餌をあげてた狸が女の子の姿でアシスタントにしてくれと来たけど俺は漫画家じゃない。

D−con

文字の大きさ
10 / 18
漫画家を目指す、1人と1匹

タヌキのネーム

しおりを挟む


 マジか!! 我慢出来ずにやってしまった!!



 ・・・夢、か。

 はー、いつのまにか寝てた。
 夢で良かったのか悪かったのか・・・いや良かったよ、多分。

 朱花は俺の上に乗って抱き着いて寝てるんだけど・・・俺の首、よだれでべしょべしょだよ。

 うっ、そして俺のが超元気なんだけど、まさかずっとこうだった?
 そりゃ変な夢見るわな。

 身体が密着してて凄い幸せだ、2人分の鼓動を感じる、俺も抱きしめたい、全力で。

 でも、そういう訳にもいかないよなと、抜け出す事を決意する。
 起こさない様に起こさない様に、と。

「むなうな。」

 起こしちゃった、そして偶然なんだろうけど朱花の手が俺のを握った。

「・・・朝だちなうな。」

 そういう言葉は知ってるんだな。
 ってバカ!! 手を動かすな!!

「おほあっ!!・・・。」

「・・・。」

 魂の抜けた様な半目の俺と目を見開いた朱花は無言で見つめ合った。


 頭の中が真っ白な俺は浴槽の中で お湯が溜まってくるのを待ってる。
 少し寒い。

「・・・。」

 風呂場の戸に隙間を開けて朱花が覗いてきた、お前妙に肌色が多いけど服着てないだろ。

「そのまま入って来たら絶交する。」

 俺の口から出たのは子供じみた言葉だった。

「なう!」

 パッと狸の姿になると風呂場に飛び込んで来るから捕まえて抱き上げる。

「みゅうー。」

 朱花狸は鼻先を俺の首に擦り付けてくる。
 はー、今日も幸せだな。
 毎日お風呂に入ってるからなのか、朱花の毛が初めて家に来た時よりフサフサと柔らかい気がする。
 この幸せも後1年なのかな。

 職場が無くなるって言っても朱花は何も言ってくれなかったな。
 地元に帰る時もしかしたら付いてきてくれるかもしれない、そんな風に期待もしていたんだけどな、少しだけ。
 こっちよりは自然も多いだろうし、朱花も楽しいかも、そんな風に言うつもりだったのにな。

「はー。」

「みゃう?」

 首を傾げる朱花に何でもないと笑って貯まってきたお湯に放す。

 器用に泳ぐなー。
 
「今度、温泉とかプールに行ってみるか?」

「みゃう! 行くみゅう!」

 提案を気に入ってくれたみたいで朱花はお湯の中で尻尾を揺らす。

「じゃあ今度ペットと一緒に入れる所ないか、探してみるな。」

「バカみゃうー! 本当に! だから油おじさんはダメ油みゃうみゅ!」

 凄い勢いで朱花が俺の胸にぶつかってくる、ゴリゴリと顔をぶつけてくる。
 なんなんだよ、大丈夫か? それ口に水入らないか?

「 もしかして犬とかとケンカするのか?」 

 そういえば野良猫相手にも負けそうだしな、野生味とか全然朱花からは感じないし。

「バカー!!」

 おい、語尾を忘れるほどに俺はバカなのか。




 朱花は辛いのも平気って言ってたから今日は麻婆豆腐だ。
 豆板醤に豆腐、ひき肉、ネギを買ったから後は家にある調味料で出来るし、卵とネギでスープを作って。

「・・・何やってんの?」

  玄関の外で朱花が仁王立ちしてる、人に見られて変な噂流されて、もし警察来たりしたらどうするんだよ。
 おじさんの社会的地位なんてすぐになくなっちゃうんだぞ。

「見るなう!」

 朱花が手に持ってたルーズリーフの束を突き出してくる。

「ネーム出来たなう!」

 完成したのを見せたくて外で待ってたのか。
 いちいち可愛いな。

「分かったよ、中でな。」

 一体いつから待ってたんだろうな、もう夜は大分寒いからな。
 チラリと朱花の方を見る、本当は先にご飯作ってあったかい物食べさせてあげたいんだけど、この感じだと漫画を見てからかな。

 ネームを見てみようとテーブルの前に胡座をかくと、俺の上に朱花が座ってくる。

「せめて枕を間に挟んでくれ。」

 俺は一度朱花をどかす、お尻の感触が直接くるとか刺激が強すぎる。

「ほら。」

 枕を股の上に設置して迎えてやれば、可愛いのがストンと俺の真ん中に収まる。
 ほらな、枕ごしでもダメだもん、もう俺の反応してるもん。

 さて、漫画は・・・ねー、至近距離から俺の顔見つめてくるのやめてくれない、変な汗出てくるから。


 ・・・ちゃんとしてる。
 絵もまだそこまで上手くはないけど、何を描いてるかはちゃんと分かる。
 言っていた通りにエルフが主人公、平らな胸に不満を持つ2人のエルフ少女が魔王油おじさんの存在を知り森の中を探して回るというギャグ?
 ギャグ漫画かな?
 魔王油おじさんは見つからない、代わりに2人の前に現れたのは創造の女神狸だった。

 シュールなギャグ漫画なんだろうな。

「いいと思う。」

 普段読むのが連載のしかも人気作品だから、どうしてもそれと比べれば劣ってしまうけど、初めての漫画になると思うとかなりいいものな気がする。

「感動しそうなう?」

・・・シュールなギャグ漫画なんだよな?

「明日は俺休みだし、原稿用紙とペン買いに行くか?」

「行くなうな!!」

「よし、行くか。」

 俺は拳を握り鼻息を荒くする朱花の頭に手を置くと立ち上がる。
 さて、麻婆豆腐作るかな。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...