餌をあげてた狸が女の子の姿でアシスタントにしてくれと来たけど俺は漫画家じゃない。

D−con

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漫画家を目指す、1人と1匹

タヌキのネーム

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 マジか!! 我慢出来ずにやってしまった!!



 ・・・夢、か。

 はー、いつのまにか寝てた。
 夢で良かったのか悪かったのか・・・いや良かったよ、多分。

 朱花は俺の上に乗って抱き着いて寝てるんだけど・・・俺の首、よだれでべしょべしょだよ。

 うっ、そして俺のが超元気なんだけど、まさかずっとこうだった?
 そりゃ変な夢見るわな。

 身体が密着してて凄い幸せだ、2人分の鼓動を感じる、俺も抱きしめたい、全力で。

 でも、そういう訳にもいかないよなと、抜け出す事を決意する。
 起こさない様に起こさない様に、と。

「むなうな。」

 起こしちゃった、そして偶然なんだろうけど朱花の手が俺のを握った。

「・・・朝だちなうな。」

 そういう言葉は知ってるんだな。
 ってバカ!! 手を動かすな!!

「おほあっ!!・・・。」

「・・・。」

 魂の抜けた様な半目の俺と目を見開いた朱花は無言で見つめ合った。


 頭の中が真っ白な俺は浴槽の中で お湯が溜まってくるのを待ってる。
 少し寒い。

「・・・。」

 風呂場の戸に隙間を開けて朱花が覗いてきた、お前妙に肌色が多いけど服着てないだろ。

「そのまま入って来たら絶交する。」

 俺の口から出たのは子供じみた言葉だった。

「なう!」

 パッと狸の姿になると風呂場に飛び込んで来るから捕まえて抱き上げる。

「みゅうー。」

 朱花狸は鼻先を俺の首に擦り付けてくる。
 はー、今日も幸せだな。
 毎日お風呂に入ってるからなのか、朱花の毛が初めて家に来た時よりフサフサと柔らかい気がする。
 この幸せも後1年なのかな。

 職場が無くなるって言っても朱花は何も言ってくれなかったな。
 地元に帰る時もしかしたら付いてきてくれるかもしれない、そんな風に期待もしていたんだけどな、少しだけ。
 こっちよりは自然も多いだろうし、朱花も楽しいかも、そんな風に言うつもりだったのにな。

「はー。」

「みゃう?」

 首を傾げる朱花に何でもないと笑って貯まってきたお湯に放す。

 器用に泳ぐなー。
 
「今度、温泉とかプールに行ってみるか?」

「みゃう! 行くみゅう!」

 提案を気に入ってくれたみたいで朱花はお湯の中で尻尾を揺らす。

「じゃあ今度ペットと一緒に入れる所ないか、探してみるな。」

「バカみゃうー! 本当に! だから油おじさんはダメ油みゃうみゅ!」

 凄い勢いで朱花が俺の胸にぶつかってくる、ゴリゴリと顔をぶつけてくる。
 なんなんだよ、大丈夫か? それ口に水入らないか?

「 もしかして犬とかとケンカするのか?」 

 そういえば野良猫相手にも負けそうだしな、野生味とか全然朱花からは感じないし。

「バカー!!」

 おい、語尾を忘れるほどに俺はバカなのか。




 朱花は辛いのも平気って言ってたから今日は麻婆豆腐だ。
 豆板醤に豆腐、ひき肉、ネギを買ったから後は家にある調味料で出来るし、卵とネギでスープを作って。

「・・・何やってんの?」

  玄関の外で朱花が仁王立ちしてる、人に見られて変な噂流されて、もし警察来たりしたらどうするんだよ。
 おじさんの社会的地位なんてすぐになくなっちゃうんだぞ。

「見るなう!」

 朱花が手に持ってたルーズリーフの束を突き出してくる。

「ネーム出来たなう!」

 完成したのを見せたくて外で待ってたのか。
 いちいち可愛いな。

「分かったよ、中でな。」

 一体いつから待ってたんだろうな、もう夜は大分寒いからな。
 チラリと朱花の方を見る、本当は先にご飯作ってあったかい物食べさせてあげたいんだけど、この感じだと漫画を見てからかな。

 ネームを見てみようとテーブルの前に胡座をかくと、俺の上に朱花が座ってくる。

「せめて枕を間に挟んでくれ。」

 俺は一度朱花をどかす、お尻の感触が直接くるとか刺激が強すぎる。

「ほら。」

 枕を股の上に設置して迎えてやれば、可愛いのがストンと俺の真ん中に収まる。
 ほらな、枕ごしでもダメだもん、もう俺の反応してるもん。

 さて、漫画は・・・ねー、至近距離から俺の顔見つめてくるのやめてくれない、変な汗出てくるから。


 ・・・ちゃんとしてる。
 絵もまだそこまで上手くはないけど、何を描いてるかはちゃんと分かる。
 言っていた通りにエルフが主人公、平らな胸に不満を持つ2人のエルフ少女が魔王油おじさんの存在を知り森の中を探して回るというギャグ?
 ギャグ漫画かな?
 魔王油おじさんは見つからない、代わりに2人の前に現れたのは創造の女神狸だった。

 シュールなギャグ漫画なんだろうな。

「いいと思う。」

 普段読むのが連載のしかも人気作品だから、どうしてもそれと比べれば劣ってしまうけど、初めての漫画になると思うとかなりいいものな気がする。

「感動しそうなう?」

・・・シュールなギャグ漫画なんだよな?

「明日は俺休みだし、原稿用紙とペン買いに行くか?」

「行くなうな!!」

「よし、行くか。」

 俺は拳を握り鼻息を荒くする朱花の頭に手を置くと立ち上がる。
 さて、麻婆豆腐作るかな。

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