8 / 18
1章 家族になろう
タヌキと家族になったみたい
しおりを挟む目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた。
2度寝の誘惑に負けずにしっかり目を開く。
目の前には愛しのタヌキさんが寝ていて優しく頭を撫でる。
「みゅーみゅー。」
可愛い声に小さく笑ってお風呂に向かう。
湯船に浸かりながら昨日の事を思い出す。
「家族か。」
恥ずかしくなって笑ってしまう。
いや、本当に恥ずかしいわ、まー半分寝ぼけてたみたいだし朱花は覚えてないだろ。
それでいいんだ、俺だけ大事に覚えてるからさ。
「あたしも入るなうな。」
全裸の狸が風呂場に入って来た、美少女の姿で。
「!?」
驚いた俺は反射的にお湯の中に頭を突っ込む、俺は何も見てない何も見てない!
胸は決して大きくない、でも身体の全てが計算して作られたみたいに均整がとれてて綺麗で、綺麗で!
って、本当に入って来やがった!
俺の足の間に何かある!
くそっ、俺の肺活量ナメるなよ! すでに限界なんだぞ!
「ぶはっ!!なんでその姿なんだよ!!狸で来いよ!!」
想像以上に顔が近くにあって怯みながらもそれだけ言って目をそらす。
っていうか、胸見えてるんだよ!! 凄い白くて凄いピンクだし!
「なんで見ないなうか! こっち見るなうな!」
朱花が言いながら俺に手を伸ばしてくる、っていうか膝の上が柔らかいんだけど、俺の膝に座ってないか!?
「何意味わかんない事言ってんだよ!いいから一回狸になれよ!!」
思わず怒鳴ると朱花は手を引っ込めて、
「むーな!!家族になるって言ったなうのに!!バカなう!!」
弾ける様に狸の姿になると風呂場を飛び出した。
覚えてたのか。
「意味分かんないって。」
身体も拭かずに腰にタオルだけ巻いて後を追う。
狸は俺の服の山で丸くなってた。
「あのさ・・・、」
くそ、意味が分かんないからなんて言えばいいのか分からない。
「かじってやるみゅう!!」
ええ!! 牙を剥いて飛びかかってきやがった!
とっさの事に動けない俺、朱花の口がタオルを奪っていった。
「・・・なう!」
「・・・。」
時が止まる。
見られた、俺の大きくなったのが見られた。
「しか、仕方ないだろ!急に裸で迫って来られたから・・・。」
何を言ってるんだろ、俺は。
っていうか、ガッツリ見過ぎなんだよ!!
「俺、身体洗って来るから・・・どっかに行ったりしないでくれよ。」
本当はもっとちゃんと話をしないといけないのかもしれないけど、なんて言ったら良いのか分からなくて。
こんな事しか言えなくて。
1人静かに湯船に浸かり直す。
その筈だったけど俯いた狸が紛れ込んで来た。
「ほら。」
手を伸ばすと舐めてくるから、持ち上げてお風呂に入れてやる。
「一緒に入るみゅう、家族だからみゅーみゅう。」
「そうだな、家族だもんな。さっきは悪かった。」
やっぱり朱花は可愛くて俺は大切だと確認しながら頭を撫でる。
「みゅう。」
「でも、風呂は狸の姿だけな。」
「みゅー!家族なのにミャウ!」
「関係ないだろ!」
「みゅー!!」
睨んで来てもダメ、かっこ悪いなと思いながら俺はため息を吐く。
「仕方ないだろ、刺激が強すぎるんだよ。」
ホントかっこ悪い。
でも、本当にかわいくて綺麗で・・・あー! また大きくなった! せっかく大人しくなってたのに。
この後、朱花の身体を洗いながら思い出してまた大きくなった。
ううー~、もうかっこ悪すぎて消えたい。
仕事からの帰り俺の両手は荷物で塞がっていた。
炊飯器にフライパン、エトセトラ、要は調理器具一式だ。
今までは1人だから部屋で料理したりはしなかったんだけど・・・家族が一緒だから。
作ってみたいって思ったんだ、美味しいって喜ぶ顔がみたいなって。
「ただいま。」
「おかえりなう!見てみるなう!これが魔王油おじさんの真の姿なう!!」
嬉しそうに俺の目の前に突き出されたのは大きくなった俺のの絵だった。
リアルでそしてデカい。
なんでこういう絵だけ上手いんだよ!!
って凄いいっぱい描いてある!!
・・・こいつ、一日中俺のを描いてやがったな。
「なうな!衝撃的な魔王の姿!読者もきっと喜ぶなう!!」
はーもう、本当かわいいな。
純真な妖精の様だ。
「とりあえずもう二度と描いちゃダメ。」
「なんでなうな!!」
なんでって言われても・・・。
「とりあえずご飯作るから、片付けといて。」
「油おじさんが作るなうか?」
「うん、少し待っててな。」
「なうな。楽しみなう。」
小さい口を尖らせて嬉しそうに笑う。
ああ、本当に幸せをありがとう。
でも、その絵を壁に貼ろうとするのはやめて。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる