縦横無尽にパシャパシャしていく。

「油おじさん、あっちも撮るなうな。」

 パシャパシャと。

「・・・。」

 あれ、これはこのまま朱花の写真もゲットするチャンスなんじゃ。
 仕事の休憩中にこっそり見て癒される事が出来るんじゃ。

「な、なあ、朱花の写真も撮ってやるよ。」

 大丈夫、怪しくは無かった筈だ、うん。
 朱花は一瞬動きを止めたが頷くと木に寄り添った。

「なうな、エルフっぽく撮るなうよ。」

 いや、無茶振りするなよ!!
 とりあえずお許しが出たのでパシャパシャしていく。
 おー、俺の幸せメモリーが増えていく。
 顔のアップも欲しかったけどズーム機能とかどこにあるのか分からなくて断念した。

 今度狸の姿も撮らせて貰って待ち受け画面にしようかな。

「油おじさんも撮ってやるなう。」

 朱花が手を伸ばしてくるからスマホを渡す、別に俺の写真とかいらないんだけど。
 いや、もしも今死んだら葬式に使う写真が無いからな、それ用だと思っておこう。

「もっと笑うなう、にーなう。」

 はいはい。
 無理やり笑った俺を見て朱花も笑う。

「これで魔王油おじさんももっとリアルに描けるなうな!」

 なんでだよ!!
 あれのモデルはゴキさんだろ!?俺要素なかったじゃん!!

 その後は2人でアスレチック的な遊具で遊んでみた。
 元が狸だからか、朱花は身体能力が凄い。
 それに比べて俺は・・・いや、まー朱花は楽しそうに笑ってたし良しとしよう。

 次は2人で売店を覗いてみる。
 全体的に割高だな、俺はこういう所で買うとしたらフランクフルトなんだけどそれだとまた油で弄られる。
 別に嫌じゃないんだけどさ。

「ソフトクリームでも食べるか。」

「食べるなうな。」

 味はバニラと期間限定の抹茶に安納いもか。

「やすなういも?」

「あんのういもな、甘みの強いさつま芋だよ。」

 前にバイトしてた居酒屋で使ってた。
 秋はいろんな店でデザートに使われてるよな。

「何味にする?」

「バニラなう。」

「じゃあ俺は安納芋にするか。」

 出来てきたソフトクリームは大分濃い黄色だった。
 ・・・美味しいのか俺にはよく分からない。

「美味しい?」

「なう!やっぱりアイスはチョコとバニラが至高なうな。」

 その言い方だとバニラよりチョコが良かったみたいだけど。

「あんのう芋は?」

「ん。よく分からん。」

 説明の仕様がないから目の前に出してみるとパクっていった。

「こうばしいなうな。」

「そうだな、そんな感じだ。」

 なかなか上手いこと言うなと笑ってしまう。

「やっぱりアイスはチョコとバニラが至高なう。」

 それはもう分かったって。
 今度チョコのアイス買って帰ろう。

「なうな。」

 次は俺の前にアイスが差し出された、口を開けかけて止まる。
 いや、こんな場所で大きく口を開けてアイスを迎えに行くとか無理。
 だからといって小さく口を開けて変な事になるのも無理だ。
 せめてスプーンがあれば・・・いや、口を開けて入れられるの待つのも無理だな。
 鳥の雛か!とか心の中でツッコム事になりそう。

「いや、いいや。」

「むー、つまんないなうな。」

 それは悪かったな、俺にはアーンとか無理だわ。
 食べさせられるより食べさせたい。

 それから2人で本屋に行って、しゃぶしゃぶの食べ放題に行った。

 特に変わった事は無くてもポカポカしちゃうくらいに幸せだった。

 

 夜中にふと目が覚めて、こんなに幸せで良いのかなって不安になる。
 横で寝ていてくれてる狸が愛しくて思わず抱きしめていた。

「みゅうー。」

 小さく朱花が鳴く。
 起こしちゃたかと様子を伺うと薄く目が開く。

「・・・もう寂しくないみゃう?」

 意識が定まらないぼんやりした声。

「ああ、もう寂しくない。」

「みゃうなう。」

 自分勝手にもう一度抱きしめる。

「お弁当美味しいのにみゃう。」

「??」

 やっぱり寝ぼけてるのか?

「つまらなそうに食べてたみゅー。」

 身体に電気が走った気がした。

「今は美味しそうに食べるみゅう、よかったみゃうな。」

「・・・。」

 なー。

 最初からずっと、俺が寂しそうだから一緒にいてくれたのか?

 泣いてしまった。

 今が幸せすぎてこの温もりを無くしたくない、強く強くそう思った。

 だから、

「なー、俺の・・・家族になってくれないか?」

 夜中、寝ぼける狸にそう言った。

「仕方ないみゃうな。」

 朱花は笑って俺の顔を舐めた。

「・・・油しょっぱいみゅう。」

 今日は休みだったし油要素はないだろ。

「ありがとう。」

 愛しい狸を強く抱きしめながら眠りに落ちた。
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